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立庭和奈の知れば知るほど 9その2

 もう少し詳しくお話しします。「豊かさ」とは心の状態を表すバロメーターの一つですので、本来、何を所有しているのか、収入がどれくらいなのか、買いたいと思うものが買えるのかとは、関係しないはずです。とはいえ、物の見方や考え方に大きく影響されてしまうのも事実です。これは「豊かさ」だけに限ったことではありません。「幸せ」「楽しい」「安らか」など、心の状態を表すものは何であれ、思考や環境に左右されながらも、本当はそれらから独立したものはずです。

 しかしほとんどの人はこの、心と思考のリンクは一方通行になってしまっています。多くのものを所有していると「豊か」、彼氏彼女がいると「幸せ」、自分の思い通りに物事が運んで「うれしい」、等々。もちろんこれは間違いではありません。しかしこれが絶対条件となってしまうことが問題なのです。人にとってたくさんのものを所有することと、「豊か」であることはどちらが大切でしょうか。彼氏彼女がいることと、「幸せ」であることはどちらが重要でしょうか。もしも人生が思い通りに行かないなかにあっても、日々「楽しい」ということはあり得ないのでしょうか。つまり、どんなことがあっても、どんな状況でも「豊か」である、「幸せ」であるためには、物の見方を逆の視点に変えてみればよいのです。自分の心の状態を基にして、物事を受け取ったり、解釈してみるということです。

 人生には、浮き沈みがあります。世の中の出来事は、思いのままにならないこともあります。その一つ一つに心をかき乱されていると、自分自身の心の安寧を得ることは、偶然の産物となってしまいます。しかし先に述べたように心と思考のリンクをいつもと逆方向にすると、全く違った世界が開けてくるのです。その方法とはすなわち、今あなたが「豊か」である、「幸せ」であるとして、目の前の現実や物事を解釈してしまうということです。「今欲しいものが手に入らないけれど豊か。なぜなら実現するまで夢が持てるから。」「彼氏彼女が居なくても幸せ、どうせ運命の人はいつかは出会える。それなら今は自分磨きに全力投球できる。」「なかなか思うように物事が運ばないけど楽しい、自分は大器晩成だ。困難を味わった分だけ人は魅力を増す。」

 もちろん順風の時は、その状況を受け入れればよいのです。あらゆる物事には、プラスの面とマイナスの面、陰と陽の両極で成り立っています。しかしそのどちらを眺めるかは、その時々のあなたの自由であるはずです。自分の勝手に現状をとらえても、誰にも迷惑をかけず、世の中にも一切マイナスを及ぼすことはありません。逆に世の中の通り一遍に、起きた出来事で気持ちを左右されるならば、誰にも迷惑をかけず、世の中にも一切マイナスを及ぼすことなく、あなたも満たされません。厳密にいうと自分自身という社会の一員の一人を、うつむいた心持にしていることによって、マイナスを及ぼしているかもしれません。そうしてみると、自分の心が満たされる自分勝手なものの見方って、素晴らしいと思いませんか。誰よりも自分自身を「豊か」にしているのですから。

 

いつの世も 人の出会いは ゆくりなく 見えぬ糸にて 繫がれしか