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【事業家集団】なぜ洗脳されてしまうのか?経験から考察してみた

Twitterやネットニュースで話題になりつつあった事業家集団が、ついに毎日新聞が連載で取り上げるほど問題視されるようになっています。

事業家集団にいたことを伝えた家族や彼氏、友人からは
「どうしてそんなに洗脳されてしまうのか?」
と、よく質問されるが一言で答えるのは難しい。

私が事業家集団を辞める時も「自分は洗脳されている」という自覚は全くなく、辞めて落ち着いた後で洗脳されていたことに気づきました。
辞める時に警察の方が協力していただき、そこで初めて世間的にみて悪い意味で異質な集団であることを自覚しました。

事業家集団が他社のネットワークビジネスの仕組みを使い、コンプライアンスを守っていた時代から在籍していたので、比較的長く活動していました。事業家集団に入った頃を思い返しながら「なぜ洗脳されてしまうのか」を考察していきます。

1.違和感を感じるのは当たり前

不安を上回る期待

当時の私はベンチャー企業の営業職を勤めながら、いつか自分でも起業したいと考えていました。
そのためにまずは会社で実績を作り、人脈を広げていこうと考えていましたが、具体的にどのように起業していけばよいのか悩んでいる状態でした。

ちょうどその時、紹介者から「金持ち父さん貧乏父さん」シリーズの本を数冊紹介され、ひどく感銘を受けました。紹介者から師匠Mを紹介され、起業するためには師匠を決めることが最初の一歩だと言われました。
「部活で全国大会で優勝するためには、勝ち方を知っている顧問に教えてもらう必要がある」
なるほど!と納得がいったものの、誰を師匠にすればいいのか見当もつきません。迷っていると師匠から
「再現性のあるやり方で成功してる人から学んだ方がいい。特殊な能力を持っていたり、資産を持っている人ではなく、努力で成功した人のやり方を真似すると成功できる」
と言われ、具体的に何を教えてもらえるのか聞くと
「会社員の思考回路で方法を取捨選択しても上手くはいかない。まずは、経営者の考え方に頭を変えないと、方法を説明しても理解はできない。」
そう言われ、そういうものなのか、と腑に落ちないものの納得しようとしました。紹介者からの勧めもあり弟子入りをお願いしました。

腹決めをしてから弟子入りをさせる

師匠に弟子入りをお願いするとこう言われました。
「成功するためには、思った以上に泥臭い努力が必要だ。納得がいかず、理解できないことも多くあると思う。それでも、師匠が言うことはまずは実践すること。納得がいかなくても飲み込んでやること。3年は努力すること。
一晩よく考えて、それでも成功したいと思ったらもう一度来て。」

その晩、眠ることができず期待と不安の間で大きく揺れ動きました。20数年生きてきた中で、こんなにも人生の選択を決めることに思い悩んだのは初めてです。多くの不安以上に期待が大きく、もしかしたら私は夢に描いたような成功を手に入れることができるかもしれない!
期待に胸をふくらませて、翌日師匠に弟子入りをお願いしました。

チームに入ってから知りましたが、新規の人が『自分で決めて、自分から弟子入りをお願いする状態が大事』と教わりました。
自分で決めた意思は強く、定着率を上げるそうです。

思考回路の軌道修正の連続

弟子入り後、土日のセミナーに参加し、平日は毎日街中で友達作りを行いました。1か月ごとにセミナーの内容が繰り返し行われると言われたので、同じ内容のセミナーを受けることの意味が分からず、私は師匠に質問しました。
「セミナーの内容はノートにしっかりメモを取りました。同じ内容のセミナーを受けるなら、友達を作ったり会うことに時間を使いたいです」
すると師匠はこう言いました。
「野球のバットを一回素振りしただけで、プロになれるのか?なれないだろう?会社員の思考回路を経営者の思考回路にするには時間がかかる。セミナーでインプットをし続けることは、野球選手がプロを目指すために毎日素振りをして体に染み込ませることと同じ」
確かに反復練習することによって上手くなることは学生の頃の部活で経験済みだったので、なるほど、と思いました。

また、街中で声をかけるのも勧誘対象を見つけるため、と事業家集団に入りたての頃は認識していました。勧誘対象を街中で見つけるためには、どのような人に声をかけてたらいいのか、質問すると師匠から厳しく怒られました。
「勧誘対象を探しに友達を作るのではない。人生を豊かにするために多くの友達を作るためにやっている。そのなかで、目指したいけどやり方がわからない人がいたら、チームに入ることを提案してあげたらいい」
(・・・???)
そういわれて意味が分かりませんでした。それって建前じゃない?と思いました。しかし、その質問を私がしたために、私の紹介者や近くのリーダーが師匠から恐怖心を感じるほど怒られているのを見て、紹介者たちに申し訳なく思いました。

