「サラブレッドは馬刺しにならない」論争に終止符


はじめに

2024年の改訂版を製作しました。
リンクを貼りますので、そちらも読んで頂けると助かります。

誤解を解きたい

「サラブレッドは馬刺しにならない」
という風に誤解している人も多いだろう。
最初に言ってしまえば、馬刺しにならないというのは真っ赤な嘘である。
なぜ、馬刺しにならないという誤解が生まれたのか?は分からないが、具体的な数字を出して説明していく。
この記事を書いた理由としては、サラブレッドが馬刺しになっているという事実を、今さら隠す必要ってあるのだろうか?と思っているから。実際に、馬刺しを通販で売っている業者のサイトでもサラブレッドを扱っていると公表しているところもあるのだから、あえて記事にするようなことでもないのかもしれないが…。
そして、馬肉にすることを殺処分と呼ぶムーヴメントは間違っているということを表明しておきたい。

馬肉について

「4413トン」
これは、2021年の我が国における馬肉の輸入量。農林水産物輸出入概況という資料に記載されている。

そして、畜産物流通調査によれば、2021年に日本国内で屠殺された馬は1万1364頭。

枝肉重量に換算すれば4551トンが生産量となり、輸入量と国内生産量、この二つを合わせた馬肉の供給量は、約9000トンになる。
馬肉の需要はこれだけあるということだ。

こちらの記事を見ていただきたい。

「Former Owners, Trainer Rescue Grade 1 Winner The Deputy」
というタイトルが付けられているこの記事は、アメリカの肥育場に、サンタアニタダービーを勝ったThe Deputy という馬がいて、それを救いだしたとする記事。
2000年のサンフェリペステークスでは、後のケンタッキーダービー馬、Fusaichi Pegasus(フサイチペガサス)には敗れたものの2着だった馬。こう聞けば日本人でもなんとなく理解出来ると思われる。

アメリカでは、馬肉を食べることは合法だが、馬肉を食べるために馬を屠殺することが違法となっている。
それなのになぜ肥育場があるか?と言えば、肥育業者がアメリカ国内では屠殺出来ない馬を、食肉用に屠殺することが認められているカナダやメキシコへ輸出するためだろう。そして輸入した業者は肉にするために買う訳で、日本はその両国から馬肉を輸入しているという現実がある。

現状、牛肉のようなトレーサビリティシステムが馬肉にはない。だからこそ、サラブレッドが食肉になることを知らない人が多いのではないかと僕は推測する。
ただ、もしトレーサビリティシステムを馬肉にも導入すると、今まで明らかになっていなかったことが公表されることになるので、競馬反対派、動物愛護団体がつけこむ格好の材料になってしまうのは言うまでもない。
競馬は国営の賭博であり、馬券売り上げを落とす材料を作りたくないから、トレーサビリティシステムを導入しないのではないだろうか。と僕は考えている。

2021年に日本国内で屠殺された馬は1万1364頭と紹介したが、この中で、軽種や重種など種別の内訳は発表されていない。

ここからは大体の数字を出して話を進めていくが、輸入された肥育馬が2021年には3068頭。日本における、サラブレッドの生産頭数は年間約7000頭で、重種馬と乗用馬、与那国馬などの在来種を合わせた生産頭数は約3000頭で近年は推移している。
屠殺される頭数にサラブレッドが入っていないと、1万1000頭も屠殺されないというのが現実。なお、昨年(2022年)は1万1193頭が屠殺されている。肥育用に輸入された頭数は3438頭でほぼ変わらない。

繁殖牝馬セールで、やけに不受胎馬や空胎馬を買っていく人がいるなぁ…と思ったら、その人の会社は食肉業者だったなんてのは、昔からあった話で、それを今さらこの記事で語ってもしょうがないのだが、いかんせん核心に触れてきた先達がいる分野ではないので、私が書き記しておく。

ここまで長々と書いてきたが、何を言いたいか?と言えば、日本国内において馬肉の需要はあるわけで、2021年には輸入量、生産量合わせて約9000トン。
これだけの需要があり、屠殺された頭数や国内に輸入された馬の頭数等から計算すれば、一定数のサラブレッド(引退競走馬)が屠殺されていることは事実だということ。

何故、誤解が生まれるのか?

