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対岸のシルフィウム《SILPHIUM by Stora Skuggan》

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Stora Skuggan/SILPHIUM
ストラスクガン/シルフィウム

青草の蘞み、渋いしぶき、グリーンスパイシー。
地中海沿岸の見晴らしのよい丘。海沿いを連想する豊潤なマリングリーンと、背の高い植物が揺れるフレッシュスパイシー。

全体像はグリーン&スパイシー、随所で酸っぱい渋みの“シルフィウムアコード”が明快にそり立ちます。背丈の高い草が揺れるように、軽やかさと強かさが交互に現れ、香りを引き締めたり緩めたり。これが、繰り返す波音や海風のように感じられ、緑の丘から海沿いまで、俯瞰する鳥の目線をイメージしました。あるいは、海の上で追風を感じながら、丘の緑を見上げます。

𝙸𝚗 𝚖𝚢 𝚌𝚊𝚜𝚎

パリッと音を立てて折れそうな青草の茎、みずみずしい辛さがはじけて、じんわり効きます。
私はシルフィウムをたっぷり感じたいのでつい全身に過プッシュしてしまいますが、少量でも的確に香る香水なので、うなじに軽く、あるいは両膝裏につけても良かったです。

Stora Skuggan/ストラスクガンは、スウェーデンのストックホルムにあるニッチフレグランスブランドです。ラボで香水の製造を行い、出荷もスタジオからで、日本への発送も可能です。日本代理店はNOSE SHOPさんで、取扱い店舗では試香ができます。

香水はもちろん、コンセプトもアートワークも大好きなので、いつか必ず店舗に行ってみたい𖦸𖦸

https://www.storaskuggan.com/

𝙳𝚎𝚜𝚌𝚛𝚒𝚋𝚒𝚗𝚐

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"Even if one just tastes it, at once arouses a humour throughout the body and has a very healthy aroma” - Pedanius Dioscorides, around year 70 BC

薬理学と薬草学の父、古代ギリシアのペダニウス・ディオスコリデスが紀元前70年に記した「シルフィウム」に関する一節です。

手折ったフキやキクのような青々とした酸っぱいえぐみ、根菜をしがむ繊維質な辛さと素朴な甘み、控えめで厚い花のコク、それらを遠くの空で大きく掻き混ぜる嵐の気配。ザッと視界一面を風が抜け、音を立てて、シルフィウムの高い茎を揺らします。

常に“シルフィウム”が主役の香水ですが、まずトップノートではシスタスがシルフィウムアコードを後押ししてコクのある青さ、あるいは明るいイエローの力強さが出ます。フレッシュなジンジャーをはっきり感じるのもこの瞬間です。
そこからは、なんども波が寄せるように、あるいは風に揺れるように、シルフィウムアコードを中心としたグリーン&フレッシュスパイシーが互いのパワーバランスをとりながら、くるくると新鮮な青さを振り撒きます。

イメージするのは花の咲いた丘ではなく、どこまでも緑の丘です。ゼラニウムやイモーテルだと思いますが、他の香料も同様、単体で嗅ぎ分けられる場面は無いです。ピリリと煙くしみるシルフィウム、フランキンセンス調に冴えたシルフィウム、シダーの木端のようにドライなシルフィウム…正解のない植物のイメージ、風景がひたすら巡ります。

やがて、まるで遠方の嵐の動きがとてもゆっくり感じるのように、悠長な錯覚で、個々の香りの変化に気付かないうちに「シルフィウム」を追い求める気持ちも薄らぎ、風のなかに消えています。


𝙳𝚊𝚝𝚊

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TOP■Shilphium accord, Custus
MID■Cinnamon, Tabacco, Geranium, Blackpepper, Ginger, Clove
BASE■Frankincense, Cedarwood, Myrrh, Leather
Perfumer■Olle Hemmendorff, Tomas Hempel
2017 By Stora Skuggan


ストラスクガンぜんぶ好き…。

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