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《Mendittorosa|メンデットローザ》

Mendittorosa odori d’anima は、ブランドディレクターStefania Squeglia氏と二人の調香師Amélie Bourgeois氏とAnn-Sophie Behaghel氏が、2014年にイタリアを拠点に立ち上げたニッチフレグランスブランドです。
神秘的なコンセプトと芸術的なパッケージングデザインで、彼女らの「魂の香り」をつくっています。

魔法のような、ファンタジックなテーマに心をくすぐられますが、相応の高価格を見て我に帰ります…!!

昨年末にタリスマンコレクションのサンプルセットを注文しました。Athanor発表前だったので€75,00と日本への配送料金が€20,00でしたが、現在は1.6mlガラスバイアル7本セット€90,00が販売されています。

金箔押しのボックスとオリジナルカードが同梱されていて、開封するとメンデットローザらしいパウダリーノートがふわ〜〜と広がりました😽

メンデットローザの香水はユニセックスにつくられていますが、全体的な印象としては、ラジュグアリーで女性的なやわらかさを感じるパウダリーが多いと思います。

Talismans Collection

タリスマンは護符やお守りのこと

▶︎ Le Mat (2014)

“Every man is a divinity in disguise, a god playing the fool.”
Ralph Waldo Emerson

Le Matは「愚者」のタロットカードが題材で、マルセイユ版の図案のカードが同封されていました。

すこし甘酸っぱさを感じるパウダリーと、軽やかなウッディ。私の鼻では、イモータルが中心でフレッシュに香り、粉状のスパイスとローズでふんわり包まれます。肌近くでクローブやパチョリが薄くきれいなウッディのベールをつくっています。
親身な香りですが、捉えどころがなく、謎めいたハーバルノートやスパイシーさが神秘性を保ちます。地があるのに足がついていない、それゆえ誰でも身に付けやすいユニセックスな香りなのかなと思いました。

NOTES:ナツメグ、ブラックペッパー、クローブ、エジプトのゼラニウム、グラースのロサ・ケンティフォリア、インドネシアのパチョリ、カシミアウッド、スペインのイモータル

▶︎ Sogno Reale (2015)

“All that we see or seem is but a dream within a dream”
From ‘A Dream Within a Dream’ by Edgar Allen Poe
Sognoは「夢」の意、真の夢、夢の中の夢がテーマです。

表層はオゾニックな透明感、シトラスやオリバナムがあっさりしたマリンノートとあわさって開放的ですが、中核にどっしり詰まったなめらかな香り、ウッディレザーやパチョリやチュベローズをだんごにした”苦味の奥の甘み”みたいなものに引き留められ、ゆらゆら、チリチリ、と放出されているような香り方をします。これはふしぎな安堵感…!
馴染みのある香りで例えると白いでんぷん糊、マリンノートはあまり海っぽくなく、あっさりした苦甘さととろける感じは確かにちょっとウニっぽいかも。

HEAD:レモン、ベルガモット、マリン(ヨード)アコード
HEART:チュベローズ、パチョリ
BASE:火山帯のオリバナム, ハイラシウム、ラム、サンダルウッド、安息香、アンバーウッド

▶︎ Nettuno (2016)

“I fly In an intergalactic space Where gods are dancing..”
From ‘Neptune’s Flight’ by Marco Pesatori, astrologer & poet

今回試してみたかった本命の香水です!題材は海王星、コンセプトはミラー、ボトルにも鏡がついています。

はじめに結晶のような甘さが降りそそぎ、音を立てずにキラキラ砕ける…この瞬間のスパイスの散り方が繊細でドラマチックで印象深く、しかも潔く晴れていきます。
視界が開ける眩いパウダリームスクと静かで仄暗いアーシーノートがなだらかに広がり、ここに「複雑なローズアコード」が展開します。ご婦人系ローズが苦手なので心配でしたが一切の不安が払われました、これは複雑すぎて解けない、架空の大地、海王星の大気、です!
最近いくつか似たような構成の香水を試しましたが、Nettunoは背後にとても広々したアーシーノートが感じられて、粉にむせることなく、パウダリックウッディの居心地よさを堪能できました。

HEAD:シクラメン、ピンクペッパー、ブルージンジャー、ナツメグ
HEART:複雑なローズアコード
BASE:モダンレザーアコード、ハイチのベチバー、キャロットシード、アイリス、ベンゾイン、ミルラ、ホワイトムスク

▶︎ Osang (2017)

“All the soarings of my mind begin in my blood”
Rainer Maria Rilke
ナポリの聖ジェンナーロの”血の融解”が題材になっています。

