春の息吹と共に房総半島の旅へ
東京から房総半島への少しだけエスケープ
都会の喧騒を抜け出し、春の新緑が息吹く房総半島へと向かう一泊二日の旅。東京駅からバスに揺られること約3時間、私たちの目的地は鴨川市の港町。この地を選んだのは、「日本夕日百選」に選ばれた壮大な夕日と温泉で知られる素敵な宿があったから。その夕日を待ち侘びていましたが、天気はあいにくの雨。温泉宿の魅力を存分に楽しむ計画が少し狂いましたが、それでも雨音を聴きながらの温泉は、また違った風情がありました。
宿で過ごす贅沢な夕べ
温泉宿での夕食は、まるで芸術作品のような豪華なコース料理。海の幸と山の幸を組み合わせたメニューは、その土地の豊かさを感じさせてくれました。特に記憶に残るのは、柔らかくてジューシーな上総牛のステーキと、新鮮な鮑の繊細な味わいです。各料理は繊細に調理され、目にも美しいものでした。部屋に戻り、備え付けられた露天風呂に浸かりながら、雨に煙る海を眺めるのは格別の体験で日々の疲れが癒されました。
夕食のメニューはこちら。どのお料理もとても美味しかったですが、特にデザートのミルクプリンが絶品でした。
吉夢 卯月の夢祥善
食前酒 吉夢おりじなる酒
前菜 柚子蛸・もずく酢・ばい貝・こごみ胡麻和え・
蓬豆腐・湯葉海苔
御造里 海の幸盛り
焼き物 栄螺春菜焼き・柏餅・鰆木の芽田楽焼き・桜ちーず・はじかみ
台の物 上総牛すてーき
替り鉢 びーふしちゅう
強肴 鮑料理
煮物 金目煮付け・青蕗湯葉・桜麩・筍・牛蒡
温物 茶碗蒸し・鱶鰭(ふかひれ)餡
食事 鯛めし 御碗 切り蟹味噌汁
でざーと みるくぷりん・林檎檸檬じゅれ
誕生寺での精神性の探求
翌朝、雨が上がったのを見計らって、チェックアウト後、荷物を少し預って頂き、宿から歩いてすぐの小湊山誕生寺へ訪れました。旅の相棒カメラのLeicaも勿論、一緒。この寺院は誕生寺と言い、日蓮宗の大本山としてその歴史と文化の深さにおいて注目される場所。鎌倉時代、日蓮聖人の直弟子である日家上人によって創建されたとのこと。誕生寺の特徴は、何といってもその由緒ある建築と仏教に関わる諸活動と言われていて、日蓮聖人の生家跡に建てられた後、自然災害により現在の地に移転し、さらに信仰と学問の中心地として栄えたと言います。訪れる人々は、日蓮聖人が幼少期を過ごした場として知られる祖師堂で、その坐像に接することができ、県内最大級の仁王門を潜ると、その厳かな雰囲気が一層深まります。寺内では、写経体験や晨朝法話など、日々の生活から離れて心身ともにリフレッシュできるプログラムも用意されています。 また、誕生寺の訪問者には「願満の鯛」が特に人気。これは、日蓮聖人の誕生を祝って鯛が跳ねたという伝説にちなんだ縁起物で、持ち帰ることで健康や幸運を願うことができるとされているそう。このように誕生寺は、歴史を感じさせる場所でありながら、訪れる者に心の安らぎと希望を与えるスポットとして、多くの人々に愛され続けている日常から解放された心地よい時間を過ごすのにぴったりの場所でした。ご親切なご住職様にもお声掛け頂いたり、御朱印を購入したりと思い出深いひと時になりました。
鴨川市の静かなビーチでのひと時
鴨川市は、温泉と海の幸で知られる観光地。その美しいビーチが夏のシーズンには特に人気を集めています。首都圏からのアクセスの良さも手伝って、毎年海開きと同時に多くの観光客がこの地を訪れているそうで、しかしながら、有名な海水浴場ほど混雑することはなく、ゆったりと海を楽しむことができる穴場スポットとしても知られています。鴨川のビーチは、広々としており、その清潔さと管理の行き届いた環境が魅力的。サーフィンやボディーボードといったマリンスポーツの愛好者にも人気があり、波のコンディションが良い日には多くのサーファーがその波を求めて集まります。鴨川のビーチからは、壮大な日の出も楽しむことができ、早朝に訪れれば、水平線から昇る朝日を見ることができ、それは訪れる人々にとって一生の記憶に残る光景となり、この光景を目当てに、写真愛好家や自然を愛する人々も足を運びます。鴨川では、ビーチ以外にも楽しめる魅力が満載。温泉施設も点在し、海の後は温泉でゆっくり疲れを癒すことができます。また、海の幸に恵まれたこの地では、新鮮な魚介類を堪能できる食事も楽しみの一つ。心も体もリフレッシュできる場所です。
地元のお土産物屋でのひと時と最寄り駅までの散策
旅の一コマとして、地元のお土産物屋で思いがけずUFOキャッチャーに挑戦。。普段はあまり手を出さないゲームですが、旅の自由な雰囲気に流されて挑戦してみました。100円で1回挑戦でき、私たちは3回トライ。残念ながら何も手に入れることはできなかったけれど、結果はともかく、そのプロセスが楽しく、その瞬間瞬間が何とも言えず楽しかったです。このお土産物屋さんは、宿泊先からすぐの場所にあり、新鮮な魚介類や干物、地元の特産品が豊富に揃っていて、まさに観光地ならでは。
旅はこうした小さな発見や意外な楽しみを提供してくれます。
