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【オンライン立ち飲み】CARPOOLの富士さんと「相乗り」の話

4月19日(日)、proshiroutでは「TACHINOMI余市ととなりの席の○○さん」のインスタライブを行いました。第6回目は、北海道のコーヒースタンドを経営する富士さんとの対談です。その模様をレポートします。

乾杯

20時、proshiroutのインスタライブに、黒いパーカーを着た、三白眼が印象的な女性が、カウンターに肘をついて登場。これは・・、完璧な立ち飲み感。というのも、自宅からではなくて、自らが経営している店舗から配信してくれているのだ。「はじめまして。富士といいます。小樽でコーヒースタンドをやってます。あらいくんとは、以前同じ会社でつとめていました」と、淡々とした口調だ。JR北海道の小樽駅から海のほうに歩いて3分ほどのところに店を構える「CARPOOL」は、富士さんこだわりのコーヒーやチャイを出す、こじんまりとしたコーヒースタンドである。お酒も飲める。

昔から仲が良かったTORUは、「富士が店を作る、という話を聞いたときに、次の日にもう飛行機を予約して、5月に会いに行ったんだよね」ということ。そのとき、店はまだ居抜きをしたばかりで、何もない状態だった。「そうです、オープン前、店のロゴやショップカードなどのディレクションをしてもらいました」と富士さん。

その後、銀行にお金を借りたり、商品を発注したり、インテリアの仕事に従事していた経験を生かして自らリノベーションをしたり、ひとり死に物狂いで、ばたばたっと出店準備と事務作業に明け暮れた。そして、無事に、昨年2019年の7月にオープン。オープンしたら必ず行くよ、と言っていたTORUは、結局その後いちども現れていない。「ほんとに、行く行く詐欺ですよ」

CARPOOL

「CARPOOL」というのは、「車を複数人で相乗りする」を意味する英語。名詞でも動詞でも使える。「もともと、一昨年くらいに、まずこの名前だけは決めたんです。でも、それ以外、どんなことをするかは全く決まってなくて、飲食店なのかどうなのかすらわからなかったです」しかし、ひとつだけはっきりしていたのが、「人が集まる場を作りたい」というコンセプトである。

関西地方で駐車場のことを「モータープール」ということから、よく、「CARPOOL」って駐車場って意味ですか?と聞かれる。「でも、べつに駐車場でもよいんです。『みんなの場所にしたい』という思いにはあってるから、それでもよいんです」と、何も執着するところがない。

相乗り、と聞くと、ピンクのワゴンを思い浮かべがちだが、筆者は黄色いフォルクスワーゲンの小型バスをを思い浮かべる。そう、「リトル・ミス・サンシャイン」だ。いい映画なのだ。アルバカーキに住む、いろんな問題を抱えた、ポンコツだらけの家族が、7歳の娘がお子様版のミスコンに出ることを機に、小さなバスを運転してカリフォルニアを目指す。いろんなトラブルに遭いながら、でもゴールが近づくにつれて、そんな家族に変化が・・。無理やり映画の話を打ち込んだ感じがあるので、話を元に戻そう。

日常

ほんとうは、余市のイベントの第1回目は、ATELIER MUJI銀座ではなくて、ほかでもないCARPOOLで開くはずだった。在庫も揃え、オペレーションも決め、あとは当日行くだけだったところに、超大型台風の日本縦断と、あとTORUの普段の行いにより、予約した航空便が飛ばなかった。

「小樽のお客さまたちも、みなさんすごいたのしみにしていたんですけど、残念でした。常連さんたちからは、べつに、イベントじゃなくて、常設で『余市』をやってくれたらいいのに、と言われています」ほんとうかな、嬉しいこと言ってくれるじゃん、と言う行く行く詐欺師に、「わたしはリップサービスができるタイプではないのです」と言う。

飲み物はあくまでも手段で、「場を作りたい」というのは、立ち飲み余市と通じる思想である。「たまたま居合わせたお客さま同志が、話しているうちにつながっていく、というのが喜びなのです」と語る富士さん。「日常として、いつも行くお店がある、というのは、生活の中で重要なことです」

