ホッフェンハイム対デュッセルドルフ_1

ホッフェンハイム対デュッセルドルフ 分析 ~ラップトップ監督の代表格・31歳ナーゲルスマンのチーム~ [2019年2月 マンスリー分析①]

これから、一月ごとにチームを一つ決めて、そのチームを継続して分析していきたいと思います。今回はホッフェンハイム。4試合と少し試合数は少ないですが、やっていきましょう。まずはデュッセルドルフ戦からです。この試合は、1-1の引き分けに終わっています。

ユリアン・ナーゲルスマン・31歳。プロサッカー監督界ではトップクラスに若い年齢です。その年齢にして、ブンデスリーガ1部のホッフェンハイムを28歳の時から指揮。今シーズンの開幕前にすでに来シーズンからライプツィヒで指揮することをすでに発表しているこの監督のチームを分析していきます。

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スターティングメンバー

まずは両チームのスタメンから。ホッフェンハイムはダイヤモンド型の4-4-2。デュッセルドルフは5-3-2です。ではまず攻撃の分析から。

ホッフェンハイム・攻撃 4-4-2→3-3-4に可変

2つ目の図のようにグリリッシュがDFラインに下りて(2CBの間、左右は問わない)、それに連動してガイガーがアンカーに、デミルバイが左IHに。後ろ方向にポジションをズラしていきます。そして、SBが高い位置を取り、幅を取ります。相手の2トップに3対2の数的優位を作ります。3バック、3MF、そしてSBがWGのようなポジションを取るので、3-3-4と表記しました。しかしこの試合、ホッフェンハイムは攻めあぐねていました。1つのゴールもカウンターアタックからです。ではここから、ホッフェンハイムの攻めあぐねた理由を分析していきます。

ホッフェンハイム攻撃・攻めあぐねた理由

相手の第一プレッシャーラインに対して3対2の数的優位を作っているので、図のように相手2トップを片方のサイドに引き付けて、逆サイドのCBにパスを出せば、2トップの脇にスペースがあるので、CB(図はポシュ)が持ち運ぶことができます。持ち運べば、相手のMFを引っ張り出すことができ、フリーの選手を作る事ができます。これを僕は「数的優位を持ち込む」と言っています。しかし、このような3対2の数的優位を生かしてビルドアップし、ボールを前進させることができていませんでした。なので、前線の選手はボールに触る事ができません。触れなくて、どういうことが起こったかというと、「下りて受けにくる」ようになりました。

この図のようにIH(デミルバイ、アミリ)が、CBとSBの間に下りてきて、受けに来ます。しかし、これは余分であり、必要ありません。図にも書きましたが、IHが下りてくることで、CBが持ち運ぶ相手2トップ脇のスペースを潰してしまっています。すでにグリリッシュが下りることで数的優位を作っているので、IHまで下りてこなくてもいいのです。

そして、CFの一角のクラマリッチまで下りてくるようになってしまい、中央のライン間に選手がジョエリントン1人だけ、というようになってしまっていました。前線の選手が下りてき過ぎて、ボールを持つことはできるが、相手のブロックに進入し、打開するためのパスコースがなくなっていました。なので、高い位置を取っているSBがボールを持っても、ハーフスペースでパスを引き出す、ハーフスペース裏に飛び出す、という動き出しでサポートする選手がいないので、バックパスを戻すしかない、という状況に。本来、デミルバイやクラマリッチは、ライン間や、ライン間のハーフスペースにポジショニングし、打開へのパスコースを作るべき選手です。しかし、デミルバイやクラマリッチが下りてきたことが原因の本質ではありません。最初に言ったように相手の第一プレッシャーラインに対する数的優位を生かしてボールを前進させれなかったことです。もし、数的優位を生かしてボールを前進させ、よりゴールに近いエリアに数的優位を持ち込むことができていたら、

この図のようにCBポシュが運んで相手の3センターの1人を引っ張り出してライン間にスペースを作り、IHデミルバイが受け、シュルツとのワンツーで左ハーフスペース裏に進入して、折り返しを入れる、というような攻撃ができました。ボールを触れていない前線の選手が下りてくるのは、アタッカーなので、仕方ないことでもあると思います。なので、第一プレッシャーラインに対する数的優位を生かせなかったことから連鎖的に起こったこと、と言えるでしょう。