建前と本音をうまく使い分ける必要があるのか?と疑問に思った事が顔に出たのかもしれません、師匠にこう言われました。
「違和感を感じることは当たり前。理解できないと思うことも当たり前。なぜならお前の思考回路はまだ会社員だから。違和感を感じている時は前進している証拠。」
事あるごとに繰り返し言われ続け、違和感を感じながらも、飲み込み続けていくうちに慣れてしまい、違和感を感じなくなりました。


2.存在意義を感じられるコミュニティ

事業家集団中心の生活

事業家集団に入った私の生活は、会社中心から、事業家集団中心の生活になりました。チームには同年代の人たちばかりで、部活のような感じです。
向上心が高く、やる気に満ち溢れている人たちと一緒にいるのは会社で仕事する以上に刺激があり、非常に楽しいと感じていました。もっと、多くにこのチームのことを知ってもらいたいと心の底から思っていました。

この事業家集団のことをネガティブにいう人たちがいることも知っていましたが、師匠は「非常識な結果をつくるなら非常識な行動をするべき。一般的な人たちが理解できなくて当然」と言っていたので、誹謗中傷されてもそういうもん、と納得していました。

毎月自己投資15万の出費で経済的にはかなり厳しいですが、自分と同じように頑張っているメンバーと、将来を語り合い、早く稼いでこの貧乏な生活を笑いのネタにできるくらい成功しようと言い合ってました。

月々の出費を工面するために多くのメンバーが夜にバイトを行い、睡眠時間は4時間前後が当たり前。
成功したければ、会社員と一緒にいるのではなく、師匠やメンバーと一緒にいるべきと繰り返し言われ、その通りに動いているメンバーに習って私も動きました。

蛙がいきなり熱湯に飛び込んだらびっくりして飛び出しますが、蛙が浸かっている水を徐々に温度を上げていくと、蛙は気づかず茹で上がってしまう、まさにそんな感じで徐々にチームに慣らしていく集団です。


生きるコミュニティが事業家集団

多くの人はコミュニティの中で自身の存在意義を感じ、存在意義が感じられるコミュニティに所属したいと思う生き物だと思います。
まさに事業家集団は各々が存在意義を感じられるコミュニティです。

チームを拡張させるために、サークルやセミナーのスタッフ・幹事はすべてメンバーで行われます。役割を担うことは良いこととされ、スタッフや幹事をやることが推奨されました。
そこで役割を果たせばチーム全体から認められ、承認欲求が満たされます。スタッフや幹事以外にも、プロジェクトで各々の得意分野を生かして、自分は必要とされている存在だ、と認識するようになります。

自分が必要とされ、存在意義を感じられるコミュニティに居心地の良さを感じるのは当然の反応だと思います。私も会社で仕事するよりも、このコミュニティにいたいと思うようになりました。

辞めたいと思っていても辞めることに恐怖心を感じている現役メンバーは、自分が所属するコミュニティを失うのが怖いと感じている人も少なからずいると思います。

3.恐怖による支配

BasicとSeek

能力開発の研修で受ける影響はかなり大きいです。
成果を作るために、ASKのbasic、seekの研修を受けるようにいわれます。basicは初回と再受講の2種類あり、受講料は9万程。再受講は年に1~2回のペースで受けることを推奨されてました。
seekの受講料は約30万。basicとseekの受講内容は全く異なり、チーム人数がある程度いる人がseekを受講します。

basicでは、自分の人生をどうしたいのか、について行われました。成功するために、なぜ事業家集団にいる必要があるのかその理由を明確化し、いつまでにどのような結果を作るのかコミットします。

basic受講後、「事業家集団に所属する理由は?」と聞かれ、リーダーや師匠が納得する返答をするまで、圧力をかけられました。
内心、自分がどのような人生にしたいのか明確になりましたが、必ずしも事業家集団にいなければならない、というわけではない、と感じました。しかし自分から師匠に弟子入りをお願いした手前、途中でやめるわけにもいかないと自分を納得させました。

seekではチームを作ることの責任について深く心に刻むような研修内容でした。
seek受講後、何度も事業家集団を辞めたい、と思いましたがそのたびに自分から始まるメンバーがいるし、その責任を放棄することがいかに人として最低なことか、とseekで受けたことを思い出しては踏みとどまる努力をしていました。

責任がある人ほど支配される

チーム内では様々な役割が存在し、それに関する責任を取る様にさせられます。サークルの幹事から、プロジェクトリーダー、師匠が持っている店舗の運営などなど。プロジェクトもチーム内で行われているものから、環境全体、トレーナーがらみのものまで様々なものがありました。

