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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年10月の記事一覧

089.裸の王様

2003.10.28 【連載小説89/260】 IWC(国際捕鯨委員会)の会議上の話。 商業捕鯨の賛否に関して両陣営が主張を譲らない平行線の議論が続く。 1946年の国際捕鯨条約成立以降、長きにわたって繰り返されてきた二元対立論争の中、傍聴席から発言を求める者がいた。 「この問題の一方の当事者としての発言をさせてください。これはお集まりの人類の皆様と私達一族との地球上における長い交友関係に関わることですから…。まず、先祖代々、我々は捕鯨による個体の終焉を死に至るプロセス

088.ラハイナ・ヌーン

2003.10.21 【連載小説88/260】 ラハイナへ行っていた。 マウイ島の西部、かつては捕鯨で栄えたオールドタウンである。 トランスアイランドへ移住する前の3年間、僕はハワイを拠点に日本との行き来を重ねながら創作を重ねていた。 ハワイは放浪の半生の中で、最も愛着ある第2の故郷といってもいいのだが、その殆どをワイキキのあるオアフ島で過ごしていたから、ネイバーアイランドへは、それぞれ数回ずつしか行ったことがない。 マウイ島に関しては、かつてネイチャー系のドキュメ

087.三線的男女関係

2003.10.14 【連載小説87/260】 女性たちに囲まれて楽しい時間を重ねている。 前回紹介したパイナップル三線に興味を持ったNEヴィレッジの女性数名が一緒に三線をやりたいというので、再び空き缶と流木を集めて一緒に工作を楽しみながら、会話のあれこれに花を咲かせているのだ。 で、日々同好会のように集まる女性の中に沖縄出身者がいたこともあって、話題が琉球文化や民俗史に及んでいる。 三線を作り、爪弾きながら、文化人類学や社会学の勉強会のごとき時間を重ねているわけだ。

086.パイナップル三線

2003.10.7 【連載小説86/260】 島の生活に新たな日課が加わった。 これが予想を遥かに超えてとても楽しい。 起床後と就寝前の1時間ほど、三線を弾いているのだ。 竹富島でそのシンプルかつ深い音色に魅せられて以来、旅先で仲良くなった奈津ちゃんのライヴ演奏や入手できる音源を「nesia」で聞いていたのだが、いよいよ自分でも弾いてみたくなった。 (竹富島での三線や奈津ちゃんとの出会いは第70・71話を) そこでメールで彼女に相談したところ、かんから三線から始めるの