2024年1月 観た映画感想文

タイトルの通り、今月観た映画の感想文です。
対象は映画館で観た新作のみ。
ストリーミングで観た分や再上映で観た過去作品は末尾にタイトルだけ備忘録として書いておく感じでいきます。



BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-

アクションシーンのカメラワークが派手で細かいことは置いておくだけの勢いがある作品だった。

ワイヤーを使った戦闘描写とかすげぇカッコイイ、カッコイイのにあんまり前面に押し出してこないから一抹の物足りなさを感じる。全体的に質の良い読み切り漫画みたいだなって印象。作画も物語もハイレベルでまとまってる、ただ連載って感じではないかな?ってところも含めていかにもって感じ。オリジナルのアニメ映画ってどれも大なり小なり必然的にそうなる物ではあるんだけど、この映画はそれがより顕著な気がした。多分世界観やキャラクター周りの設定の説明がほとんど無いから……というより、意図的に取捨選択して必要なところだけを抽出して説明を最低限に抑えているから?なんだと思う。

例えば主人公の左手が自由自在に形を変えるんだけど、なぜ変形するのか?とか、どういう材質なのか?とか、誰が開発したものなのか?とか、そういったテクノロジー方面の細かい設定は作中じゃバッサリとカットされてる。ただ主人公は人体実験によって後からその左手を移植されており、こと戦闘においては「厄介」だということだけが説明される。こういった思い切った取捨選択がいたるところに存在しているのに、作品全体が歯抜けな印象にはならないってバランス感覚はすごいな〜と思った。

後から知ったけど前日譚的な同じ世界観のテレビアニメシリーズがあるらしい。マジで下調べをしなさいって感じ。そっちを見ればもう少し詳しいことがわかるんだろうけど、とはいえ続編ってほど繋がりがあるわけでもないっぽいし、この映画単品でも十分楽しめるようになってるとは思う。

唯一気になったのは主人公とヒロインのキャラクター性が何かブレてない?って感じる箇所がちらほらあったところ。寡黙なのかと思ったら普通に声荒げるし、芯が通ってるのかと思ったらすぐ折れるし、こっちの「こういうキャラなんだろうな」って感覚に対してちょっとズレた要素が出てくるから肩透かし食らったような気分になる。

効果音が容赦なく爆音だったところは最高だった。


PERFECT DAYS

個人的にはめちゃくちゃ好きな感じの映画だった。こういう作品に出会えたということを本当に嬉しく思うし、映画を観る甲斐があるもんだって気持ちにもなる。

内容としては寡黙な公衆トイレの清掃員がただ淡々と仕事に勤しむ姿を描いているだけの映画なんだけど、それがどうしてか愛おしい。何気ない日々、同じことを繰り返すだけのように見えてしまう毎日にも、ちゃんとその時々に目を向ければ何ものにも変えがたい瞬間があるということをこの映画は教えてくれる。

思いがけない(とても小さな)変化が訪れたり、突発的な(ありふれた)トラブルに苛まれたり、戸惑ったりしながら、それでも否応なく時間は進み、生活はただ続く。しかしその奔流の中には確かに「何か」が存在していて、その「何か」を掬い取れるかどうかは結局のところ自分の視点をどこに置くか次第なんだよね。

なぜこの映画がこの内容で「PERFECT DAYS」と題されているのか?タイトルに込められた意味とは何なのか?考えれば考えるほど大変味わい深く、それから温かい気持ちになるし、この映画で描かれているのは自分なのかもしれないな……という気すらしてくる。

主演の役所広司は本当に良い仕事をしたと思う。ほぼ台詞も説明もない作品なのに、表情と身振りだけで必要な情報をすべて伝えてくれるのだから恐れ入る。作中、主人公はとある人物から「よくこんな仕事続けてられますね」と尋ねられる(嫌みっぽく聞いているわけではなく本当に素朴な疑問って感じ)。主人公はそれに対して何も答えない。けど、観ている我々はなぜ彼が公衆トイレの清掃員を続けているのかについて、それまでの描写から明確に答えを感じ取れているんだよね。むしろ「わざわざそんな無粋なこと質問しちゃうの?」って思ってしまうくらい。カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したのも納得の名演だと感じる。

後から知ったけど、日本とドイツの合作映画なんですってね。
しみじみと良い作品です、オススメ。


ヴェスパー

背景美術のデザインセンスに終始痺れっぱなしなポストアポカリプス。

突然変異ウイルスによって植物を中心に生命のあり方が根本から変わってしまった終末世界。人工筋肉や人工細胞を活用した有機デバイスと反重力装置を含む無機デバイスがコンパクトに組み合わさったドローン。謎の菌糸類から生成した主人公お手製の生体バンドエイド。湿地に佇んでいる今となっては何のためにあるのかわからない巨大な機械装置。隙あらば人間を取り込んで栄養分にしようと画策してくる奇怪な姿の食人植物たち。屑鉄をかき集めてはどこかに運んでいく目的不明の集団 キモい人造生命体。美しい花々。

どれもこれもが良い意味で「不気味」だし「気持ち悪い」ビジュアルをしていて、ポストアポカリプスなんて散々手垢のついたSFにもまだまだやれることがいくらでもあるな〜と感じた。

何となく風の谷のナウシカとかのジブリ作品に影響を受けてる?ような気がする。勘違いかもしれないし、勘が当たってたとしたらあんまり詳しく言及するのは野暮かなとも思うけど、主人公のキャラ付けとか結構ナウシカに近しいものを感じた。

撮影地はリトアニアらしいんだけど「リトアニアってこんな終末SFみたいな景色が実際に広がってるの!?」と俄然興味がわいた。映像効果はもちろんあるだろうけど、湿地帯と森林を足して2で割ったようなあの景色はなかなか見られるものじゃない。ロケハンであの場所を見つけた時の狂喜乱舞は想像に難くないな~。


ストリーミング or 過去作品

◆ミッシェル・ガン・エレファント“THEE MOVIE” LAST HEAVEN 031011
◆千年女優
◆プロメア
◆パシフィック・リム


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