JR安房小湊(あわこみなと)駅まで20分ほど歩いて移動。散策も兼ねて写真を撮りながら。海と港町の景色が広がり、気持ちの良い景色でした。被写体は、海、港、花、建物、人々。港町ならではの光景もたくさんあり、新鮮なスナップタイム。修学旅行生がいて、写真を撮りましょうかと声を掛けてくれたりもしました。学生たちが海辺にたたずむ「あおはる」なシーンはまさにエモーショナルでした。
房総半島の春を感じながら
春の訪れと共に、新緑が息づく房総半島を引き続き、散策。心地よい海風と温かい日差しが海岸線を照らしています。春特有のやわらかな光と、澄んだ空の広がりを写真におさめていきます。房総の海沿いを歩くことは、まるで時間がゆっくりと流れるような感覚に陥り、何げなく選んだこの地にとても癒されました。そしてのどかな無人駅の安房小湊駅に到着。勝浦駅まで移動する為ですが、次の列車まで1時間半の待ち時間があるため、この小さな港町で地元の食堂に足を運ぶことにしました。東京では日々時間に追われ、次から次へと到着する電車に飛び乗る日々。そんな私たちにとって、1時間以上も次の列車を待つなんて、とても珍しい体験ですが、旅の真髄はこうした予期せぬ時間にこそあるのかもしれないと思います。地元の人々が集う小さな食堂で、新鮮な海の幸を味わいながら、窓の外を流れるゆったりとした時間に身を委ね、この地でしか味わえない、新鮮な魚料理に舌鼓を打ちつつ、なんとも言えない幸せを感じたのでした。
昼食をちょうど頃合いの良い時間に食べ終わり、安房小湊駅に到着。ここは無人駅。周囲は静寂に包まれ、時折聞こえる海の音だけが時間の流れを教えてくれます。電車が来るまでのひととき、この小さな駅でカメラを手にスナップ撮影を楽しみました。
やがて、遠くから列車の音が聞こえてきて、ゆっくりと駅に近づくその姿は、まるで時間がゆっくり流れる映画の一コマのよう。
電車に乗り込み、約20分乗車。勝浦駅へと向かいました。窓の外に広がる風景は、移り変わる季節の色を映し出し、列車の旅はまさに移動する絵画のよう。この短い時間が、次なる発見への期待を高まっていきました。
勝浦駅に到着。勝浦は特に海が美しく、サーフィンや海水浴で知られる観光地。駅からすぐの場所には、勝浦タンタンメンで有名な地元の食堂が並び、訪れる人々の胃袋を満たしているそう。お昼を食べたばかりなので次回、訪れた時の楽しみに。朝市も有名だそう。歴史的な魅力も多く、周辺の自然も豊か。勝浦は自然と歴史、そして食が調和する街です。
勝浦駅からほど近い遠見岬(とみさき)神社へ。房総半島に技術と文化をもたらした天冨命をお祀りする古社で、その御由緒ははるか昔、初代天皇・神武天皇の御代まで遡ると言います。四国から房総へと渡られた天冨命は関東全域の発展に寄与され、そして技術の伝承ののちに当地に住まわれたとのこと。江戸時代になると勝浦は、「勝浦三町江戸勝り」と例えられたほど繁栄するに至ります。現在では、レジャーや観光、街全体が雛人形に彩られる『かつうらビッグひな祭り』など、全国から人々が集う地となっていますが、遠見岬神社は『富咲神社』とも呼ばれるパワースポットとも言われているようで、その石段は富咲階段との名をもち、60段ほどあります。その石段を上ると勝浦の漁師町を一望できる絶景が待っていて、その眺めには目を細めます。
ご利益は主に、縁結び・無病息災・子授け。恒例の御朱印も購入し、拝殿右側にあるタブノキが御神木も見事なものでした。
社伝によると、御祭神天冨命は、神武じんむ天皇の勅命を奉じ阿波(現在の徳島県)の開拓を終えた後、東国により良い土地を求め、阿波に住む忌部いんべ一族を率いて海路を黒潮に乗り、紀伊を経て房総半島南端の布良めらの浜に上陸され、祖神である天太玉命あめのふとだまのみことを祀る社を建て、麻や穀かじを植え開拓を進められたとのこと。そして、麻がよく育ったところを総ふさの国(後の上総かずさ・下総しもふさ)、穀の木がよく育ったところを結城郡(現在の茨城県結城市)と名付け、阿波忌部の住んだ所は後に、安房国あわのくにと呼ばれたそうです。 安房の開拓を終えた天冨命は、その後当地においでになり遠見岬とみさき(現在の八幡岬)突端の冨貴島に住まわれ、先住民に農業・漁業・建築等の技術を教えたと言われています。
町をフォトウォーク。帰路、勝浦駅に向かいます。
勝浦駅に到着。特急わかしおに乗り東京へ。
今回の旅はぶらりと立ち寄った場所が多かったことが特徴的でした。旅は、いつも予定通りに行くわけではないけれど、その不確定な要素がかえって新たな発見や体験をもたらしてくれ、旅の記憶をより色濃く、深く刻んでいくように思います。日々の仕事や時間に追われる中で、この小旅行は、癒しと栄養を与えてくれた有意義なものになりました。
ロケーション 千葉県鴨川市・勝浦市
カメラ LIECA Q2
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