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《çanoma|サノマ》 1-24,2-23,3-17,4-10

çanomaは、日本人が日常使いできる香水を考えて渡辺裕太氏が立ち上げたニッチフレグランスブランドで、プロジェクトは4種類のインスピレーションから着手されました。2020年11月頃に「1-24」「2-23」「3-17」「4-10」という4つの香水が発売されます。

試香の機会を得ましたのでnoteにまとめました𖦸𖦸𖡛

ただ、できれば、
私の記録が先入観にならないで欲しい…
もしこれからサノマの香水を試しに行こうと考えてこの記事にたどり着いた方は、まだ読まずにおいてください。

𖡛

çanoma|サノマ

冒頭に、çanomaのブランドアピールに「日本人が…」と引用しましたが、語弊を生んでしまうかもと気掛かりでした。日本人はこういうのが好きだろう?とか、日本人なら分かるよね、みたいな路線の香水ではないことを、先ずはっきり書いておきたいです。

感性は溝でも壁でもなく、また、好みは押し付けられるものではない。
çanomaは心底「いい香水を作ろう」としていて、香りのすばらしさを確信する責任者が渡辺裕太氏という日本人です、と伝われば十分な気もします。つまり、日本人の感性を代表する香水ではないし、日本人の感性でしか感動できないものでもない(し、そんなものはない)。
でも確かに、感性が強く物語っている香水だとも思います。共感性が高いほど調香に酔うことができ、いい香水だと感じるだろうから、です。

私は、できることならば、香りだけを感じ取ってその香りが好きか嫌いかを判断して欲しい、と願っている。

渡辺裕太さんは、念を押すように何度も上記のようなことを仰います。

香りに前置きをしたくない(でも全く何の意図もないわけじゃない)というスタンスを、香水へテクニカルに割り振られた番号のタイトルや香の図の暗号的シンボルで、伏線をはるように用意周到なプロダクトにして送り出しています。しっかり作られたものはかっこいい。

いいものに揺さぶられる直感と感動は、私の代弁ごときでは満たせませんので、興味を持たれたらぜひçanomaの香水を探してお試しください。回し者ではないです。

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香りの軽いものから順番に嗅ぐといい、とあったので、おすすめの順で記録しました。

両腕につけて比べてみたり、ちょっと日を置いてゆっくり嗅いでみたり、気候や気分にあわせてたのしんだので時系列はばらばらです。

3-17

紙石鹸のようにやさしい溶け方をするトップノート。ほの苦さが効いていて、まろやかで刺のないハーバル、きれいに剥いた果肉のクリーミーな舌触りをひとりでゆっくり味わうイメージ。肌の上ではさらにきめ細かく光るようで、白い燐光をはなつ印象。
ほんのり甘く感じるのは肌になじむウッディか、セージや青リンゴの要素でしょうか。無垢調で清潔で、肩肘張らない現代社会人っぽい香りだと思いました。

青:ウッディ・フローラル
松、シダーウッド、ベチバー、ラベンダー、セージ、青リンゴ

3-17には「早蕨」の香の図があてられています。

季節の変わり目、ナイーブで、ほんの些細な冷たさや優しさを感じとってしまう。心細さを自覚して、心強くあろうとする。そんな印象を持ちました。

4-10

露に移ったジャスミンの香りが、ぱたっと雫を落とし、しっとり暮れていくトワイライトタイムのような色移ろいで、地面に吸い込まれていきます。儚いジャスミンのオープニングがとても美しく、物憂げにも感じます。アクアティックノートは湿潤な風で、塩辛さではなく、ほんのすこし甘さを引き立たせて花の香りに変化をつけ、甘いサンダルウッドの地肌をみせます。甘ったるく沈まず、秒刻みで変化していく小さな花の香りにリアリティと切なさを感じます。

赤:フローラル・マリン
ジャスミン、鈴蘭、ティアレ、アクアティックノート、オークモス、ベチバー、サンダルウッド

4-10には「乙女」の香の図があてられています。

乙女とは容姿や存在価値では定められず、ただの心境の比喩、あるいは、乙女に帰る心は本来誰しも持ち合わせているもの、と言い切らせてくれる証拠のような香りだと思いました。女性向け製品だがユニセックス、とか、男性がつけても良い香り、という言い回しではなく、誰が花を買ってもいい世界のフローラル。

1-24

細い目が冴え、蒼く滲み、神代の緑色の堅いスパイシーがちりちり降りてきて、静かに着座します。たとえば薫袋屋の戸をくぐる瞬間をフラッシュバックするような、明快なシダーウッドが軸になっているのは分かりますが、それより何かもっと、巧妙に一体化されたウッディ。古きよき品の上質な”しつらえ”を連想します。年季を感じるのに堅牢で若々しいのです。研ぎ続ける限り老い死ぬことははない、と思わせる凄みがあります。

黄:スパイシー・オリエンタル
シダーウッド、サンダルウッド、オークモス、ラブダナム、ミルラ、サフラン、カルダモン、ベルガモット

1-24には「鈴虫」の香の図があてられています。

時と場所、に深い印を刻んだ香水だと思いました。
後々こじつければ、それこそ源氏物語の鈴虫とか、映画ラストエンペラーとか、ゴールデンカムイの土方歳三、などなど連想できるかもしれません。が、それは表面的…うまく伝えられないのですが、鈴虫を合図にして瞬間移動する、いつどこへでも鈴虫で呼ぶ、印のついた時と場所に飛ばされる感じがします。
今回私はこの香りが特に気に入りました!

2-23

ダルトーンで統一され、深く沈めば押し戻してくるような強さと柔らかさがあります。頭抜けて出るスパイシーではなく、ここに居る、とパピルスに影が浮かび上がるような四川山椒やシナモン、そこにじっくりとローズが顔をもたげてくるイメージです。どこか冷めてていて、いつでも振り解けてしまえそうな哀しい束縛感、諦めや悟りにも似た魔性を感じます。

緑:ウッディ・スパイシー
パピルス、パチョリ、レザー、四川山椒、シナモン、クミン、ローズ

2-23には「胡蝶」の香の図があてられています。

ほかの香水でも嗅ぎ覚えのある妖艶な展開をしそうなんですが、スパイスやローズがつくるアクセントの押し引きが細やかで、時にじれったく、時に誘いかけ…あけっぴろな魔性ではないのです、それがすてきです。
順番では一番重い香りになりますが、身は軽めで、どっしりした暗さではありません。肌残りは長く感じます。

結び

日本人がなんぞ、と構えたり、日本人だからこそ、と求められてしまうような、門戸を狭める香水になっては勿体ない(し、そもそもサノマはそんな香水をつくろうとはしていない)、すばらしい香りだと思いました。結局のところ、どんな香水も誰かの感性でつくられ、誰かの感性に訴えかけます。çanomaもそのひとつ、それ以上でも以下でもない、いい香水であることこそ真価だと再認識しました。

本物の解説は、渡辺さんご本人のnoteにたくさん書かれています。それぞれの香水の記事には、インスピレーションになった情景やお話が載っています。

私は、これからじっくり読みにいきます𖦸𖦸
香りから描いたイメージが、どれくらいシンクロしているのかを読むのがたのしみです。

いただいたサポートはすべて香水にそそぎます𖦸𖦸‼︎