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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年12月の記事一覧

098.物語の島へ旅する

2003.12.30 【連載小説98/260】 『儚き島』 徒然に重ねてきたこの手記も、まもなく連載100回を迎える。 文量で見ればかなり分厚い単行本に匹敵するボリュームだし、一気に読み返そうとすれば10時間程度を要するはず。 僕にとっては、ひとつの企画としては、本業の創作活動においても成し遂げたことのない長編作品ということになる。 にもかかわらず、この物語は、未だプロローグを脱していない段階だ。 連載を重ねる本人にして、ストーリーは始まったばかりとの思いが強い。 い

097.未来行きエアライン

2003.12.23 【連載小説97/260】 12月17日、日本のベンチャー企業コペル社とトランスコミッティの間で歴史的な調印が行われた。 島の2周年を機に、ハワイ~トランスアイランド間の飛行艇輸送事業の全てをコペル社にアウトソーシングするというのがその内容だ。 コペル社は、8月に日本からの送客を目的とするトラベルエージェントとしてトランスビジネスに参入していたが、これまでのビジネスは日本~ハワイ間のエアチケット販売と、オアフ島からのトランスアイランド行きオプショナル

096.掌の中にある文明

2003.12.16 【連載小説96/260】 「nesia2」をポケットから取り出す。 メインスイッチをオンにすると画面に中空から見おろしたNEヴィレッジのアニメーション画像が登場する。 NWヴィレッジに住む友人のエドガーが開発した新しいガイドアプリケーションのプロトタイプを最近導入した。 フラッシュプレイヤーで動くこのプログラムがとても楽しいのである。 画面中央に建っているのが僕の暮らす小屋だ。 このアプリケーションは「nesia2」に登録されたパーソナルデータを

095.自然の中にある文明

2003.12.9 【連載小説95/260】 1991年9月、米国アリゾナ州トゥーソンの町から車で1時間ほどの砂漠地で一大社会実験プロジェクトがスタートした。 プロジェクト名は「バイオスフィア2」。 面積が13000平方メートル弱という巨大な温室のごとき建造物の中に「ミニ地球」とでもいうべき生態系準備する。 そこを外部社会と切り離して密閉し、8名の男女が原始共産的な労働生活を重ねながら様々な研究を行う… そう、このプロジェクトが目的とする学問的領域は「エコロジー」。

094.姉妹島構想の目指す場所

2003.12.2 【連載小説94/260】 姉妹都市というインターナショナルな地域間連携関係がある。 例えば僕が生まれ育った日本の神戸という街の姉妹都市は米国のシアトル、フランスのマルセイユ、中国の天津等々。 ハワイと日本間の姉妹都市提携も多い。 ホノルル市は広島市や那覇市。ハワイ群は洲本市や名護市、羽合町などと複数の交流関係を結んでいる。 最近では「えひめ丸」の事故を契機とする愛媛県とハワイ州の姉妹提携調印が話題となった。 また、これも最近知ったことなのだが、ト