なぜ、多球練習よりラリーの方が難しいのか、計算しました!【卓球パラドックス】
「多球練習だと入るのに、ラリーになると全然続かない!」
なんていう経験は、皆さんあると思います。
では、一体なぜ、多球練習よりもラリーの方が難しいのでしょうか?
よく言われているのは、
「多球練習は一定のボールが来るのに対して、ラリーはボールがばらつきやすいから。」
という理由です。
それは確かにその通りでしょう。
しかし、実はそれ以前に、「数学」が大きく関わっています!
数学が、
「多球練習よりラリーの方が難しい」
という「錯覚」を生み出していたのです!
ということで、早稲田大学教育学部数学科卒のホシナが、数学における多球練習とラリーの関係を、解説します!
【問題1】
多球練習で、ドライブが10球中5球入る人がいます。
この人は、ラリーでドライブの練習をすると、ラリーが何回続くと見込まれるでしょうか。
(ただし、ラリーの相手は、ブロックを絶対にミスしないものとします。)
答え
ドライブが10球中5球入ったということは、入る確率は50%です。
確率50%の状態でラリーをすると、どれだけ続くでしょうか。
ラリーは、ミスをすれば終わりです。
つまり、1度のラリーでミスをする回数は1です。
確率50%で、ミスが1回ということは、入るのも1回です。
つまり、ラリーで続く回数の見込みは、「1回」となります。
【解説】多球練習とラリーでは、回数の価値が違う
要するに、10球の多球練習で「5球」入るのと、ラリーで「1回」続くのは、確率的に同じなのです。
実際にシミュレーションしてみましょう。
確率50%の人に、50%の確率でランダムに成功したりミスしたりしてもらいます。
多球練習10球とラリーをやってみると、こんな感じになります。
多球練習では、大体は3〜7球成功して、たまに2球や8球成功するような感じになります。
一方ラリーは、ほとんどが0回か1回で終わってしまいます。
ラリーが2回続く確率が25%なので、当然の結果です。
このように、入る確率は同じでも、多球練習とラリーでは、結果として出てくる数字がまるで変わってしまうのです!
これ、すごくギャップを感じますよね?
直感的には、
「多球練習で5球入るから、ラリーでも5回くらい続くだろう。」
とか、
「多球練習よりラリーの方が難しいから、ラリーだと3回くらい続くかな。」
とか思えてしまいます。
そんな直感に反して、実際には1回程度しかラリーが続かないので、ラリーに絶望し、卓球に絶望し、人生に絶望してしまうわけです。
なのでこれを機に、絶望してしまわないために、
「多球練習で10球中5球入るのは、ラリーが1回続くことに等しい」
ということを覚えてください。
「多球5」=「ラリー1」
の公式さえ頭に入っていれば、「ラリーは難しい」というネガティブ思考は、かなり和らぐのではないでしょうか。
同様に、ラリーが2回続くときは、2回入って1回ミスしているので、入る確率は67%になります。
ということは、多球練習では10球中6.7球入るのと同等です。
つまり、
「多球6.7」=「ラリー2」
となります。
ラリーが3回続くときは、入る確率は75%です。
つまり、
「多球7.5」=「ラリー3」
となります。
ラリーが4回続くときは、入る確率は80%です。
つまり、
「多球8」=「ラリー4」
となります。
表にするとこんな感じです。
このように、多球練習とラリーでは、回数の価値が全く違うということを、覚えておいてください。
【問題2】
【問2-1】
多球練習でフォアドライブをしたら、10球中9球入りました。
ここから、ドライブが入る確率を9%以上上げるためには、ドライブが10球中何球入れば良いでしょうか?
【問2-2】
ラリーでドライブの練習をしたら、9回続きました。
ここから、ドライブが入る確率を9%以上上げるためには、ドライブが何回続けば良いでしょうか?
(ただし、ラリーの相手は、ブロックを絶対にミスしないものとします。)
答え
【解2-1】
多球練習で10球中9球入ったということは、確率は90%です。
ここから確率を9%以上上げるということは、確率を99%以上にするということです。
ならば、10球中10球入れば、確率100%となり、条件を満たします。
【解2-2】
ラリーで9回続いたということは、9回入って1回ミスしたということなので、確率は90%です。
ここから確率を9%以上上げるということは、確率を99%以上にするということです。
ならば、ラリーが99回続けば、99回入って1回ミスしたということなので、確率99%となり、条件を満たします。
【解説】90%からは、確率はほとんど上がらない
この問題は、どちらも元々は確率90%で、そこから確率を9%以上上げることを目標にしているということで、条件は全く同じです。
にも関わらず、それを達成する難易度がまるで違います。
多球練習は、10球全部入れればクリアです。
ラリーは、99回も続けなければなりません。
しかも、これでもラリーの方が確率が1%低くなっています。
999回続けても、確率99.9%で、0.1%及びません。
9999回続けても、確率99.99%で、0.01%及びません。
ラリーで100%を達成するには、一生ミスせずラリーをし続けるしかありません。
トイレに行きたくても、お腹が空いても、睡魔に襲われても、入試の開始時間が迫っていても、焼きっぱなしのステーキが焦げ始めていても、大切な人に「私と卓球、どっちが大事なの?」と問われても、決してラリーを止めることは許されないのです。
つまりラリーにおいては、確率が90%まで来ると、もうそれ以上はなかなか確率は上がりません。
ドライブが9回→19回続くようにするのは、かなり大変です。
でも、確率は90%→95%で、たったの5%しか上がりません。
フォア打ちが99回→9999回続くようにするのは、鬼畜の所業です。
でも、確率は99%→99.99%で、たったの0.99%しか上がりません。
ラリーにおける、90%から先の道のりがこんなにも険しいんだということは、覚えておいてください。
結論:「まずは多球練習をして、慣れてきたらラリーで練習する」という順序は、モチベーションを保ちやすくする
なぜ、最初は多球練習をするのでしょうか。
それは、最初は多球練習の方が、上達を数字で実感しやすいからです。
多球練習では、確率が50%になるまで、10球中1球、2球、3球、4球、5球と、数字で段階を追うことができます。
ラリーは、1回続くといきなり確率50%なので、大きくて遠い1段階となります。
なので、上達を感じやすい多球練習で、最初はやっていくわけです。
ではなぜ、慣れてきたらラリーで練習するのでしょうか。
それは、慣れてくればラリーの方が、上達を数字で実感しやすいからです。
多球練習は、確率を80%から90%にするには、10球中8球から9球の1段階で到達します。
ラリーは、4回続けば80%で、9回続けば90%なので、4回、5回、6回、7回、8回、9回と、細かく段階を追うことができます。
なので、慣れてきたらラリーで練習するわけです。
このように、
「最初は多球練習をして、慣れてきたらラリーで練習をする」
という流れは、上達を実感しやすく、モチベーションを保ちやすい流れになっています。
ただ唯一、多球練習からラリーに移るときの数字の違和感が、我々を絶望させるだけなのです。
なので、
「多球5」=「ラリー1」
「多球6.7」=「ラリー2」
「多球7.5」=「ラリー3」
「多球8」=「ラリー4」
という公式を覚えて、絶望を回避し、あらゆる練習を高いモチベーションで取り組み続けられるようになりましょう。
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