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『小説の書き方1〜10』2日目を受講して

初日に、とにかく「想像力」と言う単語をこれでもかと植え付けられて臨んだ、小説講座2日目。

午後からの半日だった昨日と異なり、今日は朝から丸々1日。しかも、そのほとんどがワークの時間だった。
普段使わぬ脳の部位を、昨日からフル回転させ、朝の時点ですでにオーバーヒート気味。ワークに取り組む課題そのものは非常に楽しいものであったが、全行程を終え、電車に揺られている今現在、すぐにでも寝落ちしてしまいそうだ。
外で目一杯遊び倒した週末とは、別の疲労感。

今日のワークは、大きく3つ。

①抽出した「気持ち」を文章に落とし込む作業。
ここでも、まず絶対的に前提となるのが、キャラクターの「気持ち」。言い争っている時、どんな気持ちなのか、観光名所の写真を見て、どう思うのか。とにかく、そのキャラクターになりきって、気持ちを想像する。3人のキャラクターが言い争う時には、順々に3人になり切る。性別も年齢も、立場も性格も違うキャラクターになりきり、気持ちを想像する。そして、設定したキャラクター像との矛盾を修正していく。
引っ込み思案の少年が、こんなこと、思わないよな。自己中の女性だったら、もっと冷たいこと考えるよな。
とにかく、想像。
想像→想像→想像。矛盾を発見。
また振り出しに戻って、想像→想像→想像。
想像する行為が、これほどまでに疲れるとは。
同時に、気持ちを表す語彙力の無さ。ここは、単に勉強不足。正直、あまり意識してこなかった部類の単語たち。小説では、とにかく重要だと刷り込まれた。

②与えられた場面から、そこにいる人物像を想像し、設定を肉付けしていく作業。
「気持ち」の想像から離れたと思ったら、今度はさらに違う想像を強いられる。
普段ではありえない様なシチュエーションのお題を出され、なぜ彼ら彼女らはそこにいて、どういう関係で何をしようとしているのか。
想像して、ストーリーを与えていく。
この時大切になるのが、日常とのリンク。整合性。わざと、ありえないお題が出されるが、そこに辻褄合わせを加えていく。そこでも、僕らに与えられた唯一の武器は「想像力」だけだ。
平日の昼間に、なぜ学生そこにいるのか?
山中で喪服を着た人間の狙いは?
こんなお題を、皆真剣に、眉に皺を寄せて考える。

③1人称と3人称の違いを学ぶ。
一つの場面を課題として出され、男の1人称、女の1人称、そして3人称でそれぞれ、書く。
今回のワークで、この課題が個人的には1番面白かった。
どこにカメラを置くのかで、見える世界が全く違う。同じ場面を切り取ったはずなのに、こうまで真逆の内容になるのか、と、課題に取り組みながらニヤニヤとしてしまった。
昨日から刷り込まれたせいで、何も言われなくとも、男の気持ち、女の気持ちを、まず考えることができる様になっている自分に驚いた。ひとつ、確実に身につけることができる様になった新しい手法だ。

2日間、小説について学び、僕が感じたことは、小説は総合格闘技に似ている、ということだ。
立技だけではだめ、寝技だけでもだめ。瞬発力も持久力も求められる。正直さも、狡賢さも必要だ。
ヴァーリトゥード(なんでもあり)の格闘技に近い。
でも、その中でも、確実に勝利に向かう方法の様なものがあることもわかった。
僕が昔、闇雲に小説を書こうとして、たったのひとつも最後まで書き上げることができなかったのは、丸腰でヴァーリトゥードのリングに立ったからだ。
そもそも、ルールすら知らなかった、と今にして思う。

寒竹さんは最後に、とにかく未熟でも最後まで書き上げることを上達のポイントに挙げた。
ひとつ完成させないと、全く前進できないのが小説だと言う。
素人が、プロットだけ組み立てようと思っても、それは新米刑事が、何の手掛かりもなく事件を推理する様なものだと。まずは書いてみて、自分なりの手掛かりをたくさん得ましょう、僕はそう解釈した。

今回の講座を受けて、早速小説を書ける様になったとは、思わない。むしろ、想像以上にそのハードルの高さを感じたことも確かだ。
でも、小説とはなんぞや?小説を書く方法論は?という、今回の受講動機はわかりやすい形で解決した。加えて、小説を書いてみよう、そう思わせてくれる内容であった。それほどまでに、蓄積した疲労感に比例して、楽しい時間を過ごすことができた。

しかも、今回のことは、小説だけでなく、ライターとしても役立つ学びも多かった。特に、立場(キャラクター)が変われば見え方も考え方も異なる、そんな当たり前のことを、深く想像する上で必要な技術を身につけることができた。
また、これから、小説を読むのももっと楽しくなりそうだ。登場するキャラクターだけでなく、作者の意図や気持ちまで掘り下げて考えることができそうだ。

人生を生きる上で、「想像力」はなにより大切なものの一つだ。
たまたま教室で出会わせた知り合いと、初日講義後、ビールを飲みながら「みんなが小説を書けば、いじめも戦争はなくなるね」とお互い笑い合ったのが印象的だった。

想像力は、世界を変えることができる。
そう思えた2日間だった。

寒竹泉美さん、とてもわかりやすくて、学びが多く、常に笑顔で教えてくれた2日間、ありがとうございました。とても気持ちよく受講できました。

用紙は手書きの文字でいっぱい

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