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繊細さん一人でライブに行く

私は、たまに一人でライブに行くことがある。
定番は「美輪明宏」「森山直太朗」そして「関ジャニ∞」とゆう不思議な取り合わせだ。

数年前まで美輪さんは毎年、音楽会を開催してくれており、年に1度は必ず足を運んでいた。
歌を聴くのはもちろんだが美輪さんの姿を見ると縁起が良い気がして、私にとっては神社仏閣を参拝する感覚に近かった。

そんな私はある日、親友Nちゃんから関ジャニ∞ライブのお誘いを受けた。
「Nちゃんと一緒なら、楽しそうだから行く」と答えた私だったがジャニーズライブは未知の領域だったため、じわじわと懸念材料が生まれてきた。

懸念材料その1:森山直太朗や美輪明宏のステージは、観客を煽るような激しい曲が無いので椅子に座って観れる時間が長く、疲労感が少なかった。
だが、ジャニーズライブでは観客も一緒に飛んだり跳ねたりするに違いない。
もし私が足を挫いたりしたら、会場スタッフは、ちゃんと私に気付いて救助してくれるのだろうか。

懸念材料その2:関ジャニ∞のライブ会場はドームのため、もしスタンド席だったらかなり位置が高そうだが高所恐怖症の私でも大丈夫なのか。
また、スタンド席の斜面はかなり急勾配なので、大勢の観客が飛んだり跳ねたりしても耐久性に問題は無いのか心配だ。

懸念材料その3:ジャニーズの観客達は、年齢層がぐっと低いはずである。そんな若者達の中に、私のような年代の女が紛れ込んだら「場違いBBAがいる」と笑い者になり、隠し撮りされてSNSで吊し上げられるのではないか。そうなったら、私は恥ずかしくて外出できなくなってしまう。

懸念材料その4:ドームに直結した地下鉄駅には当日、何万人もの観客が一気に集中するに違いない。
私は地下鉄で行き来する予定だが、無事に乗って帰宅できるのだろうか。
もし、混雑のあまり何本も見送って終電を逃した場合、タクシーを使うしかないが家まで何千円かかるのか心配だ。
それに、タクシーが捕まらなかったら最終手段は徒歩帰宅になるので、当日は歩きやすいスニーカーで行くべきだろう。

懸念材料その5:若者が多い客席の中で、私は悪目立ちしてしまうかもしれない。
万が一、関ジャニ∞メンバーの誰かが「地味な熟女がタイプ」の物好きで、ステージ上から私を見つけた場合、ライブ終了後にスタッフを通じて【メンバー⚪⚪の部屋にお越し下さい】等の怪しいメモを、こっそり渡されるかもしれぬ。
私は既婚者だが、そんなお誘いを毅然と断れるだろうか。なんせ、お相手は関ジャニ∞である。断り切れなかった場合を想定し、ムダ毛の処理や下着を新調しておくべきかもしれない。

…改めて文章にしてみると、私の懸念は単なる誇大妄想であり、被害者意識と根拠のない自意識過剰が入り混じっている事がよく分かる。
これを繊細さんの特性と言うには語弊がありそうなので、あくまで私のパーソナリティとして受け止めて頂けるとありがたい。

ライブ当日は、懸念材料を5つも心に秘めて参戦した私だったが、当然の如く心配ご無用であった。
椅子に座る時間帯はあまり無かったが想像していたよりも疲れなかったし、ファンクラブに入っているNちゃんのおかげでスタンドで席ではなく、ステージにかなり近い特等席だった。

そして関ジャニ∞のファン層は子供から大人まで非常に幅広く、私の年代の方々も多かった。
ライブ後は地下鉄駅が混雑しないよう、ドームから出る人数制限が順番に設けられ問題なく帰宅する事が出来た。
ジャニーズファン達はきちんとルールを守っており、割り込みや争いは全く起きなかった。
当然ながら、スタッフが足早にやって来てお誘いのメモを渡される事も無かったため、私は夫を裏切らずに済んだのである。

そして、Nちゃんのおかげで(なるほど。ジャニーズのライブはとても楽しく安全なのだ)と知ることができ、私はこれからも関ジャニ∞のライブに行こうと思えた。

関ジャニ∞2回目のライブに行く時はNちゃんと日程が合わなかったが、1度経験して安心感を得ていた私は(よし。今回は一人で行ってみよう)と奮い立った。

何とかチケットをゲットしてドームに行き、物販でメンバーの団扇を購入して会場に入り、彼らの素晴らしいパフォーマンスとキラキラな空間に触れ、感動し涙が出た。

世間一般の皆さんにしてみれば大した事ではないかもしれないが、私にとって「一人でジャニーズのライブに行けた」という経験は、とても大きな成功体験なのであった。

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