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Mさん

 ある女性は精神科医をしている。10年間の仕事をまとめた論文を学会に発表しようと昼間は病院で診察をしながら、執筆作業をしている。彼女は夜になると副業もしていて接客の仕事もしている。大人の店で会員制のBAR、ドリンクがついて会話を楽しむ。お金の為ではない、女性のstyleのひとつだ。

 彼女は魅力的だ。30代中頃で大人の付き合いをする。男性だったら彼女に声をかけられたら嬉しいし、何かしてあげないといけないのかなと思ってしまう。病院の彼女は明るいので人の輪の中にいても目立ってしまう、でも穏やかで優しくて誰とでも楽しく話してくれる。夜の街でどんな接客をするのだろう?

 赤紫のドレスを着ていて、後ろ姿ですぐにわかった。数人の男性に囲まれとても楽しそう。お酒は飲まずいつもと変わらない。1人の男性が席を外したので彼女の隣に座る。僕は初めて店に来たとお酒が好きだと伝えた。彼女はノンタールのタバコを吸い、ミステリアスだった。僕は、お金が好きか?と尋ねた。

 彼女はお金は好きよ、お客さんはお金持ち?と怪しく聞いた。彼女のタバコを扱う手が気になった。負けまいと僕もタバコに火をつける。僕は1日に強いタバコを3本吸う。朝食の前、昼食後、夜リラックスしたい時。彼女との間に沈黙が流れ、煙に酔った。お金の話を忘れて彼女と向き合う時間を楽しみたい。

 彼女にお金持ちだと嘘をついた。医師をしていると話した。その方が興味を持ってもらえると思ったから、医者は医者のことが分からない、僕は彼女と同じミステリアスな男性になれた。そして、彼女の病院を受診、病気かもしれないと偶然を装った。その時彼女は落ち着いていた、夜の仕事には触れていない。

 彼女は僕に偶然ですねと話した。僕はええと答え、嘘の経歴とありもしないクリニックの名前と携帯電話の番号が書かれた名刺を渡した。その後はちゃんと診察をして不眠症だと伝えると導入剤を処方した。彼女の対応に違和感はなく、かなりまともだった。診察後、彼女に渡すプレゼントを購入したくなった。

 彼女は精神科医として患者さんを診察してきた。統合失調症という病気がある。症状に幻聴を聴いたり幻覚を見たりする。彼女も患者さんとどんな幻聴がするか?幻覚を見るか?話をする、とてもミステリアスだと思う。彼女は人間の世界とは別に病気の世界があるからそれを信じてしまうと思うようになった。

 患者さんと話をしていて生きる事を救うことはできないけど、本人が自分でなんとかしないといけない、現実の負担を一緒に背負うことはできる。私も隣にいて荷物をそっと持ってあげるのだ。患者さんの本来の姿を大切にしてあげる。私は貴方を理解してますよと伝えてあげて安心してもらうことは可能だ。

 彼女は週末の金・土曜日と接客を楽しむ。今日は彼とその友人AさんとBさん、僕が彼女と会話を楽しむ。彼は先週末、友人Aさんと乗り鉄をして津和野まで行ったらしい。3人は彼女の常連客で隔週ぐらいで店を訪れる。僕も導入剤を飲み始めて睡眠を取るのが楽になったと伝えた。彼女はずっと笑顔だった。

 新山口駅の在来線出口から駅通りにでると飲食街になっている。大正通り沿いにはキャバクラなどの大人の店が並び彼女が接客する会員制のBARもある。彼は日曜日に友人Bとゴルフに行く約束をしていたので近くのビジネスホテルを予約していた。しかし彼は翌朝、ホテルの部屋で遺体として発見された。

 刑事が店に来た。彼は誰かに殺された、よくこの店で遊んでいる。彼女との間に個人的な付き合いがなかったか?と疑っている。彼女はお客さんとして接していた、土曜の夜から日曜の朝まで友人宅で過ごしたと伝えた。彼女は、刑事の態度を不審に思い僕に相談、僕はこの事件について調べてみるよと話した。

 刑事は、彼女があやしいと感じたとおり本物ではなかった。宗教と関係している様だ。彼女に事実を伝えると安心していた。彼女は、彼が友人Bさんからお金を借りていたみたいと話した。僕は、Bさんに土曜日の夜はどうしていたのか?と聞くと驚いた表情でゴルフに行くのを楽しみにしていたんだと言った。

 彼女はBARに出勤している。開店前に店に寄った、彼女が刑事の素性をどうやって調べたのか尋ねた。僕はキャバクラの女性が刑事の知り合いの客に指名されていたので詳しく聞く事ができたと話した。彼女は、そうとだけ答えた。彼女はいつも眠れるって聞き、調子が悪いと言うと診察してあげると話した。

 月曜日に病院で診察した。彼女は平熱が高いですね。37・3℃以上あります、頭痛がしませんか?と聞いた。僕は時々頭がズキッとします。頭の痛みと不眠症、生活していて辛いでしょう、僕は若い頃からずっとこんな感じですと伝える。彼女は病名は伝えなかったけど経験から安定剤を出しますよと話した。

 友人・AさんはJRの職員だった。彼はAさんを宗教に勧誘していた。Aさんは彼の態度に不満を持っていた。刑事は彼が自殺した事が信じれなかった。彼は宗教団体の中心的な人物だったし、刑事も彼の仲間で教団は大きく成長しようとしていた。刑事だと嘘をつき彼女に近づき彼の身辺を調べるはずだった。

 彼女はAが犯人?て僕に聞く。Aさんは不満を持っていたけど友達だった殺すはずない。刑事・Aさん・Bさんこの3人は犯人じゃない。彼を殺した人は本当にいるのだろうか?それとも警察が話す様に彼は自殺したのかもしれない。ホテルのベッドの側に大量の睡眠薬が置いてあり、室内で争った形跡もない。

 彼女は医者と嘘をついたわよね。彼と知り合いたい為に私に近づいたんじゃない?頭痛や不眠、高熱と症状もあって診察で薬をもらう事も可能。犯人と疑われることもない。彼と知り合いになればホテルの部屋に抵抗なく入り睡眠薬を飲ませることも可能よね。ホテルのスタッフがあなたがいる所を見てるのよ。

 母親が、彼の作る宗教団体にお布施として沢山のお金を騙し取られている。母は全てを捧げようとしていた。ホテルの部屋で彼に事情を話したけど信じて貰えなかった。僕は自分の将来と家族を守る為に彼に睡眠薬を飲ませて殺害したんだと自供した。彼女は警察に心神耗弱の恐れがあるので精神鑑定を訴えた。

 彼女はBARにいる。お客さんは、僕はどうなったの?彼女は精神鑑定の結果、罪は減刑されたみたい、患者さんだったから安心したわ。でもお医者さんだったなんてびっくりした。夜と昼どっちが本来の自分なの?どちらのスタイルも、ファッションの様に彼女を表現している。2人の世界が好きなのと話した。

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