セットオール9-9での戦い方を、禁門の変での久坂玄瑞と来島又兵衛から考えてみた【卓球のための日本史】

卓球の試合では皆、「絶対に勝ちたい」と思って挑みます。

戦もまた、「絶対に勝ちたい」と思って挑みます。

そこには、普遍的な人間の心理があるはずです。

ならば、戦から人の心理を学び、それを卓球に生かすことができるはずです。

ということで、「卓球のための日本史」をやっていきます。

卓球に生かすことがメインなので、史実の追究はしません。

ざっくりとしか説明しない部分もあります。

諸説ある場合は、基本的に「卓球に生かすのに都合の良い説」を採用します。

ここに書いてある歴史が全てだと思わず、軽い気持ちで読んでください。


今回取り上げるのは「禁門の変」です。



禁門の変

1864年、長州藩の兵が、天皇のいる京都御所に突入しようとしていました。

目的は「天皇と直接お話をする」こと。

京都での失地回復を図ります。

誰か一人でも、御所の中にさえ入ればいい。

長州軍は強行突入するも、御所の守りは固く、あえなく撃沈。

あまりに無謀な突入でした。

この出来事から、

セットオール9-9などの重要な局面での戦い方を考えていきます。


状況:攻めるか待つか

【歴史】

前年の「八月十八日の政変」以来、長州藩は失地回復の嘆願書を朝廷に送りますが、取りあってもらえません。

そこで長州藩は、京都の長州藩邸に約2000の兵を向かわせます。

武力を背景とした交渉を始めます。

しかし、それでも朝廷は取りあってくれません。

こうなったらもう、兵を挙げるしかありません。

しかし、相手の戦力は10倍以上。

今攻めるのは無謀です。

実は、長州から約7000の援軍が向かっており、あと10日で京都に到着します。

これが合流すれば、チャンスはある。

その時、御所から連絡が入ります。

「明日までに京都から撤退しないと、ボコりますよー!」

さぁ、攻めるのか、待つのか。


【卓球】

セットオール9-9、試合は最終局面です。

勝負を焦って、無謀なな強打をするとミスをしてしまいます。

勝負にビビり過ぎて、入れるだけになると、相手のボールの回転に負けてミスをしたり、チャンスボールを与えたりして、相手にボコられてしまいます。

こんな極限状態で、点を取らないといけません。

さぁ、攻めるのか、繋ぐのか。


実行:来島又兵衛に押され

【歴史】

攻めるのか、一度撤退するのか。

長州藩の軍議が、幹部約20名で行われます。

慎重論を唱えたのは、若きリーダー、久坂玄瑞です。

「今攻めても勝ち目はありません!
一度撤退して、援軍を待つべきです!」

これに猛烈に異を唱えたのは、経験豊富なスーパーベテラン、来島又兵衛です。

「目の前に敵が居ればやっつける!
それが武士だろうがぁ!!!」

「いやいや、今進軍するのは無謀ですよ!」

「ビビってんじゃねぇ!!!
最近の若いモンは根性が無くて困る!」

「ううう…」

「おい医者坊主!(久坂のこと)
戦争のこともしらないくせに、腰の引けたことを言うな!」

そして、最年長の真木和泉が

「ワシは、来島君に一票。」

と述べ、進軍が決定します。

長州軍は遂に兵を挙げましたが、やはりこの戦いは無謀。

圧倒的な劣勢です。

来島又兵衛は、西郷隆盛率いる軍の狙撃を受け、戦死。

長州軍は総崩れになります。

久坂玄瑞は、無理を悟って自害。

長州は大敗北を喫しました。


【卓球】

試合は最終局面。

この状況でどう戦うのか。

頭の中の来島と久坂が葛藤しています。

ボワワワ〜ン

「なにビビってんだよ!
さっさと突撃しちまえば良いんだよ!」

ピロピロピ〜ン

「焦っちゃダメ!
チャンスが来るまで待たなきゃ!」

最終局面でラリーを続けるのは怖く、どうしても来島案を採用したくなってきます。

しかし、来島案を採用した先に待っているのは「戦死」。

無謀な強打は、決して上手くはいかないのです。


来ると分かっているチャンスを待とう

【歴史】

