見出し画像

国立歴史民俗博物館はすごい4

第三展示室の近世について書こうと思った。
しかし、かの博物館に行ってから、かれこれ2週間ほど経とうとしている。歴博の感動は忘れまいと、自分の一番好きな民俗のコーナーについては後回しにする予定だったのだが、なかなか時間が取れず記憶ばかりが消えていくので、やはりここを先に書いておくとしたい。

民俗のある第四展示室に入ると、まずはおせち料理が迎えてくれる。
「お節」節目を祝う日本の文化の現れとして三越デパートのお節の変遷が並んでいた。目を疑うような金額のお節料理・・・でも売れたんだろうな。
全体を通して思ったことは、歴博は昔を今へ、今を未来へつなぐ橋渡しを強く自認していると思う。
日本文化は過去だけでなく、まさに今も文化は作られ、繋がっている。それをメッセージとして明確に伝えている。
今の家族像としての公営住宅の標準的な一室を展示(といってもちょっと昭和を感じるものだったが)したり、美意識の変遷を著わすものとして化粧品を陳列したりしている。
そして、観光地化や政策によって変わってきた地方のイメージ、それらに伴う名産品・お土産などをしっかりと記録している。

今の情報は、インターネットでリアルタイムに入手できるが、こうしたアーカイブ情報はとても貴重だ。こうして歴博で振り返ってみないことには、十年位前のことも忘れてしまっている。
いろいろなことに感動しつつ、スロープを下りつつメインコーナーへ入っていく。
フロアに降り立つと、いきなり炎が舞う勇壮な祭りの映像と壊された神輿が出迎える。「壊された神輿・・・?」度肝を抜く演出だ。

写真を撮ってこなかったのが残念だが、宇出津あばれ祭の映像のようだ。
自分の住む地域では、神輿は大切に扱うもの(少なくとも壊したりはしない)だから、この映像は衝撃的だった。
しかし、理屈を聞けば納得する部分もある。疫病などが流行ったときに、その厄を擦り付けて、川に流す。流して厄を払う・・・異界からきたモノを異界に返すということだ。
目に見えないモノを可視化して払う、というのは疫病の原因が分からなかった当時に人にとって大きな安心となったことだろう。
そうした大掛かりな装置であった、と思っている。

今も昔も目に見えない何かが、圧倒的な脅威で私たちを襲う時、その対応策を可視化する、具体化するというのは、理屈抜きにして必要とされる。

思い付きだが、このコロナ禍でマスクやアマビエ様が流行ったのは、そういうことじゃないかと思う。
自分の周りでは、アマビエ様の姿を本当によく見かけた。一種の妖怪だが、ものすごいスピードで関連グッズが作られていった。そういう需要があった。
そして、マスク。効果があるなしは、さておき、具体的に目に見える形で厄を防いでいるという感覚が、大きな安心感だったのだと思う。

民俗学は、畏れの具現化だと思う。
畏れとは、善悪の彼我を越えたエネルギーの絶対量で、ともかく人間の仕業じゃない!と思ったことは、身近なものに小さく落とし込む。
もしくは、祭り上げて封じてしまう。
で、安心する。

様々な形で、そしてものすごい労力を掛けて祭りや人形や工芸品ができるのは、どうしょうもうない不安感の原因を閉じ込めたい、隔離したい、と思ったからなんだと思っている。
民俗のコーナーは、ほかの展示室よりも、息吹を感じる。
ここには、それを作った当時の人々の思いが込められている。その怨念(言葉が妥当じゃないかもしれないが)が、モノには宿っている。だから、ちょっと見ていると怖いし、でも魅力だ。

あとでガイドブックを買えばいいやと、思ったため、記録として面白いと思ったものしか写真に撮らなかった。

ばけ物三十六歌仙かるた 化け物かるたは、いろいろなバリエーションがあるらしい。面白かったので、お土産コーナーにあったら買おうと思ったが、残念ながらなかった。どこかで売っているのかしらん。
招きの猫のオブジェ。猫好きが多いのもあるだろう。ものすごい数のバリエーションがあるが、服を招くしぐさ、だけは共通している。ただ、こうして並ぶと「異界感」が漂ってくる。
これは地域差があって面白い。研究書が館内の書籍コーナーにあったため、購入した。エンガチョや親指隠しはだれしもがやったはず。が、今はたぶんかなり廃れたろうなあ。
河童は、それだけで観光になるほどの「アイドル」だ。頭に皿を最初にのっけた人が、すごいと思う。全国河童サミットが開かれるくらいだから、大出世妖怪だ。

後半は職人の工芸品などのコーナーもあった。
個人的には、こちらは一般の博物館でも似たようなものがみられるな~と思ってしまい、そこまでじっくり見ていない。

コーナーの一つに、神棚や葬式を特集したところがあった。
あまりにたくさんの情報があり、今の私にはまとめがつかない。
いろいろ書こうと思ったが、疲れてきたの今日はここまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?