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坂本龍一『Aqua』

不思議な朝だった。
4/15、土曜日。
はっきりとした雨音が聞こえる。カーテンを開いて確かめるまでもない。外は、久しぶりの雨だ。
休日の朝。僕はまどろみの中、イヤホンを両耳に差し込み、iPhoneの YouTubeアプリを起動した。ここ最近、ずっと聴いている坂本龍一のサムネイルが並ぶ。適当にクリックし、瞼を閉じた。
ピアノだ。何度か、聴いたことのある曲。曲名は、記憶にない。ピアノの単音が、雨音と重なる。とけ合う、そう表現した方が近いかも知れない。
頭の中で、水玉がこぼれ始める。それは、はっきりとした映像として、僕の頭の中にイメージされた。ひと玉ひと玉。こぼれるたびに、心にゆっくりと波紋が拡がる。その小さな波は、心地よい美しい円を描き、僕の抹消まで到達する。
雨の中を、揺蕩う。上下左右、前後に、揺蕩う。そこに規則性はない。
曲が終わる時、ゆっくりと、瞼が開いた。iPhoneを掴み、曲名を確認した。
『Aqua』
娘の美雨のために書いた曲、とある。
雨。
こんな休日も、悪くないと思った。
僕は、もう一度再生ボタンを押し、瞼を閉じた。雨が、体にとけ入る。
不思議な朝だった。音楽が、意思として、伝わる。
とても、幸せな朝だった。

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