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クーリングダウンの成功の鍵は

前3回に渡り、ウォーミングアップについてお話しさせて頂きました。今回はクーリングダウンについてお話しします。

一般的にアップはしっかり行なっているが、ダウンもしっかり行うことを実践しているチームは少ないようです。アップに関しては主運動の前でないと意味を成しません。一方で、ダウンは主運動の直後も大切ですが、帰宅してから1日の締めとしてのダウンも重要となります。

まず運動直後ですが、練習やトレーニング中、筋肉は激しく伸び縮みし、筋自体がポンプの役目をし、全身の筋肉に血液を届け、そして心臓に戻します。激しい運動を急にやめてしまい何もしないでいると、今まで筋肉の収縮が主役として血液を循環させていたのに、それが出来なくなり抹消に血液が残ってしまい、めまいや立ちくらみ、最悪失神してしまう可能性があります。

ですので徐々に運動の強度を下げていく必要があります。主運動の全力を100とすれば、70%くらいの力から徐々に力を抜いて行きます。例えばピッチングが終われば、全力の70%でキャッチボールを始め一球ごと強度を下げて60%→50%→40%→30%→20%とし、最後は山なりのボールを投げて終えます。

その後、10分ほどジョギングを行います。始めはやや早めにジョッグをし、徐々にスピードを落として行き、最後の1~2分はウォーキングまで落とすという段階をつみます。

ウォーミングアップの時には、スタッテックストレッチを少なめにして、ダイナミックストレッチ、バリステックストレッチを多めに行いましょうとお伝えいたしましたが、ダウンでは、逆にしっかりスタッテックストレッチを行います。

筋肉は基本縮む方向のみに力が入ります。これをそのままにしておくと、全身の筋肉が縮む方向に働き、その結果、「こわばり」「強い張り」「硬さ」などを生んでしまうのです。

これが疲労につながったり、故障の原因になったりします。しっかり筋肉を静的に伸ばすことが大切になります。念のためにお伝えしておきますが、激しく筋肉を使った後は、顕微鏡レベルの微小な傷が出来る場合があります。その時、気持ちいいレベル以上に伸ばすとその傷が大きくなる可能性もあります。ささくれた筋肉を強く引っ張れば、そのささくれが大きくなることは容易に想像できると思います。あくまで気持ちいい範囲で行いましょう。

前述の通り、アップは主運動の前でないと意味がありませんが、ダウンは運動直後だけでなく1日の終わり、帰宅後に行うことも大切なのです。

ストレッチの効果が最大になる「スタッテックストレッチのゴールデンタイム」というのがあるのをご存知でしょうか?

それは「風呂上り」です。

4足歩行の動物より、2足歩行の人間は動物の中で最も重力に逆らっています。操り人形の糸を切ってしまうと、このようになります。

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そうならないために常に働いているのが「抗重力筋」という筋肉です。

人間はスポーツをしているしていない関係なしに、常に重力に逆らっています。「立つ」という行為があるからこそ、「歩け」、「走れ」るわけです。つまり、人間はいつもこの「立つ」為の抗重力筋が疲労するのです。

この抗重力筋をいかに休ませるかが疲労を除去し、また蓄積させないようにするポイントになります。人間は座っていても寝ていても(もちろん立位よりかなり小さくなりますが)、重力に逆らっています。完全に重力から抗重力筋を解放するには無重力、つまり宇宙に行くしかありません。

私たちは普通に生活していて宇宙に行くことは不可能です。ところが、無重力に近い状態は作れます。それが水による「浮力」です。

人間が立った状態で肩まで水に浸かると、水中では体重は1/10になります。

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そして、横向きに浸かると体重は1/30になってしまいます。

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体重60kの人は、2kgになってしまうということです。これはつまり、ほぼ無重力となります。

そして私たちの生活で日常的に水中に浸かるといえば、それは言うまでもなく、「お風呂」です。お風呂の効果はこれだけではありません。

人間は自律神経で身体をコントロールしています。自律神経には、交感神経と副交感神経があります。この2つの神経は相反するもので、交感神経は仕事中や人前で話している時やスポーツをしている時に優位になり、やや緊張気味興奮気味になり、力が入りやすい状態を作ってくれます。

逆に副交感神経は完全にリラックスした時や、眠たくなった時に働いています。つまり力が抜きやすい状態になっています。ここでいうお風呂は40度くらいのややぬるめのお湯に浸かることを指します。

43度くらいの熱いお風呂に入ると、逆に交感神経が優位となり真逆の効果となります(朝1日の始めとして43度くらいのお風呂やシャワーを浴びることは交感神経を優位にし、元気よく1日をスタートできます)。

ぬるめのお湯に浸かり、副交感神経神経が優位になっている時、筋肉は「弛緩」しようとするので、この時にスタッテックなストレッチをすると抜群の効果を得ることができます。

お風呂の効果はまだほかにもあります。それを下の図にまとめてみました。

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人間はスポーツをしているしていない関係なしに、ストレスと闘っています。これはずっと交感神経が優位になっているということです。

このようなストレス社会を生き抜くためには、いかに副交感神経を優位に立たせるかが大切になってくるのです。ある研究報告では、鬱を罹患している人の多くが湯船に浸からず、シャワーで済ます人が多いということも分かっています。

アスリートだけでなく、みなさんも是非40度くらいのお風呂にゆっくり浸かり、そして、ストレッチを生活の一部にし、毎日元気に生活してもらえればと思います。

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