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第39回:事例分析:ソニック・ロゴを科学的に分析しよう!

さて、「帝釈天で生湯を使い」方式で毎回申し上げています。「音やサウンドの表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起する」ことができるのです。

そのためには、ほんの数秒のソニック・ロゴであっても、感覚的な好き嫌いや、アンケート調査、売れっ子タレントの起用でメロディを作るのではなく、科学的に構築することで、「ほんの数秒、ひと聞き」のメロディで、視聴者の胸いっぱいに御社の企業理念を広がらせ、御社と切っても切り離せない連想を生み出すことができるのです。

今日は、「音の先進国」である米国企業の発行する格付けレポートで日本の企業・団体として初めて、並み居る世界的な金融機関を抑えトップ10入りしたJA共済のソニック・ロゴを分析してみましょう。

分析対象:JA共済様のソニック・ロゴ (00:58秒~)

当該メロディ「ソ(J)- ド(A)- シ♭(きょう)- ラ(さい)」が視聴者に与える心理的効果について、メロディを分解して分析します。
 
音の幅がヒトの心理に与える影響
 
■ ソ-ド(完全4度): 経過、通過していく、その安泰な流れ
・感覚 sensorial :中立的な感情、ゆらぎがなく硬い、客観的で平然としている
・感情 affective :客観的、平然、中立・公正・堅固な印象
・知覚 intellective:達成・実績・簡潔
 
■ ド-シ♭(短2ド): 解決に向かう経過、通過、中途、解決しきれない気持ち
・感覚 sensorial:活動・動作・不和・軋轢
・感情 affective:願望・要求・やぼったさ
・知覚 intellective:依頼・要求・苛立ち
 
■ シ♭-ラ(短2度):解決に向けた緊張感、終局への流れ
・感覚 sensorial:混乱・障害・不良
・感情 affective:心配・不安・危惧
・知覚 intellective:内気・疾患
 
■ 和声連結
属音(C) - 属七和音(C7) - 主音(F)
()内は和音、調はヘ長調である。不安・緊張感の意を持つ属音から、属七和音を経過することで、安心へと解決に向かい、主音に終着する。
 

さて、これらの音形や和声が意味するところを少し深掘りしてみましょう。
 
もとより米英企業では2010年代からヒトの感情、心理、身体に音や周波数が及ぼす影響を科学的に活用した音声コンテンツや広告制作によるマネタイズがすでに一般的となっています。音が競争力やブランド価値の源泉とされているのみならず、ビジュアル・ロゴやテキストが企業理念やコーポレート・メッセージを伝えるように音も同情報を発信し、且つ音が独自のユーザー体験を創り お客様のロイヤリティ・同調を醸成することに成功している企業も多いのです。
 
一方、JA共済が長年発信されている当該メロディは、「ソ(J)- ド(A)- シ♭(きょう)- ラ(さい)」は一定の評価を受ける一方、視聴者に意図していないメッセージを発信している可能性が懸念として挙げられますので、ちょっとした改善をご提案してみましょう。これにより、「メロディで視聴者の心に魔法をかける」ことができるのです。
 
 
企業理念とメロディの合致に懸念!?
このソニックロゴの旋律や和音は、JA共済の価値観、倫理観、理念である「助け合い、平等、公正、連帯、正直、公開、社会的責任、自主的でありながらも他者へ配慮する民主主義」といったメッセージが正しく視聴者に届けられていない懸念がありそうです。
 
このソニックロゴは、コード第三音の「ラ」でメロディが終結します。このことは、視聴者に「不安定さ」のなごりを”無意識に”感じさせたままでソニックロゴが終わることを示します。この「第三音でメロディが終わる不安定さ」により、視聴者は暗に「(金融機関に必要とされる)安心感が無い、“なんとなく無意識のうちに“、信頼感がない、不安である。」と感じることとなり、メロディの発信側にとっても無意識のうちに自らの顧客に対し、真に伝えたいと意図しているメッセージでないものが伝達されているリスクがあると考えられます。

これらを回避・改善するための策として、(勝手ながら・・!)ソニックロゴの移調とメロディーの若干の改良をお薦めしたいと思います。

移調で得られる効果

現状の「へ長調」から「ト長調」の「ラ(J)- レ(A)- ド(きょう)- シ(さい)」に移調することで、ト長調が視聴者に与える感情、「より明るく、前向きで素朴に未来を向く様」を発信することが可能となります。

「ト長調」は色で例えるならば、「真夏の田園風景、畑、田圃」のような濃くビビッドで明るい緑色であり、明るく健全な農村の風景を思い起こさせるものです。それに対し、現状の「へ長調」は色で例えるならばペールグレーであり、若干「モダンで都会的な雰囲気、フレーバー」を醸し出します。従って、JA共済の事業内容や理念、ステークホルダー様を考慮すると「ト長調」のメロディーの方が視聴者により好ましい印象を与え得ると考えられます。
 
メロディーの改良で得られる効果
更に、現状のへ長調のソニック・ロゴでは「ラ」で終了し、最終音がコードの第三音にあたります。第三音でメロディーが終了すると、メロディーの解決感がなく、視聴者は「メロディーが最後まで解決せず、途中でなんとなく途切れたまま終了したのか曖昧な気持ち」を抱き、「漠然とした理由のわからない不安な気持ち」を覚える可能性があります。更には、「ラ」の音が与える印象も「曖昧で若干ダークなフレーバー」であるため、視聴者の「漠然とした不安感」を後押しする懸念あり。従い、終了音の「コード第三音」や「ラ」を変更することで、ソニック・ロゴのメロディが「視聴者が不安感を覚える音」を発信するリスクを回避し、企業の理念や伝えたいメッセージを正しく発信することができます。
 
これらはあくまで簡易的な分析ですが、このように音楽理論と心理学を駆使し、科学的に音声コンテンツを制作することで、『音やサウンドの表現がヒトの「感情」を引き出し、動かし「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起する』こと、即ち音で独自のユーザー体験を創り、お客様のロイヤリティ・同調を醸成することが可能となります。
 
より多くの日本企業が知的・無形資産としての音を科学的に分析・構築し、企業価値の向上に活用されることを願っています。
 
 

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