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《TOBALI|トバリ》 discovery set

TOBALIのディスカバリーセットを試しました𖦸𖦸𖡾

クリアービニールの限定デザインバッグに入っています。シンプルなホワイトインクのロゴとフォトアート、透かした影まできれいです。

TOBALl
discovery set

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しずかな迫力と存在感ある香りが多くありました。
ハートノートからドライダウンへの展開の速さは『〜〜に秘めた〜』とサブタイトルにあるような、極端な二面性をイメージします。

クールで落ち着いていて、ステレオタイプにははまらない趣、香りの質と厚みから自信が伝わってきます。
全調香にジャポニズム・ノートを謳っていて、良くも悪くもお香っぽく収束する印象です。やや香り飛びが早いなと思いましたが、ベースノートは甘く肌残りします。

𝔽𝕚𝕟𝕕𝕚𝕟𝕘𝕤

トップノートはそれぞれのタイトルを分かりやすく連想できる香り立ちで、顔を上げさせるような、キレのある初撃です。印象的な変化は短く断ち切れるように終わり、ヘビーウェイトな香り方に変わっていく、と感じました。

私の肌ではプッシュしてから1時間ほどでドライダウン(トップノートやハートノートが感じられなくなり、ベースノートが消えるまでの、香りの展開の最終段階)してしまうので、変化していく香りが好きだと、すこし物足りないかもしれません。鼻を近づけると肌に残った甘がわかる程度で、それも3〜4時間ほどで消えてしまいます。

肌質との相性なのか、つける場所や、経過の環境差か、いろいろ試してみたくなったので、今回パートナーにも協力してもらって記録をつけました。
それぞれ、日毎の感想メモに◯囲み数字を振っています。なぐり書きで文字数が多いです。

SMOKE FLOWER
スモークフラワー

色気に秘める知性
NOTE:JAPONISM POWDERY FLORAL

わかりやすくフローラルな香りで、生来の可憐さ、抗えない引力があります。フローラルブーケ系は苦手な私の鼻も拒みませんでした。

①まるみのあるフローラルブーケ、赤いリンゴや洋梨のようにサリっと音がしそうなフルーティ、抱きしめたくなるような可憐な香りで始まります。育ちのいい、幼いレディ。彼女(スモークフラワー)が私のもとに駆け寄ってくると、自分が特別に選ばれたかのような高揚感がありますが、面には微笑に留める健康的フルーティパウダリー。トップノートから30分程でホワイトフワラーのグリーンが増し、小1時間で衣装タンスにしまった香り石鹸くらいのやわらかい香り立ちになりました。
映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のクラウディアを連想します。
スモークフラワーのドライダウンはすこしパウダリーな素肌感。

②トップノートはぱっと顔をあげてほほえむ、性善的フルーティフローラル。ミドルノートからホワイトリリーの花粉のようなパウダリーフローラルを含みはじめ、これが知性ともとれるし、生来の色気ともとれる、悩ましいチャーム。フローラルブーケがやや苦手な私でも、惹かれる要素がありました。
香り自体は、悩みも下心もないピュアな童心をもって私に近づいてくる…。そのまま寝落ちました。

CYPRESS MASK
サイプレスマスク

気品に秘める狂気
NOTE:JAPONISM TRADITION WOODY

ディスカバリーセット6種類のなかで一番気に入った香りです。
“狂気”と言わしめる要素は感じませんでした、むしろ柔らかな甘味がやさしく、心地よく感じます。サイプレスメインの調香の潔さ、ゲシュタルト崩壊的狂気があるかもしれないです。

①半乾燥の生木、製材の途中で、剥き出された白い木肌がまだすこし柔らかい。もっと庶民派な、杉材のようなウッディノートを感じます。
青緑のグラデーション。はじめは樹冠の緑、幹の樹皮感、そこから木の姿をとらえ、木立ちが林、森、山、マクロになるにつれ一本一本の輪郭がなくなり、遠くのっぺりと青い山並みのシルエットになるような。この、偏質的なところが“狂気”と言えなくもない。ドライダウンすると樹皮や樹脂のバルサミックでドライな甘さ。4時間くらいで完全に消えます。