もし、久坂玄瑞の慎重策が通っていたらどうなっていたでしょう。

実際に勝てたかはともかく、来島又兵衛の積極策よりは、勝つ可能性は高かったと僕は思います。


この久坂玄瑞の「チャンスを待つ」という作戦ですが、ひとつ大事なポイントがあります。

それは、

「チャンスが来ると分かっているかどうか」

です。

久坂案の場合、7000の援軍が来ることは確定しています。

チャンスが来ることは分かっていました。

その時を待って、準備を整えられるのです。

これがもし、

「援軍を要請している」

だけの状態であれば、本当に援軍が来るかは分かりません。

いつチャンスが来るのか分からなければ、準備もできません。

急にチャンスが来たときに、対応できなくなります。


つまり、

「来ると分かっているチャンスを待つ」

のと、

「チャンスが来るのを待つ」

のは、全然違うのです。


【卓球】

卓球も同じく、

「チャンスが来るのを待つ」

だけではいけません。

いつチャンスが来るのか分からなければ、準備もできません。

急にチャンスボールが来たときに、とっさに反応することはなかなか難しいです。

「来ると分かっているチャンスを待つ」

ことが必要です。


そのためには、相手がどこに何を打ってくるのか、把握しておく必要があります。

「フォア前の巻き込みサーブの横上を出すと、クロスにフリックか、浮いたツッツキが来る」

と分かっていれば、フォア側でドライブの準備ができます。

「バック前にストップをすると、クロスにバックツッツキが来る」

と分かっていれば、回り込んで下回転打ちの準備ができます。

一試合を通じて、相手の傾向を覚えておく必要があるわけですね。

こういった把握と準備ができれば、攻撃が上手く行きやすいです。

逆に、把握と準備ができてもいないのに、攻撃をしようなどと考えてはいけないのです。


状況は相手も同じ

【卓球】

さて、ここまでは「攻め方」について考えてきましたが、攻めるだけが卓球ではありません。

ひとつ忘れてはいけないのは、セットオール9-9という状況は相手も同じということ。

つまり、相手の頭の中でも来島と久坂が葛藤しているのです。

ボワワワ〜ン

「なにビビってんだよ!
さっさと突撃しちまえば良いんだよ!」

来島って本当に圧が強いんですよ。

ならば、こちらは朝廷側となり、相手に攻めさせるという作戦もあります。


朝廷は、

「明日までに京都から撤退しないと、ボコりますよー!」

と言って揺さぶることで、長州軍に攻めさせました。

相手を揺さぶって、打ちミスを誘いましょう。

ここで大事になるのも、やはり「把握」です。

相手はどんなボールを打ちミスしやすいのか、覚えておく必要があります。


ツッツキが効くのか、フリックが効くのか。

どちらかが得意でどちらかが苦手な人は多いです。

横回転ツッツキという選択肢もアリかもしれません。


コースも重要です。

バック側は有効か、否か、それとも打ってこないのか。

打ってこないなら、フォアサイドか、フォアミドルか。


相手に無謀な攻撃をさせるための最善手を、あらかじめ試合中に見つけておきましょう。

それでも、ドライブが入ってくる可能性はあるので、ブロックの準備は忘れずに。


勝負は、勝負が始まる前に決まる

朝廷は、長州軍の状況を「把握」し、御所守りを固める「準備」を整えていました。

これが、長州に無謀な攻撃をさせたのです。

戦いが始まる前から、朝廷の勝利はほとんど決まっていました。

同様に、セットオール9-9の時点で、ラリーが始まる前から勝負はほとんど決まっています。

相手のプレーの傾向を把握し、次のラリーの準備ができている方が勝ちます。

これをできる人が、いわゆる「接戦に強い人」です。

接戦で勝てないときに、

「メンタルが弱い」

という結論に達しているうちは、まだ卓球というスポーツを「把握」できていないのです。

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