びりりと錆のようにも感じる、強い苦みと甘みが凝縮した香り、フェヌグリーク・アブソリュートでしょうか。凝結した血が液化する様子が想像できる、赤黒い乾きと生々しさがあります。
花の香りは分からないです。ハニーよりもさらりとしたダークウッディはメープルシロップのようで、そこにワイルドなアニマリックムスクと、焦げたようなスパイシーが渦巻いています。
全体的にダークですが、不気味ではなく荘厳な力強い香りです。アニマリックムスクがしっかり肌を掴みますが、鼻を離すと乾いたバルサミックやインセンスにメンディットローザっぽいパウダリーの霧がかかり、古い建造物、大聖堂っぽさがわかります。

HEAD:ヘリオトロープ、ハニー、メドウフラワー、フェヌグリーク
HEART:四川山椒、ナツメグ、サブダナム、アイリス、ミルラ、ベンゾイン、ベンゾイン
BASE:サンダルウッド、アンバー、ウード、インセンス、ペルーバルサム、アニマリックムスク

▶︎ Sirio (2018)

“And as the fiery Sirius alters hue, And bickers into red and emerald…”
From “The Princess” by Alfred Lord Tennyson

地球から見えるもっとも明るい星、シリウスが題材です。

りんごのエチレン臭のきりっと澄明な香りに、ボリューミーなホワイトムスクがもくもくと覆いかぶさるように展開します。そのなかで、ルバーブからプラムやローズやピオニーへいくつもの揺らぎをみせ、道しるべをたどるような変化があります。アンバーウッディもバニラもほとんど質量を感じない軽さ、ローズやピオニーは引き締まっていて、若々しい印象です。
ムスクやカシュメランがちょっと分厚く感じますが、アップルノートが埋もれずに長く美しく残る様子に、雲の切れ間、天高く輝くシリウスを連想します。

HEAD:ルバーブ、アップル、ホワイトムスク
HEART:ローズ、ピオニー、プラム
BASE:グアヤク、カシュメラン、ウード、バニラ、アンバーウッド

▶︎ Talento (2019)

“Talent is a source always springing with new water.”
Ludwig Wittgenstein

カードにはミントとバラがデザインされ、ボトルキャップは抽象的なバラ、ネックには銀のタッセルと枝のチャームがさげられています。

コンセプト通り、バラの花瓶に浮かべたミント、きれいな水が溢れてきます。ミントより水の香りがきりっと感じられてモヒートっぽく感じましたが、次々にローズが花開いて、大輪の香りが広がります。他の香りはすべて後方にまわり、最後まで悠々とローズ中心になります。
花瓶で咲く薔薇なので清潔感があり、メンディットローザのパウダリー感もしっかり支えています。

TOP:ミント、アルデヒド C12 MNA
HEART:ローズオキシド、ローズ・インフュージョン、ゼラニウム
BASE:インドネシアのパチョリ、オークモス、シダー

▶︎ Athanor (2020)

“Thus, the superior man consolidates his fate by making his position correct.”
50, Ting. The Crucible. I Ching.
Athanorは「錬金炉」の意、錬金術師は硫黄と水銀と塩の三原質を用いて物事の変容を解釈します。

調香師はLuca Maffei氏、およそ2年の歳月をかけたプロジェクトで2020年末頃にローンチされました。
ハートノートに用いられているFumencensはフランキンセンスの一種(ペイヤンベルトラン社の天然香料)だそうで、ルカ・マフィ氏がLaboratorio Olfattivoで調香したSacresteでも使われています。
全体像はウッディ、暗くて陰気でシュールな香りだそうです。トップノートの硫黄が気になります。

TOP:硫黄、カシス、サフラン
HEART:アイリス、シプリオール、フーメンセンス
BASE:カシュメラン, グアヤクウッド、ジャワのベチバー、ブラックアンバー


Odori d'Anima Collection

ブランド名にもなっているOdori d'Animaのメインコレクションは、いくつかのテーマで連作発表されています。
2021年1月からNOSE SHOPでメンデットローザの取り扱いが始まるそうなので、試香できたらまた加筆しようと思います!

Trilogy (2012)
- Alfa
- Omega
- Id

The Duo (2013)
- North
- South

Time Without Time
- Archetipo (2017)
- Lacura (2018)
- Rituale (2017)

Versi
- Orlo (2020)
- Ithaka (2019)


以上、
メンデットローザを試した記録です。

期待していたNettunoやSirioも良かったですが、パウダリーウッディやパウダリームスクが並ぶ中、Osangの苦甘いハーバルとごりごりアニマリックがとても面白くて印象的でした!


いただいたサポートはすべて香水にそそぎます𖦸𖦸‼︎