子犬

農園ではときどき派遣の人を雇うらしい。この前、旭川から来たおばさんはめちゃくちゃお喋りで面白かったけど、「これは投げるほかないね」「これは青すぎる?やめときます?」「あー!やっちゃったー!ごめんなさーい!」といちいち報告してくるから終盤すこしだけうざかった。でもそれをいいことに「前進!」とか言ってこきつかった。彼女も元気よく「はい!」と返事をした。

一服の時間になって、いっしょに休憩所に戻ろうとしたら、親方に「密になるからハウスの中で休んでもらい」と言われた。でももう彼女は休憩所の外で煙草を吸いはじめていたから何も聞いていないふりをした。一服後、ハウスに引き返すと、彼女は「休んでと言われなかった」とずっと収穫していたらしく、「お腹が空いた」と言いはじめて不憫だった。それで、きりの良いところで休憩所に戻り、残っていた水ようかんとせんべいを持ってきて食べさせてあげた。すごく喜んでたし、捨てられた子犬にミルクをあげているみたいで自尊心が高まった、っていう話。おわり。

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