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私が更に野球が好きになった理由②

先日の投稿で少年時代の私がいかに水島新司先生の素晴らしい作品によって野球にのめりこんでいったかを熱くお話ししました。そんな水島作品の中でも傑作中の傑作「ドカベン」は意外な終わり方をします。なんと主人公たちが高校3年の夏の大会を直前に控えたところで最終回を迎えるのです。高校最後の大会、の前に最終回です。このエンディングは衝撃的な謎でした。
  
しかしその後、「大甲子園」という作品でドカベンは復活します。それどころか、そこでは当時各々独立して人気を博していた「一球さん」や「球道くん」などの作品のキャラクターたちが出版社の垣根を超えて、一つの作品となるのです。

つまり、あの謎は最後の夏で水島先生が産んだ人気キャラクターたちが同じ舞台で甲子園を目指し、そして甲子園で闘う、という想像を超えた展開へのプロローグだったのです。この演出には痺れました。謎が解けた喜びにさらなるワクワク感をもたらせてくれるという。

それだけでもすごいのに、「大甲子園」で活躍したキャラクターたちは、その年のドラフトでプロ野球球団に指名され、今度はプロを舞台に「ドカベンプロ野球編」として続いていくのです。なんというスケール感でしょうか。

前回、水島先生が私の渡米での送別会に来てくださった話をしましたが、日本球界(千葉ロッテ)に戻ってから再び先生とお会いする機会がありました。そこで、私は以前から「ドカベンプロ野球編」で疑問に思っていたことを質問したのです。

私が長年思っていた疑問は「球道くん」こと中西球道が「プロ野球編」に出てこないのです。すると先生は「彼は怪我をしている」と言うのです。そう言われてみれば、確かに「大甲子園」で怪我をしても試合で投げ続ける描写がありました。先生のこうしたリアリティの追求に感心しつつ、続けて先生は冗談交じりに「お前が球道救ってよ!」とおっしゃったのです。

その後、シーズン中に何人かの選手に「中西球道ってどんな人ですか?」「球道凄いですね」と唐突に聞かれることがありました。なんのことか?と思っていると、その中の一人が「タチ(私の愛称)さんドカベンに出てましたよ」と。


なんと!?その日のうちに、何件かのコンビニに行き、ようやく週刊チャンピオンを見つけ、買いあさりました。夢のようなことですが、そこには確かに私と中西球道が一緒に描かれていたのです。私が怪我で野球を辞めていた中西球道をリハビリ、トレーニングをさせて復活させ、隠れ一位で地元千葉ロッテに指名される。と、同時私もロッテに復帰するという設定でした。

あるインタビューで「立花さんが、プロ野球の世界に入って一番嬉しかった事は何ですか?」と、聞かれ、色々なことが浮かんだのですが、少し考えて私は「ドカベンに出られた事です」と答えました。それくらい、私にとって嬉しくて嬉しくてたまらない事だったのです。子供の頃から心を奪われていた「ドカベン」に、しかも中西球道と出られるなんて、水島先生から最高のプレゼントを頂いたと思っています。

私は一昨年まで、社会人野球の名門日立製作所でコーチをしていました。ほとんどの選手たちは、ドカベンを知っていましたが、何人かの新人選手がドカベンは聞いた事があるけど、読んだ事はないという選手が入社してきました。私は是非とも知ってもらいたいと思い、全巻大人買いをし、ウエイトルームの有酸素エリアに置いてみました。やはり、知らなかった新人選手たちも、食い入るように読み始めました。やはり野球好きには通ずる物があるのだなと思いました。

今の若い人たちはドカベン以外の漫画で野球が好きになった人もいるでしょう。私も最近の人気野球漫画を読んでみようと思います。きっと新しい楽しみ方を見出すでしょう。そして、殿堂入りの候補にまで上がる方の作品です、是非ともドカベンを知らない若い方々にも一度一巻から読んでもらいたいと思います。

ちなみに1〜8巻辺りまでは、野球漫画ではなく、柔道漫画では?と思うくらい野球が出てきません。野球好きの方はついつい、野球をしだす、ドカベン主人公山田太郎たちが野球をやりだす9巻くらいから読み出すかもしれませんが、しかし、一巻から読む事で、初めから登場するキャラクターがより鮮明にイメージができ、後に楽しみも大きくなります。

ちなみに先ほどご紹介した私の登場シーンは「ドカベンプロ野球編31巻」後半に出て来ます。

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