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【オンライン立ち飲み】うつわ作家の石川さんと「価値」の話

5月1日(金)、proshiroutでは「TACHINOMI余市ととなりの席の○○さん」のインスタライブを行いました。記念となる第10回は、2回目の登場、うつわ作家の石川隆児さんとの対談です。濃く長かった。そして衝撃のラスト。その様子をレポートします。

価値

proshiroutのinstagramのアカウントのフォロワーが1,000人を超えた。TORUは以前より「1,000人を超えるのがひとつの通過点」と言っていたが、4月30日、とつぜん呆気なく、その数字が4桁になった。
ということで、その自分へのお祝いのために、今日はシャンパンを準備しているTORUであった。本日のBGMは「平成の名曲」だ。小沢健二広末涼子など、90年代のポップソングが聞こえてくる。
そこに石川さんが登場、こちらはスーパドライで乾杯をしてスタート。今では自らのインスタライブも定期的に行っているが、お酒を飲みながら話す石川さんが見られるのは、TORUとの立ち飲み対談のときだけだ。

今回のテーマ「価値」を選んだ理由を、TORUはこう話す。「この、あたりまえの日常ではなくなった毎日で、いろんな考え方変わってきているんだろうな、と感じます。ほんの些細なもの、これまでは気づかなかったものが、価値として見直されている。そこで、石川さんや皆さんの価値について教えてもらいたいんです」

石川さんは、「価値」は個人の美意識の中に出現するものだと捉えている。「例えば、Instagramって、個人的な楽しいものとか綺麗なものとか、そういった美意識を発信するサービスじゃないですか。特定の人のことをフォローしたい、っていうのは、その人が持つ美意識やセンスに共感するっていうことですよね。そして、そこには、『この人だから』という、最後の一押しの何かがあると思うんです。そういった、各々が持つ『個性』みたいなものが、『価値』なんじゃないかな、と思っていて。」

一方TORUは、「新しい価値」のことを考える。「例えばなんですが、山登り中にすれ違うと、みんなお互いにあいさつしますよね、普段の街中ではそんなことしないのに。それって、同じ体験をすると、どこか一致団結する、ということがあると思うんです。音楽フェスもそうだし、まさに小さな立ち飲みだってそうです。そして、誰もが同じような生活をしているこの自粛期間中だからこそ、1ヶ月前にはなかったような、共感しやすい新たな価値が何かあるんじゃないかな、と思っています

「アライさんは、会社に勤めているからなのか、圧倒的に社会に目が向いているんですよ。僕は自営業なので、『価値』と聞くと、自分の内側に向かうもの、自分の好きなもの、を連想してしまいます。これは、コロナだから、ということでもなくて、もともと変わらないかもしれない」
一見おしゃべり好きで仲の良いこの2人は、実は考え方は両極端なことも多い。それがお互いに刺激を与えている、とも言える。

若い人、日本

石川さんの好きなものの話から発展して、弥生土器の破片や、韓国の15世紀頃の小皿など、所蔵の古道具をいくつか、惜しげもなく見せてもらった。口縁がひな菊の花弁のように美しく波打っているのは、平安時代の焼き物の小皿だ。その形にインスピレーションをもらって作った石川さんの作品も見せてくれた。
「現代の作家さんも好きなんだけど、いろいろと知っていくと、やっぱり古いものに行きついてしまいますね。昔って、電気釜や電気ろくろはないけれど、結局やってることは、土をこねて、形を整えて、焼く、ということだけで、これは、縄文時代からやってることなんです

そんな、元来、生活に必要なうつわを作ってきたけれど、いつからかそこに美を見出して、芸術的な価値が生まれたのか、という話から派生し、わびさびの文化について、千利休について、日本語の奥ゆかしさについてと、いつものように発散していく会話。

石川さんは言う。「欧米やアフリカ、南米とかは、派手で賑やかなんだけど、アジア、特に日本の美術って、水墨画や書、能とか、静かなものが多いんです。そこには、『これ、なんなんだろうな』という考察する時間があります。今の若い人たちは、端末の中にグローバルなエンタメがあって、いつでも世界に繋がることができます。それが一概に悪いというわけじゃないんだけど。携帯がない時には、自分で楽しさとか遊びを作り出そうとしてましたよね」

「でも、僕は、会社のアルバイトで18歳くらいの人と喋る機会もあるんですけど、最近の若い世代、27歳より下くらいかな、とても優秀な人たちが多いと思ってるんです。というのは、彼らって、多感な時期にあらゆる情報が入ってくるという環境だったからこそ、それを自ら取捨選択できる力があります。例えば、今は最新の音楽も聴けるし、80年代の音楽も聴けるんです。そして、意外とそんな古き良き音楽が再評価されて、若者に流行したりもしてるんですよね。」とTORU。

しかし、その価値の基準は、業界によって違う。「陶芸って、職人の世界だから、下手したら40歳でも若手、と言われる世界だったんですよ。」と石川さんは話す。「音楽はせいぜい100年くらいの歴史だけれど、焼き物は紀元前まで遡ります。だから知識も必要だし、必然的に年齢を重ねることになるのかもしれない。」

