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ゴルフとサッカーのハイブリッド競技(前編)

ぼくは栃木県さくら市のゴルフ場、セブンハンドレッドクラブの三代目オーナーだが、一昨年、事業承継を決める前に「自分の役割」について悩んでいた。多くのゴルフ場は地元との関りが薄く、東京から来て山を買い、ゴルフ場にして「入山料」を取るビジネス。そんな在り方に強い疑問を感じていたからだ。

ある日、地元・さくら市の教育委員会から「子ども達が走る場所がない」と聞いて衝撃を受けた。広大な敷地をもつゴルフ場が、なぜ地域の子ども達に遊ぶ場所を開放しないのか。「ゴルフ場をもっと開かれた場所にしよう」という新たな使命に気づいた瞬間だった。

地域住民やゴルフ未経験者に話を聞くと、ゴルフ場は「富裕層のゴル
える時頃からスタート。ゴルファーがいない時間帯を有効活用でき、フットゴルフを通じて初めてゴルフ場も体験できる。社会に根強く残る「ゴルフ場への心理的障壁」を打破するためにも、フットゴルフを通じたゴルフ場体験の普及は効果的。まさに一石三鳥の取り組みだと思っている。

しかし、JFGAによれば「ゴルフ場の理解が少ない」「現場社員からの抵抗が強い」などが普及の妨げになっているとか。ゴルフ場は本来、ゴルファーのためだけの場所にあらず、ノンゴルファーや地域住民のための場所でもあるべきだ。そこでJFGAの関係者と会ったその場で導入を決意し、セブンハンドレッドのスタッフへ説得に回った。

「ゴルフ好きのための場所」と思われており、最大の敵は「社会に蔓延するゴルフ場への心理的障壁」にあると確信したが、具体的に何をどうすればいいのだろう‥‥。新たな悩みに直面した。

そんな折、フットゴルフという新しい競技を知る機会があった。これは足とサッカーボールを使ってホールをプレーする「ゴルフ」のこと。ボールがあれば誰でもできるサッカーは、ゴルフ場の「心理的障壁」を取り除くにはピッタリだ。代表就任後初の大掛かりな仕事としてフットゴルフを導入しようと、日本フットゴルフ協会(JFGA)に連絡を取った。一昨年6月のことである。フットゴルフは特別な用具を購入する必要がなく、女性や子供など誰でも気軽に参加できる。

ルールはゴルフとほぼ同じで、少ない蹴り数で、フットゴルフ用のカップ(直径約㎝でサッカーボール5号球約2個分)に入れる競技である。ゴルフ場への配慮もされており、サッカースパイクは禁止、グリーン上でのプレーも原則禁止、服装はゴルフウェアを推奨。プレー時間も3時間ほどで全ホールを終了する。

当コースの場合、カップは主にコースのラフにあけている。ティーイングエリアはゴルフと同じか、ラフに特設エリアを設け、パープレーのスコアは合計で、最長のホールは271ヤード(パー5)。JFGAの関係者によれば、現在フットゴルフ協会公認のゴルフ場がコースで、その多くはゴルファーがプレーを終える時頃からスタート。

ゴルファーがいない時間帯を有効活用でき、フットゴルフを通じて初めてゴルフ場も体験できる。社会に根強く残る「ゴルフ場への心理的障壁」を打破するためにも、フットゴルフを通じたゴルフ場体験の普及は効果的。まさに一石三鳥の取り組みだと思っている。

しかし、JFGAによれば「ゴルフ場の理解が少ない」「現場社員からの抵抗が強い」などが普及の妨げになっているとか。ゴルフ場は本来、ゴルファーのためだけの場所にあらず、ノンゴルファーや地域住民のための場所でもあるべきだ。そこでJFGAの関係者と会ったその場で導入を決意し、セブンハンドレッドのスタッフへ説得に回った。

とはいえ、当時は代表に就任してわずか3か月の新米社長。現場からの信頼も低い中でいきなり「ゴルフ場でサッカーをやろう!」では、面食らうスタッフも多く、理解が得られなかった。当然だろう。ゴルフ場でサッカーをするイメージは、あまりにも現実とかけ離れている。特にコースメンテナンスに心血を注ぐ管理部門にすれば「とんでもない」という話になる。それでも前述の意義を説明し、徐々に理解が深まって、説明開始から1か月後には合意を得られた。驚いたのは、フットゴルフ普及のため弊社に転職した者がいたことである。どの世界にも「熱い男」はいるものだ。

初めてフットゴルフを受け入れたのは一昨年の9月、名ほどの若者が場違いな雰囲気に戸惑いながら、それでも嬉々として来場した。ところが‥‥。
現場スタッフの対応は並大抵ではなかったと思う。クラブハウス内や駐車場でボールを蹴ったり、ゴルファーからは「フットゴルフのカップが邪魔」「追い抜かれた」「危ない」などクレームの嵐。スタッフからも「予約時間に来ない」など、多くの顰蹙を買ってしまった。

本記事は、ゴルフ用品界社出版のゴルフ エコノミック ワールド 2021年6月号 (発売日2021年06月01日)において連載中「熱血タックル !ゴルフ界に新たな風を 第2回」を編集した文章になります。

株式会社セブンハンドレッド代表取締役社長/株式会社住地ゴルフ代表取締役社長/NPO法人スポーツコーチング・イニシアチブ代表理事
慶應義塾大学法学部卒、同大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了。日本ラグビー協会U20日本代表総務補佐を経て現職。2016年6月、セブンハンドレッド入社、2019年4月社長就任。ビジョンは「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」、地域とゴルフ場の融合を図り、次世代ゴルフ場作りを目指す。2021年1月に住地ゴルフ社長に就任。

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