昨今のこの状況、小樽の日常生活に溶け込むことができたCARPOOLは、まだ細々と営業ができている。「うちは、席数を減らしての営業ですが、常連のお客さまたちが、きちんとエチケットに気を使って利用していただいていて、とてもありがたいな、と思っています。皆さまに支えられているおかげでなんとか持ってはいます。同じ小樽でも、観光客がメインの店は、大打撃を受けているみたいですね」(※その後、4/21より5/6まで休業となった)

現在は、富士さんの願いのとおり、居合わせたお客さま同士が自然と会話を始めることもある店になった。お酒を飲む夜だけじゃなくて、昼間のコーヒーだけでも、ふわっとつながりができる。「今すぐにでも行きたい。でもいま東京から行ったら、迷惑かけるよね」というTORUに、「そうですね、迷惑です、出禁にしますよ」とにやける富士さん。

「せっかくのインスタライブですが、話すのが苦手で、ぺらぺらとしゃべられないのがお詫びです」と言うのだけれども、この人、どうもそんなわけではない。客のことを必ず「お客さま」と言う柔らかい物腰の礼儀がありながらも、冷静でふてぶてしく、不快にならない毒のあるユーモア端々に入れ、ゆるゆると話すこの雰囲気は、なんだか底が知れない。

二次会

二次会では「店を紹介します」ということだ。「外から見るとこんな感じです」と、富士さんは夜の広いバス通りに出てくる。車道の真ん中から撮影する彼女。あぶない。
入店すぐの左手には、コーヒー豆や知り合いのショップカード置いているラックがある。右奥に大きく切り取ったL字のカウンター、手前側にはテイクアウェイのコーナーがあり、その隣には黒光りしたエスプレッソマシーン。もともとが洋服屋だったので、突き当たりの壁には鏡がついていて、その隣の押し入れだったところはトイレになった。洋服屋のときからついてたレトロな照明を吊を吊るしたアーチ型の天井には、欲しかったMarshallのスピーカーを取り付けた。
カメラがカウンターの中に回り込んだ。総ガラス張りのエントランス沿いには細いカウンターがあり、席としても、テイクアウェイコーヒーを待つ場所として使える。店の外にはテーブルと椅子を置き、オープンカフェになる。「カウンターの中からだと外がよく見えます。空が綺麗に見えて、このロケーションが大好きです」

看板メニューでもある「チャイ」を揃えたきっかけは。コーヒーを飲めない人がけっこう多いので、そういう人たちがいい気分になれるのは何かな、と考えたときに、ふとコーヒーの聖地のポートランドから、チャイを連想した。でも、それまで、富士さん自身は、チャイはあんまり好きではなかった。いろいろ飲んでみても、もうちょっとこんな味だったらよかったのに、ということばかりで、それだったら自分で作っちゃえ、ということになった。「ちょうど前職をやめて、失業保険をもらって余裕がある時期に、一ヶ月くらい、毎日チャイを作って完成させました。わたしの店の特徴付けるものがほしかったんです

出身は札幌の富士さんが、なぜ出店の場所に隣町の小樽を選んだのか。「わたしは港町が好きなんです。函館も好きなのですが、ちょっと札幌からは遠すぎました。そんな中、たまたま、物件を探していたら、今の場所に空きが出てたんです。見にきたときに、ここは私がやるしかない、わたし以外の人に貸すもんか、と思いました」銀行とか病院なども近く、街の人たちが使っている生活圏内だった、というのも、日常の中の店、という彼女の思いに合致していた。

落ち着いたら必ず、立ち飲み余市のイベントをしに行く、と意気込むTORU。「でも、どんだけのことをするんだあいつはって、ハードルが高くなってそう、もはや棒高跳びくらいの高さだよね」というと、「棒高跳びを練習してきてくださいね、詐欺師集団のみなさん」と打ち返された。

リンク

ナタリーちゃんのグラレコ。

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文責:TSUYOSHI HIRATSUKA
proshiroutの幽霊部員。北海道出身だが、寒いのが苦手で上京した。


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立ち飲み 余市
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