②プッシュしたてのサイプレスはキリっとかっこよく、しかし角は立たない。物腰柔らか&クールな印象。清涼感を保ちつつ、きび糖のような素朴な甘味が加わって、この調子を3時間ほど楽しめます。
単調とはいわないけれど、プッシュ時のインパクトが薄れるにつれ、その後の変化の小ささがやや物足りなくもある…のですが、不透明度が0へスライドされていくクリアーな展開は美しくて、ここに不要なニュアンスは加えたくない気持ち。
手首につけると剥いた木肌のようなウッディが強く出て、服の内側ではスイートな森林ミスト調。プッシュ量を増やしてもクドくならず、追加でプッシュすればそのまま一層色深まるというかんじで、これなら香り飛びのはやさも問題なしです。

③寝香水で、脇腹と膝の内側に。トップノートを感じたあと、ヒノキの入浴剤がしみた髪やタオルのようなフワッと香り続けるウッディのなかで、やすらかに寝落ち。

④サイプレスマスクを気に入ったので、パートナーにもつけてもらいました。自分でつけた場合と印象はほとんど同じです。
4時間後くらいに嗅がせてもらうと、サイプレスらしは消えていましたが、甘いウッディ系の残香はありました。


WHITE STORAGE
ホワイトストレージ

凛に秘める純真
NOTE:JAPONISM WHITE CITRUS

肌質、肌の調子で、香りが際立つ順序や強さががらりと変わるようです。
スモークフラワーと並び立つようなキャラクター性に、初代プリキュアのふたりを見てしまいます𖦸𖦸

①酸味や辛味をふくんだ若い白茎のグリーンノート、ナチュラルな清潔感のある香り立ちに、小さな花を集めたようなシトラスの重なり。やさしく膨らむような香り方がとてもいい…警戒心を解くような、こわばりをほぐすような、すごく丁寧で親身な触れ方をしてきます。心を許したい、ここままとろけてしまいたい、と、おちる寸前でシトラスがキリッと立ちます。トップノートの少女感は15分もせず立ち去り、そこからは凛々しくドライなシトラスウッディになってきます。

②パートナーの肌で試させてもらいました。
プッシュしたてはかわいいフローラルですが、少女の面影を見る前に、シトラスグリーンが出てきました。みかんの皮を乾したような、柔らかいゼストビターが効いていて、みかん畑と田園と白いワンピースを想う少年の視点にも思えてきます。ただし夏っぽさはそれほどない。情緒や温度感もあまりない。写真を撮ってそれを見ているような、冷静さを欠かない印象。

IRON WIND
アイアンウインド

強さに秘める情愛
NOTE:JAPONISM AROMATIC WOODY

私の肌ではごわっとしたアニマリックが出て、はじめてつけた日(ふくらはぎに2プッシュ)は胸を突くような獣臭に参ってしまいました…カストリウムかな。①は、それを洗い流してからの記録。②はプッシュ量をおさえて横腹のほうにつけた記録。③はパートナー(腰)です。

①トップノートからアニマリックノートが小一時間ほど独走し、それを粉末薬草っぽい甘苦さ(ヨモギ?)があと押ししていて、スピードもパワーもある香り立ち。“鉄風”のイメージを借りるなら、鉄刃で切り裂くような鋭利さではなく、鉄柱でど突いた衝撃で錆が散るような、粟立つ拡散性と余韻がある。
一旦洗い流しました。
薄暗い老舗和菓子屋の奥戸、空間に漂い染みついた砂糖、ざらついて湿気を吸おうとする甘い気配が。本来はこの2つの層が絡みあって、強さや愛情が形成される香りだったのかも。

②冒頭からワイルドな香りで、アロマティック要素はあまり感じられませんでしたが、湿り気で暗褐色になったウッディノートが段々乾いて明るい色に戻るようなイメージはありました。細かく嗅ぎわけるのが難しく、あまり経験のない木の香りです。”アイアン“と冠するような、鉄っぽさ、金属的なミネラルノートは感じません。
べったり感はないのですが、執拗に嗅ぐと溶けそうな、ザラメのような甘さが背後に漂っています。