ホッフェンハイム・守備 3ボランチではなく3トップ下

守備では、ガイガーがトップ下に入るダイヤモンド型4-4-2。ではなく、4-4-2だと、「3ボランチ+1トップ下」のイメージが強いですが、この試合のホッフェンハイムは「1アンカー+3トップ下」でした。なので、4-1-3-2とここでは表記します。では、この4-1-3-2の守備戦術を分析します。

まずステップ1。

上の図のように、まず1番目に3トップ下が、相手の3センターをそれぞれ掴みます。アンカーのグリリッシュは余っています。そして2番目に、第一プレッシャーライン(2トップ)がバックマークプレスで、片方のサイドに誘導します。1人の数的優位を使われて2トップ脇のスペースから持ち運ばれそうになった時は、3トップ下の左右(デミルバイ、アミリ)が出てプレッシャーをかけ、持ち運びを制限します。このようにして3センターからのブロック進入を消し、CBにも持ち運んでのブロック進入、数的優位の持ち込みをさせないことで、中央からブロックに進入ルートを全部消しました。そして、空けているサイド(WB)にパスを出させます。

続いてステップ2。

サイド(WB)に出させたら、1番目にSBが出て、寄せます。2番目に逆サイドを捨ててボールサイドにスライドして圧縮し、密集を作り、狭いエリアで守備をし、相手に攻撃をさせます。

最後にステップ3、奪い方です。

WBがCBにパスを戻したら、ステップ1、ステップ2を繰り返し、WB-CBでパスを行ったり来たりさせ、相手のビルドアップを後方で停滞させます。そして、相手が中央にパスを入れてきたなら、密集を作っているので人数で勝っている(数的優位)。なので、囲い込むようにして奪い、カウンターアタックへ移行します。この守備がとてもわかりやすく表れているのが、一点目のシーンです。

14分のシーン。右からのスローインに対して、左SBのシュルツが、横幅の半分までスライドして圧縮していて、フィールドプレイヤー10人全員がフィールドの横幅半分に収まっているほどの極端な圧縮・スライドです。そして、スローインがシュテーガーに入ったところにシュルツがプレッシャーをかけ、ポシュがパスカット。ここからカウンターアタックに移行します。デミルバイにポシュがパスを出し、図には書いていませんが、デミルバイが縦パス。そのこぼれをシュルツが拾い、1人交わして裏に飛び出していたガイガーにスルーパスを出し、ガイガーがエリア内で倒され、PKを獲得。それをクラマリッチが決めています。

トランジション

最後にトランジション。ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)は、縦志向が強く、後方から多くの選手が飛び出してカウンターアタックを仕掛けます。そしてネガティブトランジション(攻→守の切り替え)。

ゲーゲンプレスを行います。この図のように、近いパスコースから優先的に消していって、遠くのパスコースに誘い出し、、そこを他の選手が狙って潰す、というコンセプトのように見えました。

これで分析は以上です。

総括

攻撃・第一プレッシャーラインに対する数的優位を生かせず、アタッカーが下りてき過ぎてしまい、逆に打開へのパスコースがなくなり、攻めあぐねた

守備・中央からのブロック進入ルートを全て封鎖し、サイドに誘導。そして極端に圧縮してCBに下げさせてビルドアップを停滞させるか、中央に入ってきたところで密集を生かして奪う→カウンターへ移行

トランジション・多くの選手が飛び出していくカウンター&近くから消して遠くを狙うゲーゲンプレス

ナーゲルスマンは、選手のタイプからもわかりますが、それほどテクニカルな選手ばかりを並べているわけではありません。この試合はクラマリッチ&ジョエリントンの2トップでしたが、サライorベルフォディル&ジョエリントンの両方ターゲットマンの2トップということもあります。ナーゲルスマン自身の理想は「ペップ時代のバルサ」ですが、それほどじっくりボールを持つわけではなく、縦に入れれるなら入れて、ダイレクトな攻撃を、というイメージが強いです。来シーズンから指揮することが決まっているのはライプツィヒですから、このスタイルはそれほど変わらないでしょう。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

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