見出し画像

第4回 :今日も続く。音がヒトの心理、記憶、行動に与える影響の基礎研究

さて、前回のお話の続き・・・

「音楽・芸術表現(だけ)」から「音そのもの、サウンド、周波数の研究」にのめり込んで行ったジュリアード音楽院の名物「先生」の研究室では、80ー90年代と独自の音やサウンドに関する基礎研究が継続されました。

例えば、「ヒトにこういう音楽、メロディ、音型、音、周波数、サウンドを聴かせたら嬉しく感じるのか、汗をかくのか、悲しく感じるのか、血圧が上がるのか、楽しく感じるのか、体温が上がるのか、心拍数があがるのか。聞いたものを24時間後に覚えているのか、48時間後に覚えているのか。」といった研究仮説をたて、音がヒトの心理、記憶、行動に与える影響のデータを何十年もかけて数万人単位で取得してきました。そして、これらの基礎研究は2022年の今日も脈々と継承されています。

「そうは言っても、人種とか性別とか年齢とかで音とか音楽の感じ方って違わない?」

それが違わないんです。違わない事が科学的に証明されているんです。

音・サウンド・周波数からヒトが感じるポジティブな感情・ネガティブな感情は、年齢、国籍、人種、性別、国、経済格差、宗教、文化で差異がないことが基礎研究の結果証明されています。

例えば、波打ち際の漣の音、鳥の声などは人類共通でポジティブな感情を呼び起こすと言えばおわかり頂きやすいでしょうか。逆に、「黒板をきーっ」と爪で引っ掻く音は人類共通で不愉快な音でしょう?

もちろん、「文化的なプライミング:これまでヒトが脳内に蓄積してきた膨大な記憶データの中から特定のデータや効果が喚起される心理的効果」はありますので、「文化による感じ方の違い」を考慮しなければいけない場面は存在します。例えば、日本においては閉店の合図として使われることの多い「蛍の光」を聞けば、多くの日本人はそわそわし始め、帰宅の行動をとりはじめますが、原曲のスコットランドではそのような意味はないでしょうから、蛍の光を聞いた場合の日本人とスコットランド人の行動は異なってくるでしょう。

いずれにしても米国では2010年代よりこれらの音に関する基礎研究がマネタイズされはじめ、企業が音を有効活用しマーケティングや音声コンテンツ、ボイスショッピングは言うまでもなく、商品開発、店舗設計、健康増進に使われるという状況が盛り上がる一方です。ところが、日本においては、音と言えば現在のところ、「BGM、効果音、音響、防音、騒音対策、射倖心の向上」のみに利用されている感があります。

もう一度申し上げます。大事なことは何度でも。

音は周波数。音やサウンドの表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、そして「行動」を喚起します。

音を騒音や防音対策の事だけととらえていたらもったいない。

日本の音声CMは「大音量連呼型方式」か「この冷蔵庫の何段目は野菜室です。」などの説明方式に終始しているように思えます。これでは、お客さまは「どうしたってこれからもずっと〇〇社のあの商品じゃなきゃいや!」というように、企業や製品を愛してくれません。ソニック・アーキテクトとともに音を科学的・戦略的・総合的に活用することで、お客さまにもっと愛される企業・さらに選ばれる製品にしていくことができる、お客様と企業の感情的なつながりを生み出すことができるのです。

それが音の持つ科学的なパワーです。

さて、次回はソニック・アーキテクトとは、いったいどんな知識や経験を生かす職業なのか、についてお話しをしたいと思います。

(注):米国での本音表現研究室は米国の公的機関等からの依頼に基づき各研究者が分析官として出向し共同研究等に従事していますので、SNS上での高拡散性の可能性を考慮し研究室の名称、関係者の実名等を匿名と致します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?