存在価値

一方で、焼き物の業界は、いろいろと曖昧なことも多い、と言う。「例えば、『修行は3〜5年やりなさい』という風習があります。でも、なんで『3〜5年』なの?って思いません?陶芸って、ある意味破綻していて、そこには絶対的な価値、というものはないんです。だって、素人がある日、陶芸をやってみたら、1発目から素晴らしいものができて、プロが負けることだってあるんですよ。僕はさいわい、作ったものを喜んでくれるお客さんがいっぱいいて、それが存在価値ではあるんですけれど」

「価値って、人に必要とされるか、ということですよね。僕たちも今は、実店舗もないから、こういうところで見てもらっていて、そこで褒めてもらったりすることがモチベーションです。声を大にして言いたいのは、僕でもできているから、みんなも素人として、もっと発信したらいいのに、ということです」TORUは今日はとくに饒舌だ。

僕は自分が、アニメとかの主人公か何かだと思っているんです」と唐突に語る石川さん。というのも、彼は、自分が楽しいかどうかという価値観に率直にものづくりをする。「そこには、言ってみれば、優しさはないんです。でも、結果として、自分が楽しいことをした方が、他人が喜んでくれることになるんです。人に合わせることはできなくて。誕生日じゃない日に誕生日おめでとう、とは言えないじゃないですか

この2人の話は、相変わらずあちこちと飛びまわる。文脈の尾びれを捕まえたと思ったらするりと逃げ、急いで追いかけていったつもりだったのに、いつの間にやら混沌と煮込まれた大釜の中に入れられていることに気づく。なんとか文字にしてみても、このニュアンスを再現することはやっぱり不可能で、実際のインスタライブを見ることをおすすめしたい。

文化

二次会が始まり、石川さんは変わらない熱量で語り始める。「最近、これ、なんだろうな、っていうテーマがあって。『文化』です。『文化』ってなんでしょうかね、わからない。天狗みたいなもんで。天狗のことは誰でも知ってるけど、誰もみたことないわけじゃないですか。さっきWIKIpediaで調べてみたんですけど、そしたらむちゃくちゃあいまいなことが書いてあって。『こういった場合の文化はこれで、こういった場合は、これ』みたいに。」

TORUは言う。「長くて根付いている、という性格のものが文化じゃないですか?僕は仕事で、世界のいろんな僻地に行かせてもらったんですけど、それぞれの土地には土着的なものがあって、すごい面白いんです

「でも俺が思う文化って、クリエイティブに生み出された瞬間、に興味があるんです。ありものになってしまうと、止まっているイメージですよね。それよりも、人間のエネルギーの発散というか、エンタメ的な思想なんです。あれ?今日のテーマってなんだっけ。」と首を傾げる石川さん。

いつの間にかテーマが「文化」になっていて、11月3日の文化の日に何かを一緒にやりましょう、という話になる。どうせなら、たくさん人を集めてフェスみたいな、「文化フェス」やりましょうよ、とTORUが言い始めたが、それはつまり、「文化祭」だ。

分かってはいたが、三次会が始まった。文化祭で具体的にどんなことをしようか、というアイデアが煮詰まっていく。
河原で粘土を掘って、それで石川さんに教えてもらいながらぐい飲みを作って、夜に焚き火で焼きつけ、翌日にそれで皆で乾杯する、そんな素敵なワークショップのアイデアのほかにも、いろいろな思いつきが浮かんでは消えていく。

映画祭
焼きそば
お化け屋敷
ハグ会
メイド喫茶
NEOラジオ体操

とレポートメモには書いてある。
NEOラジオ体操って、何だろう・・。

革命

画面上は、ついに四次会が始まっている。
石川さんはいつのまにか5本目のビールを開けている。二次会、三次会と、夜も深まると、どうしても徐々に脱落してく視聴者。それでもまだ、人数は60人もいる。
酔っ払い2人のどちらが言い始めたのか、今となってはもうさだかではないが、「これ、100人いけるんじゃない?」ということになった。待て待て。proshiroutの視聴者数は、3桁に届いたことなんてないじゃないか、これは絶対に無理だ。

しかし、その忠告は彼らには届かなかった。織田裕二の「OVER THE TROUBLE」に載せてノリノリで奇妙な踊りを続けるTORUと(まだ「平成の名曲」のBGMが流れているのだ)、今日いちばんのテンションで「がんばれ」「行けるぞ」と画面に向かって鼓舞を続ける石川さん。我々はいったい、何を見せられているのか。学校にくる人たちに「学校をサボるな」と説教をするように、見ている人に「見てね」と言っても、意味はないのではないか。

そのときであった。右上の数字がのろのろと増え始めた。2人の熱量が、インターネットの世界を抜け出し、ついに現実の世界へ伝播し始めたのだろうか・・、いや、科学的に考えてありえない。しかし数字は80を超え、ついに90台に。そして、渡辺美里の「My Revolution」が流れ始めたとき、革命が起きた。視聴者数が100名を超えた・・。
そして歓喜に湧く2人は、非公開の五次会へと消えていった・・。

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リンク

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▼ナタリーちゃんのグラレコ

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文責:TSUYOSHI HIRATSUKA
proshiroutの幽霊部員。実は僕のフォロワーももうすぐ1,000人を超える。その大半は謎のウクライナ人だ。


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