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note4 : 香港2011.3.16

【連載小説 4/100】

「旅は双六ゲームのごときものにして、スタートから始まりゴールで終わる一本の道筋でありながら、そこにひとつとして同じシナリオは存在せず、人は縁や運というダイスの目にも似た外力に翻弄される道程を悲喜こもごもの中に味わうのである」

PASSPOT社が提供する「SUGO6」という全く新しい旅行企画の基本コンセプトを僕なりに表現するとこうなる。旅慣れた人、旅好きの人なら共感してもらえると思うが、あまりにも計画的な旅は退屈なものである。
「日常から飛び出して見知らぬ土地を見て歩く」という旅は、その成り立ち自体が冒険や探検の類いであり、他者によって組み立てられた行程をトレースするパッケージ旅行的な商品は旅本来の魅力に逆行しているといっていい。

ひとり旅も同様で、旅する先の歴史や文化に関する入念な事前学習や情報収集という準備はおおいに行うべきだが、そこで得る体験レベルまで踏み込んでまで事前に細かく計画する必要はない。

そう、“行為の計画”ではなく“心の準備”。それさえあれば、旅は「行き当たりばったり」でいいのだ。

実はこのスタンスは“人生”にも通じている。
「旅は双六ゲームのごときものにして…」と定義したが、これを「人生は双六ゲームのごときものにして…」と置き換えてもらえばわたるだろう。僕が今回、PASSPOT社の依頼を受けて「世界一周」の旅に出かけることにしたのは、1月に出会った同社の幹部たちが若き経営者でありながら明確にこのスタンスを有していたからである。

同社を設立した3人はまだ20代半ばの若者だが、学生時代にバックパッカーとして世界一周の旅をしている最中に出会ったのが縁で起業したという。
彼らがプロデュースする旅なら楽しいものに違いないと期待して参加したわけだが、地球を舞台とした壮大な双六ゲームのごとき「SUGO6」は面白いだけでなく極めて洗練されたプロジェクトとなっているので、その仕組みを3つのポイントで簡単に解説しておこう。

(1)ルート設定
「世界一周」ルートは、参加者の希望をもとにPASSPOT社のスタッフが設定する。希望といっても「期間(3ヶ月以上1年以内)」「予算(上限なし)」「志向(歴史、自然、文化など)」に関わる大枠部分の確認があるだけで、具体的な訪問地の希望も一定数に限られ、あとは周遊性やアクセス性を加味して組み立てられたルートが出発2週間前に提示される。
※僕のルートは期間が10ヶ月間、予算は500万円。志向的には世界的な歴史・自然遺産を訪ねるテーマで合計60都市を巡るルートが設定された。

もちろんそれら全ての都市を巡るのではなく、以下に紹介する「dice」によって訪問地は順に決定する。 

(2)「SUGO6」アプリ
既に[note1]で一部の機能を紹介したが、参加者個々に対して「SUGO6」アプリのアカウントが発行される。インターネットでアクセスする管理画面ではルートや予算の執行状況などが確認でき、モバイル版アプリには「check in!」や「message」の他、「secretary」や「friends」、「dice」などのアイコンボタンが配置され、各種サービスを利用できる。
※僕自身、まだ使いこなしていないので各サービス内容は今後順に体験とともにレポートする。

(3)Dice Roll

「世界一周」の旅程を決定する最大のポイントとなるのがモバイル端末上で定期的に行う「Dice Roll」。モバイル画面上の「dice」アプリで振るダイスの出目に応じて次なる訪問地とその後の行動が表示される。「SUGO6」は訪問する都市ごとにじっくりと時間をかけて旅を楽しんでもらうために一都市の滞在日数が最短でも1週間設定されることになっている。
そこで次の移動日から起算して5〜7日前に「Dice Roll」が通知される。ちなみに僕の最初の「Dice Roll」は日本を出る前の3月3日だった。ルートは【東京→ソウル→北京→上海→台北→香港→マニラ→】となっていたが「5」の目が出て以下のメッセージと共に最初の訪問地が香港に決定した。

>>>>> Dice Roll ①/2011.3.3-20:00<<<<<
Tokyo → Hong Kong
【香港 Hong Kong】最初の訪問地・香港。3/23まで2週間滞在し「世界一周」の旅に向けて気持ちの整理をすると同時に「SUGO6」アプリの利用方法を学ぶ。>>>>>SUGO6 Support Desk<<<<<

香港は過去に2回来たことがあるので、出来れば最初のダイスの目は「2」か「4」で、まだ訪れたことがない北京か台北に行きたかったのだが、これが運命をダイスに任せるといってもいい「SUGO6」の旅の面白いところでもある。

実は僕にとって初の海外旅行は1985年の香港だった。
今日で滞在も1週間になるが、世界を夢見ていた若い頃に戻って「気持ちを整理する」のも悪くないものだ。旅人としての半生を自らの中で整理しながら香港の日々を重ねている。

さて、実は今日が2回目の「Dice Roll」デーになっている。
通知は夜に来るので今日中に次の訪問地が決定するはずだ。
今後のルートは【→マニラ→コタキナバル→バリ→ジャカルタ→シンガポール→クアラルンプール】となっているから、何れかの都市へ旅はつながるので、次回以降で報告したい。また、香港滞在の後半についてだが、明日から足を延ばしてマカオへ行くことにした。

「friends」アプリを使うので、旅は新たな展開となりそうだ。

>> to be continued

※この作品はネット小説として2011年3月16日にアップされたものです。



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