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〈44〉ローズマリーの匂い袋/台風で倒れた枝で小さなサシェをつくってみた。

ローズマリーの葉でつくったサシェ。

今年の9月は台風が多い。海のすぐそばに住んでいるから、ふだんから強い海風が当たるけれど、さすがに台風から吹く暴風となるとレベルが違う。初めてこの家に住んで迎えた台風のときは、屋根も壁も巻き上げられるんじゃないかと思うほど、家のあちこちから風切り音が聞こえて、生きた心地がしなかった。バタバタ、ヒューヒュー、ガシガシ、家の何がそんなに音をたてているのか想像できないような激音に心細くなるのは、15年住んでも同じだ。台風も最強レベルの風が吹くと、当然、庭の草木や畑の作物もなぎ倒されてしまう。

北側の吹きさらしの崖近くに植えていたローズマリー。
冬から春にかけて可憐な青い花をつけて楽しませてくれるし、何より料理に重宝していた。イサキやスズキなどクセのある魚をホイルで蒸し焼きにするときに、ローズマリーをひと枝入れておくと臭みが消える。Nさん(オット)は、ステーキを焼く油にローズマリーを入れて香りを移すのが大好き。彼の得意料理の一つだ。
ローズマリーは灌木化して堂々と茂っていたけれど、台風11号の強風で根元からなぎ倒されてしまった。そのまま捨ててしまうのは忍びなかった。近所にひと枝ずつ貰っていただいても、まだ山のように残った。

そうだ!匂い袋をつくろう。
思い立って、まずローズマリーを洗って物干しに掛け、ひと晩干した。さらに除湿器のある部屋で2日間干したら、カラッカラに乾いた。
新聞紙を広げて、尖った葉を指でこそげ取ってゆく。これが思った以上に骨の折れる仕事だった。料理に使う程度の細い枝ならどうにかできるが、野生化したように太く育った枝からしごき落とすのは、力が要る。しかも、松ヤニのような樹液がついて指は真っ黒。「サシェ」ってオシャレな言葉とは縁遠い地味な下準備に、ちょっと後悔しかかった。

のべ3日間ほど悪戦苦闘して、大きなボウルに山盛り2杯の葉を集めた。
これを不織布のティーバッグに詰めてゆく。これはなかなか楽しくて、不思議なお茶をつくっている謎のオバアサンの気分。イヒヒヒ。
しめて40袋のティーバッグができあがった!

あとはサシェをつくる番。使わなくなった白い麻の枕カバーをほどいて、10×15cmほどの袋をちくちく縫ってゆく。テレビの大相撲中継を見ながら、のんびり針仕事に時間を割いた。
台風が来て、ローズマリーが倒れなかったら、こんなゆっくりした気分を味わうこともなかっただろう。

できあがったサシェは、タオルの間や下着の引き出し、食器棚の奥、玄関の隅、トイレの棚の上、いろんなところに置いて回った。強い香りではないけれど、ふっと松葉のような青い匂いがする。
この匂いは、頭をすっきりさせるそうで、虫除けにもなるらしい。長くはもたないだろうけれど、ひととき自然の香りを楽しもう。
台風一過、暴風の置き土産だ。

ティーバックに詰めたローズマリーを、
さらに麻の布袋に入れて、サシェの完成。
玄関にも置いてみたけれど、
引き出しや戸棚など
閉め切る場所の方が効果的みたい。

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