③私の肌質となにがどう違うのかわかりませんが、パートナーの肌ではそれほどキツいアニマリックノートは立ち上がらず。けれどきちん際立って主張しています。
パートナーの体臭がちょっと強い、みたいな香りがしました。本当に体臭がちょっと強い日だったのかも。


SPRING SNOW
スプリングスノー

優美に秘める冷静
NOTE:JAPONISM INCENCE WOODY

①女性の肌の上のフローラルノートを、パウダリーノートをぴったり閉じ込めたような、蓋をしても香ってくる。冷やして乾かして濃く引き締まった甘さが、肌近くにもったり留まる。ぱっと華やぐ広がり方ではなく、香りが巻き上がるのはプッシュ時のみ。服のなか、腹まわりにつけましたが、3時間ほどで他のものより消える(肌になじみきってしまう)のが早い印象。

②なめらかで自然体なウッディとスイートフローラル。花がおさえられつつも甘く、ウッディも鼻通りはよくない。サイプレスマスク終盤のやわらかさに似ているけれど、ややドライで引き締まっている印象で、茶室的寛ぎ感がある。すごくリラックスしているけれど、だらけてはいない。
つける度にこんなに印象が変わるなんて、ふしぎです。


WATER REFLECTION
ウォーターリフレクション

華麗に秘める孤独
NOTE:JAPONISM FLORAL CITRUS

①清涼感と甘ったるさが並走して、その疲れが気持ちいい、みたいな癒しがある。
際立ってユニークではないけれど…ややミンティな、歯磨き粉や制汗剤を思わせる、派手さはないけれどちゃんとはじけるクリーンなシトラス香り。自分を表現するとか、鼓舞するとか、そういう使い方の香水というよりも、ルームフレグランス的佇まい。
1時間半でクールさは消え、インセンス調にシトラスの皮っぽいゼストビターが加わって、大人しく無口そうな香りに。

②プッシュ時は軽くてクリアなミンティの清涼感で、そのままクールミント系かと思いきや、粉洗剤のようなやわらかな発泡感のあるアロマティックになります。ややビターなフローラル、華やかでもなく、渋くもなく。体感イメージは、しっかり汗を流した運動後のシャワー、制汗剤&肌触りのよいふっくらタオル。ふうっと息をはいて、熱を放出して、脱力するリラックス感。


𝔸𝕗𝕥𝕖𝕣𝕨𝕠𝕣𝕕

プッシュ時からトップノートへのボリュームが大きいこともあり、尻すぼみな物足りなさを感じてしまいます。が、どの香りも高密度できめ細かな印象で、肌残りする香りにも嫌味がなく、品質の良さを感じます。

持続性や拡散性は、甲乙をつけるポイントではありません。つける人によって香り方が違うのも、嗅ぐ人によって感じる香りが違うのも、当たり前です。好きか嫌いか、とか、おもしろいかどうか、の話をします。
今回のTOBALIディスカバリーセットではそういう楽しみ方ができました。

それを踏まえての感想ですが、
香りの引き際が私の求めるタイミングではなく、結果、鼻が疲れてしまいました。うまく香らせるのが難しくて、私には扱いづらかったです…

𝔻𝕚𝕘𝕣𝕖𝕤𝕤𝕚𝕠𝕟

余談です𖦸𖦸✧

TOBALIの香水に、市川春子さんの漫画「宝石の国」を連想します。
隙がない緻密な一面と、まばゆく激しく脆い一面をあわせもつ、宝石の国の登場人物たち。シンプルでジェンダレスな装いに対してわかりやすい個性は、TOBALIのアートワークや、香りの印象に結びつきました。各所に日本的文脈があるところにも「宝石の国」と「TOBALI」の共通点をみてしまいます。
機会があれば、宝石の国の登場人物にイメージ香水を挙げてみたいです。

いただいたサポートはすべて香水にそそぎます𖦸𖦸‼︎