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《Maya Njie|マイヤ・エンジャイ》ムエット×5

NOSE SHOP ムエットキャンペーンでMaya Njieの香水全5種類のムエットを注文していました𖦸𖦸𖠇 本日届いたので、さっそく感想を記録しておきます。

Maya Njie/マイヤ・エンジャイ

過去の時代と場所が融け合う家族の香り
西アフリカをルーツに持ち、北欧の中でも最も古い都市といわれるスウェーデンのヴェステロースに生まれたマイヤは、十代後半にロンドンへ移住。その後、世界を代表する芸術大学であるロンドン芸術大学に入学し、デザインと写真を学ぶ。大学在学中にマイヤはそれら視覚的芸術に、嗅覚的なアプローチを加えた新たなアートを実験し始めた。自分が生まれる十数年前、1970年代の古い家族の写真アルバムに触発されて、彼女の家族たちのひとつの時代をその写真と香りで活き活きと再現するという実験的なプロジェクト。たとえば、森に囲まれた小さなスウェーデンのサマーハウスの写真、日曜日の午後に訪れる祖父母のアパートの写真、それから、ラースおじさんとアイリーンおばさんの結婚式の写真。マイヤが取り出してみせたのは、すこし前のスウェーデンにはどこにでもあった日常的な風景。彼女は、その風景に、1970年の北欧の牧歌的な精神性と、西アフリカ由来の伝統的で自然的な精神とを香りで融合させることを目指した。 


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1)NORDIC CEDAR/ノーディック・シダー

とても好きな香りです。
朝露の重みで泥が洗い流された、草の根、背丈のある草、光や音をひたすら分け行く情景が浮かびます。グリーンノートは、ムエット上ではフレッシュさよりノルスタジックに感じます。軽く舞うようなカルダモンやシダーウッドがさりげなく上下アクセントをつけ、鬱蒼と繁りそうなパチョリに陽の当たるスポットをつくり、光があることを印象付けます。土が温もり切っていない、まだすこし涼しさも感じられる香りです。
“じめじめした朝から晴れやかな昼間へ”という解説がついています。ムエット上では香りの展開はありませんが、そのイメージはよく伝わります。

2)VANILJ/ヴァニル

ノーディック・シダーとほぼ同じ印象で、じっくり嗅ぎ比べても差は分かりません。ふたつは対となる香りとして作られたそうです。
バニラは乾燥した房のままなのか、ムエットからは特徴的な甘さは嗅ぎとれません。トップノートに晴れやかさがくるのでしょうか。解説文を読むと、いわれてみればなんとなく“家庭的”でしょうか。ノーディック・シダーにあるような草葉の音や風には掻き回されていない、空気にまざったカルダモンがある…ような。
スウェーデンの伝統的な結婚式はバニラやカルダモンの香りで彩られるんですね。

3)LES FLEURS/レフルール

(ムエットの裏表ですこし香りが違う…?)
表側は、子供用みかんグミのように酸味が弱くジューシーなベルガモットを、すこしパウダリックミルキーな外層が包んでいて、かわいくて愛おしい印象。裏側は柑橘ではない、フルーティ&グリーンフローラル。庭先で摘んだ小さな花が手のひらの熱でくたっとするような、これもまた愛おしい、大切に扱いたい感じがします。5才くらいの少女感のおままごとシーンが浮かびました。
“祖父母のサマーハウスで佇む姉と祖父”のイメージフォトには、ちいさな少女と花のある庭が写っています。答えあわせのようでおもしろいです。

4)TROPICA /トロピカ

マリブコーク、生ココナッツとフレッシュなパイン果汁を増量、ミルキー強めなサンダルウッドで満たされて、陽気に酔うふわふわ感。ごきげんです。しかし、くどくない。とろ〜んとした香りをイメージしましたが、ほんのすこし切り口が違う調香でこうも風通しが良くなるんですね!
フルーツガムのシュガーを噛み砕くくらいの、ほんのちょっとパウダリックで硬質な甘さのアクセントは、アイリスやフィグでしょうか。はしゃがない、シロップをこぼさない、度を過ぎないバランス感覚。幼さを残したアルコールカクテル。

5)TOBAK /トバック

なんて素敵な香り立ちをするタバコリーフ!
ムエットなので、これはミドルノート以降の香りになるのでしょうか。トップノートからどう展開してきてここに落ち着くのか、とても気になります𖦸𖦸
火の元はない柔和なスモーキー、しっかり乾いたベヂバーを微量のシナモンが起こしてトンカが支え、香りの動きの無さがとても心地よいです。まだ今日の活動が始まっていない家の中、家族みなの安らぎを把握している、心配事がない時間。すごくすてきなシーンです。
煙たさはほとんどありません。使い込まれて手になじみきったウッディ、くたびれて野生の消え去ったレザー、まだまだ使われているけれど全て色褪せているドライ&オイリーな生活感。
これもまた、とても愛おしく感じる類の香りです。
なるほど“日曜はいつも祖父のマーティンのアパートで過ごす”とあります。日曜日の祖父宅に孫が遊びに来たら、家も起きますね。


以上、マイア・エンジャイの全5種類の香水ムエットを嗅いだ、走り書きの感想です。写すシーン、香りの系統が違っても、どれもなんだか愛おしいものに感じ、ちいさなものを大切にしたくなる香りでした。

いただいたサポートはすべて香水にそそぎます𖦸𖦸‼︎