見出し画像

第61回: MacはThink Differentしているか?(前編)

わたしたちソニック・アーキテクトが企業の皆様に絶えず訴えかけていること。それは・・。

エヴィデンスに基づく科学で構築された音やサウンドの効果

企業理念やメッセージは、文字やヴィジュアルデザインだけではなく、音やサウンド通じて「も」お客様に発信されるものです。そしてそのためには、企業がお客様に発信する音やサウンドを「エヴィデンスに基づいて科学的に構築」しなければいけません。それにより・・

・「ほんの数秒、ひと聞き」で視聴者の心に御社の企業理念やメッセージを広げることができる
・その企業と切っても切り離せない連想を生み出し、それが永続的に続く

つまりお客様のロイヤリティ向上を実現するというわけです。

ほんの数秒のサウンドを数億〜十数億人の世界中の人々に何十年にもわたって浸透させ続けている最大の成功例を知っていますか?

そう、Think Different. アップルです。



Macユーザーのみなさんにはお馴染みの起動音。

🎵ジャーン!

Macの起動音は「Think Different」しているか?

試行錯誤の歴史はありますが、アップルは長年Macの起動音にF#Triad 、すなわち嬰ヘ長調の長三和音(ファ# -ラ#-ド#)を採用しており、同社が明らかな目的を持ってこのサウンドを科学的に構築したことが推測されます。

F#、すなわち「ファ#」の音は約369.99Hzなのに・・!?

人の声は精確にファ#を歌い続けることはできません。音符を伸ばし続ければゆらぎが発生しますし、どんなに優れた歌手でも機械ではありませんから音程が極若干であれぶら下がったり上ずったりすることもあります。これは生の楽器でも同じことが言えます。バイオリンもフルートもピアノもトランペットも、人が演奏する生の楽器は精確なピッチの音程を奏で続けることはできません。楽器の個体によっても数Hzは差が出ることもあります。

そう、つまり人の声や楽器は「音程を完璧なピッチで1Hzも違わず奏でつづけることができない」のが自然なのです。この地球上のすべての自然の音にはゆらぎがあるものなのです。
さて、一方Macの起動音は機械が奏でています。生の人の声や楽器ではなく機械が演奏家ですから、アップルはやろうと思えばいとも容易く一分の隙もない、髪の毛一本のゆらぎも許さないパーフェクトピッチを機械に奏でさせることができたはずなのです。ところが・・

微妙にずらした周波数をブレンドする効果とは?

アップルはぴたっと完璧な約369.99HzのF#(ファ#)を用いて嬰ヘ長調の長三和音を奏でさせていません。できるはずなのに「あえて」していない。

なぜでしょうか?

意図的に嬰ヘ長調の長三和音(ファ# -ラ#-ド#)に微妙にずらした周波数をブレンドしているのです。本来ファ#は約369.99Hzであるはずですが、例えば367hzや360hzなど少しだけずらした周波数がブレンドされています。

そしてその心は・・

人間が地球上に現れて以来囲まれてきた「自然の音」にはすべてゆらぎがあるものです。ですから、人の心理にとっては「機械の奏でるパーフェクトピッチ」よりも「微妙にずれた周波数がゆらぎを発生させる自然音」の方が心地が良いものなのです。「機械の奏でるパーフェクトピッチ」の起動音であったとしたら、視聴者はむしろ居心地の悪さを感じるでしょう。

起動音であると同時に機能音としての効果も

さて、このF#(Triad) 、すなわち嬰ヘ長調の長三和音(ファ# -ラ#-ド#)はMacの起動音として多くの消費者に認識される一方、本来の目的は「Macの起動時にPC内に問題がない場合奏でられるサウンド」であるそうです。つまり、「何も問題ありませんよ、今日もPCは問題ないですよ!」という合図を音で知らせてくれているというわけです。
このF#(Triad)の和音はクリアで平穏、ピースフルなハーモニーで、音程がぶつかり合うことで生じるテンションもなく、「問題がないことを知らせる」という目的は十分に達せられていると言えるでしょう。

さて、少し長くなりましたので今回はここで一旦区切りましょう。

次回、「Macの起動音でThink Differentを表現するアップル」。その核心に迫ります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?