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Story cube’s story 2 ディスコミニケーション

錐の墓

古の塔は、天に届くことを希った。
平和を司る空の天秤は、人々の罪の重さによって傾いた。天は定めに従い星々を降らせ、塔を打ち砕いた。

西江(いにしえ)の人々は、古き言葉を失って方々に散った。
古き言葉はもう疾うに消え、もはや深海の古代魚のみがその音を知る。

新しき人々は、天にまっすぐ反り立つ塔が神の怒りに触れたと考えた。
天を目指す欲望は潰えず、彼らはひっそりと錐の塔を墓に擬して作り始めた。
錐の墓は、新しき言葉と幾何と数の秘術を以て造られたバベルの塔の再興である。


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