「サラブレッドは馬刺しにならない」とする呟きはTwitterでよく見るが、それは単に事実から目を背けているだけにしか過ぎない。もしくは感情論で全てを語っているか。
と、僕は思っている。

実際に、馬刺しを売っている業者がサラブレッドも扱っていると公表しているところもあるのだから認めれば済む話だ。
各ショッピングサイトで見つけることが出来るはずだ。

そして、競走用以外でサラブレッドを生産する訳がないのだから、必然的に引退馬が肉になるというのは当たり前の話。
稀に、競馬前の馬が使われているとしているがそれだけでは需要を満たせない。

コンビーフになっているとの呟きもよく見るが、読んで字のごとく、コンビーフはビーフ。牛肉100%じゃないとコンビーフではない。コンミートと言いたいなら話は分かる。そして、コンミートになっている馬も確かにいるが、少し思い出してほしい。スーパーの缶詰コーナーでコンミートを見掛けるか?と。コンビーフもそこまで見かけない現状で、コンミートはそこまで見かけないだろう。棚にズラッと並んではいない。要するに、コンミートとしての需要はそれほどないと思われる。
また、コンミートの需要があったとして、それに使われているのは輸入肉であることにも触れたい。例えば、ノザキのコンミートはメキシコ、またはブラジル産の馬肉を使っている。国分のコンミートはアルゼンチン産の馬肉を使っている。要するに、コンミートになる馬はいるけれど、それは日本国内で走っていた競走馬か?と言われたら、可能性は限りなく低いだろう。

まとめ

サラブレッドは肉にならない、と言うのは幻想でしかない。というのがこの記事のまとめ。そして日本が輸入する馬肉にも、サラブレッドは含まれているだろう。そうじゃなければ、The Deputyが肥育場に送られていたのか、説明が付かないから。
日本で、サラブレッドが肉になるのに海外ではなりませんというのはおかしな話。
本当のことを知らないと、本質は見抜けない。私はそう思ってこの記事を作成しました。

追記(2023年6月20日)

この記事を見てくれた人がいたのだが、疑問点がいくつかありそうだった。わざわざ伝えるわけではないが、確かにまとめていない所も多々あるので、多少の説明を加えさせて頂く。
まず、サラブレッドは馬刺しになるとするこの記事。
日本で馬刺しと言えば、熊本県が有名で生産量も1位なのだが、サラブレッドの馬刺しで言うと、福島・福岡・青森・山梨あたりが有名。それは、各都道府県の屠殺頭数データから見ることが出来る。
赤身が特徴で~などと書いてあれば、大体がサラブレッドだろう。確証はないが、状況証拠はある。あとは読んだ人にお任せと言うやつです。

そして、トレーサビリティがないことについて衛生面で不安を口にしていた人もいたが、競走馬として管理されている間は、ドーピングも出来ないくらい(もしドーピングがバレたらレースに出られないから、故意ではなかなかやらない)にしっかりと管理されている。衛生面で大きな問題は起きないだろう。

そして、こんな記事を書いている僕は競馬が好きだ。よく、競馬反対派の意見で「競馬で馬を酷使し、そして肉にする。それは可哀想」という意見を見かけるが、最初から肉になるのが決定しているような牛はどうだ。豚はどうだ。鶏も同じだ。
競馬で使ったあとに、肉になる。それが可哀想なら肉を食べるな。生きているものを食べるな。霞でも食べてろ。と個人的に思っている。
競走馬が引退すれば肉になる、そういう背景はなかなか知られないし、それを知ったところで、個人ではどうすることも出来ない。
馬主が責任を持て、という人も多いが、責任を持って厩舎から出しているのだからそこを責めるのは違うだろうと考えている。

物事は、なるようにしかならない。
視野を広く持って見つめていかないといけないように思います。


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