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STAR BAR GINZA 岸久のシグネチャーカクテル

シグネチャーカクテルとは。
そのBARやバーテンダーにとって、代表的なカクテルを指す。

STAR BAR GINZA、バーテンダー岸久のシグネチャーカクテルは「サイドカー」だ。

サイドカーは説明不要のスタンダードカクテル。シェイクして作るカクテルの代表格。
【レシピ】
ブランデー 30ml
コアントロー 15ml
フレッシュ・レモンジュース 15ml
ベースであるブランデーをジンに変えれば「ホワイトレディ」、ウォッカなら「バラライカ」、テキーラなら「マルガリータ」となる。このベース1/2、リキュール1/4、酸味1/4の配分が、カクテルレシピの基本となる。
しかし、僕はこの基本レシピがあまり好きではない。甘すぎるのだ。
そこで、ベース2/3、リキュール1/6、酸味1/6で作ることが多い。この方が甘味と酸味のバランスが圧倒的に良くなる。
上記レシピに当てはめてみると、以下の通り。
【レシピ】
ブランデー 40ml
コアントロー 10ml
フレッシュ・レモンジュース 10ml
このレシピ、銀座TENDERのミスターハードシェイク、上田和男氏も採用していると聞いたことがある。

対して、岸久氏のレシピは下記の通り。
【レシピ】

ブランデー(クルボアジェ ルージュ) 50ml(冷蔵)
グランマルニエ 25ml
フレッシュ・レモンジュース 10ml
コアントロー リンス

お分かりの通り、そもそも、使用する酒が異なる。果たしてこれを「サイドカー」と呼んでいいものかどうかの議論はここでは割愛させて頂く。コアントローの代わりにグランマニエを使用するのが一番の相違点となる。
両者ともにオレンジリキュールであるが、グランマニエはコニャック(ブランデー)を含んでいるため、コアントローよりも芳醇な香りを放つ。対してコアントローは、軽く、華やかな印象。

早速、作ってみる。
岸久氏と言えば、「インフィニティシェイク」が有名だ。シェイカーを振る際に、上下左右だけでなく捻りや不規則な動きを入れることにより、より細かい気泡をカクテルの中に含ませていく。マイクロバブルと呼ばれるその気泡が、度数の強いカクテルの口当たりを柔らかくさせる。
その技術は、NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀」にも取り上げられたほどだ。

できる限り、インフィニティシェイクの動きを模倣して完成したカクテルがこれ。
ブランデーの銘柄まで指定されているが、あいにく高価すぎる酒は我が家には置いていないので、安いブランデーで代用した。

グラスも、オリジナルに寄せたものをチョイスした

岸久氏は、最後カクテルをグラスに注ぐ際、茶漉しを使って、砕けた細かい氷を取り除いている。
これは好みだと思うが、僕は表層の細かい氷も、カクテルを味わう際の一つのアクセントだと考えている。そのため、今回もあえて表層に浮かぶ氷も一緒にグラスに注いだ。
カクテル全体が細かい気泡によって、うっすらと白く濁って見える。これがマイクロバブルを含んだカクテルの特徴だ。

飲んでみると、通常の「サイドカー」と比較して、より深みのあるカクテルに仕上がっている。第一印象として、オトナのサイドカー、そんな言葉が頭に浮かんだ。サイドカー自体が度数も高く、かなりオトナな飲み物であるのに、さらにその上をいくオトナっぷりだ。20代の若造には似合わぬ代物。やけどする。
と、同時に、少々芳醇(重さ)過ぎる印象も持った。
そこで、コアントローとグランマニエだけを入れ替え、普段のレシピ通りに作ってみた。

【レシピ】
ブランデー 40ml
グランマニエ 10ml
フレッシュ・レモンジュース 10ml
コアントロー リンス

通常のカクテルグラスを使用

好みだけで言えば、こちらの方が僕は好きだ。甘味と酸味のバランスが疑いようのない完成度を誇る。岸氏のオリジナルをシェイプアップさせた軽さ。
ただし、これは完全な好みで、妻は岸氏オリジナルの方が好きだ、と言っていた。

このグランマニエを使用するアイデアは、きっとサイドカーにのみ通用するものだと思った。これをホワイトレディやマルガリータでやったら、カクテル本来のキレを失い、台無しになってしまうと感じた。ベースの酒がブランデーだからこそ、グランマニエとの親和性が生まれたのだろう。
グランマニエを使ったら、そもそも、色合いが変わってしまう。ホワイトレディではなくなってしまう。

オレンジの風味を効かせた一杯。
また一つ、オトナにのみ見える景色を体験したことだけは確かだ。

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