責任感がある人ほどその役割を全うしようと動き、環境にどっぷりとつかってきます。仮に辞めたいと思っていても、チーム内の役割に責任を感じためらいを感じるでしょう。
「辞めたい」と言ってもすんなり辞めさせてもらえる環境ではありません。必ず引き止められ、場合によっては自宅にメンバーが押しかけてくることもあります。
会社の様に引き続きをしたくても、そもそも引き継ぐ相手がいない場合もあります。

私もチーム内で様々な役割の責任を感じていたため、辞めたくても辞めることができない、という考えに囚われていました。


アメとムチ

私がいたチームはこれが顕著でした。師匠の存在は絶対!もうといっても過言ではないくらい絶対でした。
師匠のサポートなしでは成功することはできず、師匠から応援される人になる必要がある、と繰り返し言われました。

師匠の意に反する意見や、師匠お気に入りのメンバーの機嫌が損なうことなどがあると、暴言暴力は日常茶飯事でした。男女問わず、体や顔を殴り、人格否定をしながら高圧的に閉じられた空間の中で怒鳴り続けることもよくありました。しかし、褒める時は存分に褒め、メンバーの承認欲求を満たします。
なかには師匠に褒められたいがために動くようなメンバーもいました。

また、師匠は誘導尋問がうまい人でした。師匠が「A」という選択肢しかとることができないような状況を作り上げても、メンバーは「自分でAを選んだ」と思い込みます。

洗脳するにはアメとムチを使うこと、本人が自己決断した、と思い込むことが大事だと言われていますが、まさにその通りでした。

師匠からサポートをもらえなくなったら、成功できない。そう思い込ませた関係性を作ったうえで性的行為を強要するので、断れずに受けるメンバーは多かったです。中には裸の写真を撮られた人もいました。

師匠の恐怖心の植え付け方は、下記のブログに詳しく記載しました。


4.長く所属している人ほど辞めにくい

居場所がここしかない、と思い込む

長く所属している人ほど「居場所がここしかない」と思い込む傾向が強いと思います。事業家集団中心の生活、人間関係も事業家集団関係の人だけだと辞めた後、ひどく孤独を感じ不安な人生になる、と感じると思います。

そう思うのも師匠が辞めていった人がいかに上手くいかずに、落ちぶれているか、と具体例を繰り返し話していました。
辞めたメンバーとの接触は禁忌とされていたので、辞めていった人がどのように過ごしているのか、自分が辞めるまで全く知る由もありませんでした。

また師匠は「一度開いた願望は、二度と消えることはない。途中であきらめたら死ぬ間際で後悔する。死を目前にした人が1番後悔することが、もっとチャレンジすればよかった、と言われている。しんどいと思う時ほど頑張り時」と繰り返し言いました。

いつ辞めようかと悩んでいた頃、同じように辞めたいと感じているメンバーが何人もいましたが、大半の人が「辞めてもうまくいかないのなら、もう少しここにいようかな。もう何年も頑張っているし」と言ってまだ事業家集団で活動しています。

コミュニティに所属していたい欲求

「このチームでは成功はできない、成功しにくい」そう感じているメンバーは私が在籍していた頃、少なからず一定数いました。
それでも、辞めないのはコミュニティに所属していたい欲求を満たすためだと思います。自分が必要とされ、存在意義を感じられる場所から離れるのは、足元にある土台がなくなるような不安を感じるのではないでしょうか。

毎月の自己投資15万を惰性で行うメンバーは多いと思います。このコミュニティに所属するための会費、言っても過言ではありません。
惰性で自己投資15万を行うようになると、リスクとは感じられないので成功するために必死で数字を作ろうとはしなくなります。

まとめ

徐々にチームに慣らしていき、チーム以外の人との交友関係を薄くするように仕向けるのは事業家集団の常套手段です。小さな違和感をつぶして、自己決断を促し、徐々に洗脳していきます。
極端に短い睡眠時間が続き、食事を自己投資で購入したサプリで賄うことも珍しくなかったので、正常な判断能力が欠如していることにも自分では気づけません。

すこしでも違和感を感じたら第三者に相談すること!
今の自分や、身を置いている環境が第三者から見たらどう見えるのか助言してもらい、必要であれば手を借りた方が良いです。

私が辞める頃、数字にこだわるチームとは言えない状況でした。そのため、オンラインサロン上に友人の名前だけ登録して系列やチーム人数を水増し、一部のメンバーが1か月で100万円を超える自己投資の商品を購入することにより、師匠のタイトル達成に貢献するよう師匠から圧力をかけられました。それによって辞めていったメンバーが多くいました。組織としては機能しているとはいいがたい状況です。
いまだに続けているメンバーは成功するため、というよりコミュニティに所属していたい、という気持ちから活動しているのではないかと思います。

これからもニュースで取り上げられていくと思いますが、規模は縮小しながらも一定数を保つのではないかと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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