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立庭和奈のこの言葉に響きあり 11その2

   もちろん、それはそれで悪いことではありません。しかしその事は同時に、その事態が恒常化してしまうと、フリーランスや個人事業者は良くとも、協業する必要がある職場の、空洞化が進むばかりの結果を引き起こしてしまいます。つまり、世の中にある会社という会社が、新しい労働力を引き付けるだけの魅力を持ち合わせない、つまらない場所に成り下がってしまうということです。もちろん経営者は遅かれ早かれその結果を受け取る事になります。その事に対して、いち早く対処できた企業は成長要因を獲得し、手がつけられない企業は衰退していくということです。

   会社組織にしても、およそ他のあらゆる組織の最小単位は人です。その構成要素の一人一人が持てる力を発揮できないのであれば、全体としてのパフォーマンスも麗しいものとはならないことに、説明の必要はありません。働き方改革にしても、ブラック企業対策にしても、法律の規制や行政の指導だけで全て収まるわけではありません。そもそも世の中には、その必要がないほど以前から、十分上手くやっている企業は存在しています。現代の世の中で色々な齟齬が明るみになってきて、よい面も悪い面も注目を浴びているのにすぎず、事の真相は昔も今も変わりません。

   今、働きやすいことが、経営戦略として注目されています。しかしこれとても、ある分野では常識のように語られています。スポーツの世界です。個人競技のアスリート達は、自身の体調やモチベーションを語られることが多いと思いますが、集団競技の選手は、自分のパフォーマンスの結果に対して、チームの処遇や環境について、語る場面を目にすることがあります。「チームの雰囲気が良く、自分も伸び伸びとプレーすることが出来ました。」「よい結果が残せたのは、監督始めベンチの後押しがあったおかげです。」

   古くは武田信玄にしても、松下幸之助にしても、その時代による制約はあるものの、組織集団の経営に成功した人達は、その事の重要性に気付いていました。そしてそこには、明確な法則が横たわっています。戦国時代の武士集団にしても、国民的企業の経営にしても、メジャーリーグの采配にしても、学校や家族など、およそ人が組織を成すところでは、共通して作用する法則。トップダウンと同時に、ボトムアップがなされているか、もしくはそれらが上手く機能しているか。このひとつの要因に左右されるのです。メチャクチャ簡単なことです。スタープレイヤーの発言は、自ずから衆目を集めます。一会社員の感想は、全体会議で発表する機会さえまれです。法律の規制や行政の指導も、新しい指針もそのままでは、ほぼトップダウンです。若者達から魅力を感じてもらえない企業は、トップダウンを下したあと、ボトムアップの努力をしたのでしょうか。大いに疑問です。ボトムアップとは、言葉を替えれば「聞く耳を持つ」、と言い換えられます。冒頭の言葉は、新入社員や若い人達だけに向けられたものではありません。企業経営者の人達や、上司や先輩にあたる人達など、立場が上になった人達にも等しく投げ掛けられています。皆さんの会社も組織も「玉磨かざれば光なし」。
   若者は己を磨け。先人は組織も磨け。

  

いつの世も 人の出会いは ゆくりなく 見えぬ糸にて 繫がれしか