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《SANTI BURGAS|サンティ・ブルガス》White Collection

ホワイトコレクション全6種類のディスカバリーセットを試しました𖦸𖦸👉🐜
木製のケースはサスティナブル素材でつくられ、特殊な切れ込み加工で曲げられた蓋と底面がかっこいいです。

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サンティ・ブルガスの”アリのコロニー”で一滴一滴うまれる香水、シンボルマークは羽蟻です。

フルボトルのデザインは画家の真っ白なキャンバス、サンティ・ブルガスが嗅覚でとらえた経験を香水で表現したコレクションだそうです。アバンギャルドなひとひねりを加えて強めに攻めてきますが、奇をてらうのが目的ではなく、香水としてしっかり着地する仕上げに職人品性を感じます。
ホワイトコレクションとしての統一感はないですが、どの香りも筋を通すかっこよさがあり、バラエティー豊かなキャラクターを感じました。

■ ÔIKB

NOTES:
Grasse lavender, iris, black pepper, nutmeg, Virginian cedarwood, leather, Brazilian tonka bean & pierre d'Afrique.

アイリスが地と天を指し、ラベンダーの草茎と肩を揃えて、透けそうな青さをいっそう高く伸ばします。背景はほがらかなナツメグやレザー、バージニアンシダーの気高さと何度も目が合い、やがてひっそり行き渡ったアニマリックに落ち着き、全体像はしっかりとしたスパイシーウッディに属します。

指揮官アイリスと近衛兵、を想像しました。
ラベンダーは侍り、スパイスは腕を撫して座し、若きシダーウッドが場を読みつつ主張し、ハイラシウムは気を緩めず、労うことを忘れず…そして全員がアイリスに視線を向けています。このイメージは、青く深い森の景色にも、高く澄んだ空模様にも投影できます。己が役目を果たすことで、地を抑え、天を支え、凛と澄んだ濃い青さが存分に薫る。力を得たアイリスの咆哮の香り、これは誤字ではないかもしれません。

ホワイトコレクションの中で一番気に入った香りです!
青い森を連想させる香水はたくさんありますが、このようなアイリスの香り方はあまり知りません。

●余談
pierre d'Afrique は直訳するとアフリカの石。
これはアフリカ中南部に生息する小型哺乳動物ハイラックスから得られ、ヨーロッパや南アフリカでは昔から薬用、香料として扱われてきました。Hyraceum(ハイラシウム)とも言い、ディアムスク、カストリウム、シベット、沈香、タバコなどが複雑に混ざったアニマリックな香りだそうです。
ハイラックスは背中に臭腺を持ちますが、麝香が香嚢を採るのとは違い、石のようになった排泄物を採取します。尿素や電解質を濃縮した尿を同じ場所に出すので、不溶性の炭酸カルシウムが大量に含まれた排泄物が結晶化(あるいは化石)するそうです。


■ MISS BETTY VAIR 

NOTES:
Spanish lemon, eucalyptus, jasmine, nutmeg, Indonesian patchouli, Javanese vetiver, oakmoss & white musk.

正直者のクリアーなレモンや若々しい花の粗い編み目から、由緒ある美観街をおもわせる味深いパチョリやベチバー、オークモスのベースノートが覗けて、思いの外愛らしい香りです。しかし、フローラルと思いきや、すこしの酸味やヘイライクな乾きもあって、浮かれた香りとも緊張した香りともとれます。そういう情緒的な印象に振り回されないのは、きちんと街並みの設定がなされた調香の支えがあるからだと感じます。

例えるなら、日本のアニメ映画風のロードムービー。ちょっと気恥ずかしいくらいのフローラルの変化やアクセントに手を引かれるまま、あっという間に知らない街にいる。特有の表現で現実味と架空性をあわせ持ち、あえて具体的なフックを除くことで時代や景色をイメージさせず、心理描写を細やかに追わせてくれるような。
香り残りも案外スマートでした。主人公は少女か少年か、はっきりわからないのもすてきです。


■ EGNARO

NOTES:
Valencian orange, anise, ginger, Calabrian bergamot, civet absolute, Australian sandalwood & amber.

しっかり顔を向けてくる濃い色のオレンジ、よく噛んだ歯磨きガムと口臭のようなアニスに、微かなシベット…面白いですが、癖が強い…!百味ビーンズにありそうです、食べられなくはない。

オレンジ油の洗剤でよ〜く洗ったシベット、どうしても拭えない獣臭が、アニスの後押しでより際立ちます。
すみません、私は最後まで付き合いきれませんでした。体臭と相性がいいとか、何かしら、このハーモニーが美しく発揮されるためのトリガースイッチがあるかもしれないです。


■ FLAMING RED

NOTES:
Bulgarian rose, Tuscan orris, passion fruit, oud from Laos, amber & bourbon vanilla.

ブルガリアンローズの芳香がたっぷり包まれた泡が、しゅわりと崩れていくようなトップノートが美しいです。酸味が効いたフルーティ、パッションフルーツの香りが立ち上がるとき、ふたたびローズを巻き上げます。
なるほど、タイトルはフレイミング・レッドなんですね、炎のかたちがイメーできます。見事だなあ!
しっかりしたローズですが重くはならず、ラムネ菓子にも似たやさしいサワー感のあるパウダリーがどんどん新しい空気を送り込んでくるような印象です。ベースノートに控えめながら手堅い甘みのアンバー、バーボンバニラがとてもリラックスした様子を思わせます。

とにかく顔がよく、気負わない人柄が思い浮かびます。どうぞいくらでも見て構わない、気にしないよ、と言わんばかりの。
薔薇の香り、こうも清々しい右肩上がりの絶好調感を出せるんだなあとわくわくしました。


■ EAU DADÀ

NOTES:
Orange blossom, Spanish saffron, labdanum, tonka bean, Indonesian patchouli, bourbon vanilla, incense & Trai Pratchin oud.

甘い洋酒とサフランの丸薬、シャープで黒いバルサム、暗くて古い香りがします。
香りの布陣をみると重苦しくなりそうですが、そこまで閉塞感がないのは、インセンスが天窓を開けるからかもしれません。外から夜風とパチョリを運び入れ、バーボンバニラの表面を揺らして、この屋敷に誰か住んでいると匂わせます。あまり体温を感じないので、生き生きした人じゃないかもしれません。

ホワイトコレクションの中では一番想像しやすい香水だったと思います。


■ OUD DE BURGAS

NOTES:
Madagascar clove, gurjum balsam, cypriol, cedarwood, orris, guaiac, Suyufi oud & Australian sandalwood.

ちょっとまってくださいね…
肌にのせる勇気が出ませんでした。

鼻を抜けるクローブらしいスパイシーノートが先頭にきて、その真後ろに、赤黒い怪物軍団を引き連れている…アニマリックにも感じる、濃く煮えたぎった個性派ウッディノート。

誰がいつつけるんだろう、どう香らせるんだろう、と考えましたが、これはサンティ・ブルガスのホワイトコレクションの象徴的な香水なのだと思います。


𖦸𖦸
ÔIKBがすごくよかった!



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