見出し画像

《CIVET by Zoologist》ジャコウネコ

Zoologist Perfumes "CIVET"はシベット(ジャコウネコ)のポートレート、贅沢な甘酸っぱさと渋さが渦をつくる、コク深いオリエンタルスパイシー香水です𖦸𖦸

シベット、ジャコウネコと呼ばれる獣たちのことをいろいろ語りたくなってしまうのですが、ぐっと耐えて最後の方にちょっとだけ余談をつけます。


調香はShelley Waddington氏、彼女は普段 En Voyage Perfumes で香水を作っています。ZoologistではHAMINGBIRDに続く2作品目のコラボになります。

2016年に発表されたCIVETは、The Art and Olfaction Awards 2017のINDEPENDENT CATEGORY ファイナリストに選ばれました。

CIVET

TOP 𖡻 豪勢なオリエンタルスパイシー。たっぷりのスパイスアコードの中から、鼻通りのいいブラックペッパー、コーラグミ、齧ったオレンジとレモンスプレー、深い甘酸っぱさが押したり引いたり、だが主役は躍り出ない。せめぎ合うのではなく、賑やかにぐるぐる渦巻いてマーブルを描いていく。

HEART 𖡻 おそらくシベットはそこかしこに居るらしい…が、はっきりとした獣臭さは残さない。スパイスアコードはゆったり寛ごうとするが、シベットが花を揺らし土を蹴ってまわるので、しぶきが上がるたび多彩なインドリックフローラルが濡れ香る。
シベット香料は他の香りを保持して強める効果があるそうで、それは言い換えると、豪華でヴィンテージな印象はシベットによって発揮されているのでしょう。
たくさん騒いだあとは、花の余韻を引き継ぎつつ、全体像は淑やかなアンバーやダークウッディに均一化されていく。

BASE 𖡻 積み重なったレザーに、ほんのすこし脂質っぽい花の甘さと酸味が掛かったような、コーヒーアコードが渦に加わる。トップから続いた華々しさが終わり、ほっとひと息、チャーミングだがドライな吐息がシベットやロシアンレザーのアニマリックをくすぐり出す。ダークウッディに甘くないバニラリーが後押しに入って、深く腰を落ち着けていく。寛ぎタイムはしっかり持続する。

TOP: Bergamot, Black Pepper, Lemon, Orange, Spices, Tarragon
HEATS: Carnation, Frangipani, Heliotrope, Hyacinth, Linden-blossom, Tuberose, Ylang
BASE: Balsams, Civet, Coffee, Incense, Labdanum, Musks, Oakmoss, Resins, Russian Leather, Vanilla, Vetiver, Woods


☕️

CIVETに使われたコーヒーアコードは、酸味が強く立つ他のアコードにあわせるために選ばれた、最も濃く酸味が少ないコーヒーにムスクアンブレット、オポポナックス、シナモンなどの酸味を加えて調整したそうです。
コーヒーアコードだけを嗅ぎ分けることは難しいですが、深煎りコーヒーに黒糖、という感じでしょうか…


ここからジャコウネコ余談です𖦸𖦸

ラベルに描かれているシベットは、首筋にくっきりした3本線がある特徴からジャワジャコウネコに見えます。Malay CivetやOriental civetと呼ばれ、陸性の雑食で人の生活圏にもよく現れるので、インドネシアやマレーシアでは最も身近に見かけるシベットです。実はジャワジャコウネコはコピ・ルアックやシベット香料の生産に関わる種ではありません。

インドネシア産のコピ・ルアックはマレージャコウネコの糞から拾い集めた未消化のコーヒー豆で作られます。和名と英名で混乱しますが、マレージャコウネコはアジアンパームシベット、現地ではluwakと呼ばれています。樹上棲で果実を主食とする雑食で、コーヒーノキの実を食べることもあります。野生種の糞を探す手間を考えるとコピ・ルアックが高級品とされるのも納得です。
安定してコピ・ルアックを出荷するため、コーヒー農園ではパームシベットを飼育してコーヒーの実を与えています。

天然香料とされるシベットは、アフリカジャコウネコの会陰腺から分泌物を採取して製造されます。肛門にヘラを入れて掻き出すので殺生はしませんが、生産工場で食事内容から管理されています。

シベットの動物性香料も高級コーヒー豆も、問題視されるのはこのような、安定供給のための家畜管理が理由でしょう。シベット香料(霊猫香)とコピ・ルアックの香りは全く異なりますが、ジャコウネコ由来の香りを楽しむという点では同じです。

Zoologistの香水では、本来は動物性香料であるシベット、ムスク、カストリウム、アンバーグリス、ハイラシウム、レザーなどを合成香料を使ったアコードで表現しています。

合成香料は、シベット香料に関して言えば、天然香料を分析して人工的に再現した代替品、先方互換にあたります。あるいは、再現ではなく新しい合成香料を開発し、アコードをつくったりします。本物に近付くことも目標になりますが、より最適な形の探究と提案もまた合成香料の真髄です。





いただいたサポートはすべて香水にそそぎます𖦸𖦸‼︎