同性カップルの賃貸苦労における2つの矮小化と、男同士の賃貸問題の本質について考えてみた
1. 男同士の賃貸苦労、いろんな反響がありました
前回書いた 男同士が理想の賃貸マンションを見つけるまでの苦労話 はたくさんの反響をいただきました。みなさんありがとうございます。
引用RTなどのコメントを見ると、同じように賃貸で苦労した人は多いようです。あの漫画家の田亀源五郎さんも昔、男同士の賃貸で苦労したとのこと。昔から変わってないんだなあ…。
こうした苦労を経験されている方は割といて、中には、その経験から LGBTsフレンドリーな不動産会社を起業したというゲイの方もいました。
2. そんな中「たまたま運が悪かっただけ」的なコメントが
みなさんのコメントが興味深いので、他にも「男同士 賃貸」などのキーワードでtwitter検索してみました。そしたら気になるコメントが。
「ただ一人が苦労した事を声を大にして言うからみんながそれを信じてしまう」??? それってどういうこと??? 自分が書いた経験はかなりレアケースなだけで、男同士の賃貸は難しくないって言いたいってこと?
気になってtwitter検索してみると、昔から、ゲイの賃貸についてはこの手の発言をするゲイの人たちが一定いるようです。だいたい以下のような内容です。
自分が問題を感じなかったことと、実際に苦労している人が存在することは別問題では…。たしかに自分も前回の賃貸ではすんなり男二人で入居できたけど、今回は本当に苦労しました。いろんな場合があるってだけなのになんでそんなこと言うんだろ。
ちなみにtwitterやgoogleで検索すれば、賃貸で苦労した同性カップルの体験談は簡単に出てきます。ちなみにSUUMOのアンケート調査もありました。
※ https://suumo.jp/journal/2018/05/24/155061/ より引用
上記のアンケートによると、男性カップルの約半分は家探しに苦労したという結果が出ています。
ゲイでも賃貸がうまくいった人は、賃貸を借りる苦労をごくわずかのレアケースと誤解してしまうのかもしれません。でもそうした個人の体験をもとに、他人が語っている賃貸探しのむつかしさを矮小化するべきではないですよね。
田亀さんも書いてるけどほんとこういうこと ↓
3. 「たまたま」だけじゃない。賃貸苦労への反発にはいろんなパターンがあった
そんな中、先日バズっていた友達の太田君のツイートを見つけました。
「そうよね~。賃貸苦労するよね~」と思いつつ、このツイートの引用RTを見たところ、ちょっとした地獄が。
こんなかんじで「断られるの当然じゃん」的なコメントがたくさんついていたのです。つら~。声を上げると批判される社会つら~。
日本の法律では大家は住民を自由に選べるので、貸出先を選り好みされるのは仕方ないかもしれない。でも「物件買え」とか言われる筋合いはないし、「支払い能力に疑問」とかそんなのわかんなくないか? すごいモヤモヤする。
気になってtwitter検索したら、同性カップルが賃貸を借りる苦労について、いろいろな批判があることを知りました。でもよく読むとなんかおかしい。以下、パターンごとにまとめていきます。
上記で書いたように同性カップルへの賃貸苦労への批判にはいろんなパターンがありました。これまで書いてきたように、だいたいは物件の現状から目をそらしたり、ありもしない仮定を取り上げたり、偏見を含んだものが多かったです。こうした間違ったメッセージには、しっかりとNOと言いたい。
でもまあ、あまり気にしない。だってこれらはただの外野のヤジだから。
賃貸を借りるとき、不動産会社が「賃貸借りずに自分で家買いましょうよ」とは言わないし(パターンa)、申込書で同性愛者かどうか聞いてくるわけでもない(b)、「なんでわざわざゲイとか言うんですか」(c)と言ってくることもない。また、物件を借りれないのは与信以前の問題なので(d)も関係ありません。これまで取り上げた(a)~(d)は、自分たちが賃貸物件を借りれない本当の問題ではないのです。
4. 結局のところ、何が本当の問題なのか?
