『リア充爆発しろ!』はヒトラーとハイル田野のオマージュである
『リア充爆発しろ!』という曲を知っているだろうか。
『KAZU-k』というボカロPが10年以上前に書いた曲なのだが、ひたすらにリア充への恨みを綴っている。歌詞の内容はいたってシンプルで、いわゆるネタ曲と言って差し支えないだろう。
しかし、最近私はこの曲の歌詞に隠された衝撃の事実に気づいてしまった。それはタイトルに書いた通り、ヒトラー、そしてハイル田野との関係性である。
ヒトラーについて
ヒトラーについては、今更詳しく解説する必要もないだろう。弱小政党であったナチ党を第一党まで押し上げ、ドイツの総統となった人物だ。ユダヤ人への迫害や、優生思想を推し進めたことでも知られる。
ハイル田野、および彼が講義中に行った実験とは
一方、ハイル田野については知らない人が多いと思う。彼は甲南大学の教授で、田野大輔という人なのだが、学生にファシズム体験させるという、一風変わった講義の内容が一時期有名になっていた。今から、その内容を簡単に紹介しよう。
彼は、学生に白いシャツとジーンズを着用させ、自身をドイツ語で総統を意味する「ハイル」と、彼の苗字「田野」を組み合わせた語である「ハイル田野」と呼ぶことを強制させた。これが、国民に「ハイル・ヒトラー」呼ばれていたヒトラーを意識していることは言うまでもない。
学生は講義中に、足並みをそろえて行進し、大声で何度も「ハイル田野!ハイル田野!」と叫ぶことを求められる。そして極めつけに、教室の外に出てベンチでイチャついているカップル(サクラ)に対して、「リア充爆発しろ!リア充爆発しろ!」と声を揃えて罵声を浴びせるのだ。
このファシズムを模した実験の内容は、『ファシズムの教室』という本に詳しく書かれている。ファシズムに伴う連帯感や高揚感、そして1人では絶対できないような行為をさせてしまうところに、この実験のすごさがある。
『リア充爆発しろ!』の歌詞に隠された本当の意味
さて、ハイル田野の説明をしたところで、本題である『リア充爆発しろ!』との関係について述べよう。
これは、『リア充爆発しろ!』のサビの歌詞である。ここで注目してほしいのは、2行目の「別の人種 そうでしょう? そうにきまってる」という部分だ。
一見、リア充という存在を受け入れられない、非リア(リア充じゃない人)の気持ちを表現しているように見える。しかし、よく考えてみると「リア充は別の人種である」という主張の意図がよくわからない。
イチャイチャしているカップルが白人であれ、黒人であれ、アジア人であれ、リア充であることには変わりがないからだ。別の人種だと考えたところで、何のなぐさめにもならない。
しかし、さきほど述べたヒトラーとハイル田野との関係性を考えれば、この謎に答えを出すことができる。
ヒトラーは、アーリア人こそが人類の目指すべき姿だという思想のもと、徹底的にユダヤ人を迫害した。彼らを滅ぼすべき人種だと断定し、国民に一体となって彼らを排除することを促した。そうして起こったのが、かの有名な「水晶の夜」事件である。
この歌も、リア充を別の人種として扱い、排除することを促している点で、ヒトラーの政策とよく似ている。そしてそのお題目となっているのは、田野教授が学生たちに叫ばせたフレーズと同じ「リア充爆発しろ!」だ。
この歌を歌わせることによって、知らず知らずのうちに、リア充に対する怒りを増幅させ、全国の非リアたちに団結し、リア充への迫害を促している。ヒトラーも、自身の宣伝のために映画などのメディアを活用していた。ポップで万人に受け入れられやすい「音楽」にしたのは、彼の戦略を参考にしてのことだろう。
カラオケでこの歌を合唱する非リアたちの姿は、「リア充爆発しろ!」と叫ぶハイル田野の受講生の姿、ひいてはユダヤ人商店を集団で襲った、ヒトラー政権下のドイツ国民の姿と重なる。
一見すると意味不明な「別の人種 そうでしょう? そうにきまってる」という歌詞は、実はこの歌がファシズムの影響を受けていることを示すための、重要なメッセージだったのだ。
この曲が実際に、非リアによるカップルへの迫害を目的としているのかどうかはわからない。
しかし1つだけ言えるのは、この歌が単なる非リアの恨み節ではなく、ファシズムのオマージュを多分に含んだとても高度な文学作品であるということだ。
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