見出し画像

何故マウンドがあるのか?

マウンド(Mound)とは、「土、砂、礫、石などを人工的に積み重ねた小さな山」(Wikipediaより)と記されています。数ある球技の中で、競技場に小さな山があるというのは野球くらいですね。

野球は元来、芝の上で行う競技です。内野手は「Infielder (インフィルダー)」、外野手を「Out fielder (アウトフィルダー)」と言いますよね。

ケビン・コスナーが演じる野球映画の名作「Field of dreams (フィールド・オブ・ドリームス)」(1989年)をご存知でしょうか?日本では、野球場のことをグラウンドという表現することが多いのですが、アメリカではこのようにフィールドと言うのが一般的です。

ちょっと話はズレますが、この「フィールド・オブ・ドリームス」、日本でも大ヒットしましたが、ある事実を知っているかどうかでだいぶ理解に差が生じます。多くのアメリカ人はその事実を知っているのですが、日本人にとっては馴染みがありません。

私は一度、チャーリー・シーン主演の実話映画「エイトメン・アウト」(1988年/劇場非公開)を見て、シューレス・ジョーという人物の存在を知ってから、再び「フィールド・オブ・ドリームス」をご覧になることをお勧めします。これを知っていると、感動の度合いが違うはずです。

さて、このアメリカの「フィールド」に対して、日本ではグラウンド(Ground)、と表現するわけですが、これは「地」「地面」「土地」のことを言います。Fieldの方は「広々とした草地」「野原」「平原」と訳されます。

冒頭で述べたように野球は本来、緑の芝生の上で行う競技だったのです。やがて、試合中によく使われる部分だけがだんだん剥げて茶色がかってきて、現在のようになったのです。つまり、バッターボックス付近、本塁から一塁、一塁から二塁、二塁から三塁、そして、三塁から本塁、と使う走路も剥げてきて、内野の各ポジション付近も剥げてきたわけです。

アメリカに内外野天然芝が多いのはこういう背景があるのです。日本でも最近になって、内外野芝(ほとんどは人工芝)の球場が増えてきましたが、それでもまだまだ内野は土のまんまのいわゆるグランド(グラウンド)が多いと思います。そう考えると、日本では、インフィルダーのことを、イングランダーと呼ばなくてはいけないのかもしれません。

それはさておき、先ほど、フィールドのよく使う部分が剥げてきて、現在のようになったと言いましたが、もちろん、ピッチャーが投げる場所も例外ではありません。むしろそこは前述した箇所よりも芝は剥げ、それどころか地面も削って掘ってしまうようになりました。

前回ピッチャーの歴史では触れませんでしたが、昔は現在のようにピッチャーズプレートというものはなく、その代わりピッチャーズボックスというのがあり、その枠内からならどこから投げてもいいという時代がありました。そしてこのピッチャーズボックス内がいつも、大きく掘れてしまうので、雨が降ると、水溜りができてしまって困ったそうです。

そこでその都度土で埋めていたそうですが、ある時から、このピッチャーズボックス内の後方に、あらかじめ土を盛っておき、その都度穴を埋めていくようになっていきました。これが、現在のマウンドの原型ということだそうです。

前述しましたが当時は、ピッチャーズボックス内なら、どこから投げてもよかったのですが、そのうちにピッチャーズボックス後方の盛ってある土の上から投げ出す投手が現れ、多くの投手から「投げやすい」と評判になり、今では常識となった傾斜を使った投球が誕生したわけです。

傾斜があることで投げやすくなる論理は、平地では、軸足と踏み込みが平行した状態でボールをリリースするのに対し、傾斜があれば、軸足より踏み込み足が低い位置になるので、平地で投げるよりリリースは自ずと、やや前、そして下になるので、ストライクゾーンに投げやすくなる、ということです。

また、平地で投げた時のスピードと傾斜のあるマウンドで投げた時のスピードの差は、個人差はありますが、5〜10km/hくらい傾斜のある方が速くなります。こうして、これに気づいた多くの投手たちは、どんどん土を盛って投げるようになったのです。

しかし、あまりにも土を盛り過ぎるので、これに歯止めをかけるために、マウンドの高さに制限が出来たのです。(現在の規定は高さ25.4cm、直径5.486mの円形)また、ピッチャーズボックス内のどこからでも投げてよかったルールも、投げる距離を統一するために、プレート(板状の物)が設置されるようになりました。(現在は横51cm縦 15cm)

現在のマウンド

画像1

日本では、投手が試合に投げることを「登板」と言いますね。小さな山に登って板に足を付けるからそう呼ばれるのです。こうやって私たちの先人たちが工夫をくりかえし、こんな楽しいスポーツを作り上げてくれたのです。こうして野球の歴史を紐解いていくと、面白いことがたくさんありますね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?