そんな中、これまでとはちょっと違う投稿がありました。
たしかに大家は住民を選ぶことができる。一見すると正しい言葉のようにも思える。でも何かおかしい気がする。何だろう。
自分なりに整理すると、以下のようなことだとわかりました。
いろいろな理由から男性同士のルームシェアがNGになるのは、ある程度はわかる。だから3 と 4 はおかしくない。でも、そもそも前提の 2 がおかしいんだよな。
確かに、付き合って半年程度の若者同士ならすぐ片方が出ていくかもしれない。でもうちみたいな長期間付き合ってるカップルはどうすれば良いんだ?それに付き合って半年程度の若者同士のゲイカップルでも、本気で結婚したいって人たちも中にはいるかもしれない。男同士のカップルにもいろいろなパターンがあります。
でも、本人たちがどれだけ誠実な関係を気付いていても、それを証明する効力のある仕組み(法律婚)はありません。外からは勝手に自分たちの関係性をルームシェアレベルと決めてかかられます。
そして「ルームシェアはすぐ片方が出ていくからNG」(うちは長期間付き合ってて長年同居した実績のある住民票も出せるのに、ていうかそもそも一人で払えるのに…)、「男の人は騒ぐからNG」(うちはアラフォーでそんな元気ないのに…)、「男の人は汚すからNG」(僕はタバコすら吸わないんだけど…)、みたいなわけのわからない理由で、ルームシェア扱いされた僕たちはNGを食らうのです。10年以上付き合って長年同棲もしてきた40歳超えのおじさん二人が「男の人は騒ぐから」と断られる悲しさたるや…。
※ちなみにいまはパートナーシップ証明書というものがありますが、これが役に立つのはまだごく限られた状況のみでしかありません
これが男女カップルだったら、極端なことを言えば交際期間0日でも籍さえ入れれば正式に夫婦になれます。そして籍を入れなくても大体の場合は「婚約者」とか「結婚予定」といえば、融通を利かせてもらえて二人で希望の物件に住めるのです。本当にうらやましい。
何度も繰り返しますが大家は住民を選ぶ権利があります。不安な住民は拒否すればよい。でも賃貸業界において、同性カップルはどんな深い関係をもつ二人でも、ホワイトな属性の二人でも、一律にルームシェアという脆弱な関係性として矮小化されてしまう。特に男同士の場合はマイナスイメージが強く、「男性」と「ルームシェア」が重なってNGになりやすくなってしまう。これが男同士が賃貸探しに苦労する問題の本質だと思いました。
長くなりましたが以上、同性カップルの賃貸苦労における2つの矮小化と、賃貸問題の本質への考察でした。
5. 同性カップルの賃貸探しがどうなれば良いか
最後に今後の話をしたいと思います。
自分は、別に同性カップルならだれでも入居させてほしいとか、特別扱いしてほしいとか思っているわけではありません。
自分が考える要望は以下です。
● 同性カップル二人を一律に「ルームシェア」扱いとするのをやめてほしい。二人の関係性は、同性パートナー証明書や住民票の同居履歴など何らかの指針をもとに、一定の基準をクリアしていれば「男女の夫婦相当、またはそれに準ずるもの」と判断してほしい(実際いま自分が住んでいる賃貸の貸主は同性カップルを男女夫婦相当としています)
● それ以外の職業や収入などの項目については、通常と同じレベルの審査をしてほしい。同性カップルを特別に優遇して欲しいわけではない
文字に書き起こしてみるとシンプルですね。しかも世の中にはうちの貸主のようにすでに上記と同じ基準でやってる会社もいます。これからほかの会社も続くと良いなと思います。
あともうちょっと贅沢だけ言えば、上記の基準を持つ企業はそれを公表してくれればとてもありがたいです。同性カップルはその企業の物件を探しに行けるので。
もし貸主企業からの公表がむつかしくても、仲介会社が上記企業のリストを作って、上記企業が扱う全物件リストを持っていてくれればそれだけで物件探しははかどるかもしれません。もしもそういう仲介会社があれば、個人的にはぜひ利用したいなと思いました。
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