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蒼天に鳩を放て!-はじめに・概要-

 これは、個人的な探求である。
アメリカの作家 パトリシア・コーンウェルは、十八世紀のロンドンを震撼させた切り裂きジャックの正体を個人的に研究し、その成果を『真相(上・下)』にまとめあげた。
彼女が切り裂きジャックに迫ったのは、単純にその正体を確かめたかったからだろう。
自分の中にある疑問に、解が欲しい。
その点で見れば、私の探究心もパトリシアのそれに近い。


まずは、簡単に自己紹介をする。
私は、橘。青森のかた田舎で祈祷師(巫)をしている。
青森には昔から、カミサマ・イタコと呼ばれる民間巫者(巫)がおり、地元風に呼べば私はカミサマにあたる。
I am カミサマ。
言葉の音だけ拾えば、私はただの危ない人になろう。
しかし、青森という風土におけば。カミサマやイタコはごく当たり前の存在なのだ。
本県出身の怪談師がまとめた『青森の怖い話(高田・鶴乃,2024)』によれば、イタコは死者の魂を呼びその言葉を伝え(口寄せ)、カミサマは自らの身体に神仏を降ろし、神仏の言葉を伝える役割があるという。
そして、「イタコもカミサマも昔から青森の地で人々の悩み事に対し、死者や神仏の言葉を伝え解決してきた。」とのこと。
カミサマの語源は、神様を拝む人。
吉村(2017)は、カミサマを「神々と直接的かつ濃厚な関係を持ち、授かった霊能力を使って人々を救う営みをしている」と説明した。
カミサマとしての私が、誰かの救いになっているかははなはだ疑問である。
それでも、カミサマという立場(役割)が、「神々と直接的かつ濃厚な関係」であることは否定しない。
青森のカミサマやイタコは、昔からそうやって生きてきた。
そして、カミサマやイタコを頼る青森の人々もまた、神仏の気配に包まれて生きている。




 さて、遡ること2022年3月。
光る五芒星を身に刻まれた白狐がやって来た。
その出来事を皮切りに、私はSという霊能者が出版した、結界巡り(五芒星巡り)に関わることになっている。
まさか当時は、この関わりが2024年現在まで続くとは考えもよらない。
誓って言うが、私は自ら望んで五芒星巡りに関わったわけではない。
白狐来訪をきっかけに、五芒星巡りに関係のある生霊やら魔物やらがアポなし訪問をかましてくるため、その度にお客様対応を重ねてきただけなのだ。
既に大半の問題は解決しているが、五芒星巡りに関する諸事案があまりにも多く、かつ強烈だったため、2年以上の歳月がかかってしまった。
 ところで、押しかけ&居座り女房(しかも、全くタイプではない)のような五芒星巡りに、私は1つ大きな疑問を抱いていた。
2022年、私は神様から、五芒星巡りの危険性を警鐘して欲しいと頼まれている。
しかし、基本的に神仏は人間のやること(営み)に口は挟まない。
では、なぜ神様はSの広めた五芒星巡りに警鐘を鳴らすよう求めるのか。

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