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TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

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2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小…
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2023年8月の記事一覧

080.国家の意味を問う

2003.8.26 【連載小説80/260】 ハイビスカスとヘリコニアの花を目の前にして、一瞬、自分は何処にいるのだろう?と思う。 長旅を終えて、日本からハワイに向かったはずなのに、再び竹富島へ戻ったような錯覚。 何故なら、竹富島でお世話なっていた民宿の庭にも、色鮮やかなこの二種の花が咲き乱れていたからだ。 緯度的にいえば亜熱帯に属する八重山エリアは、風土的にハワイに近い。 咲く花のみならず、陽光や風の匂いもここハワイに近くて当然なのだが、国家という枠組みが不思議な違和

079.言葉溢れる街

2003.8.19 【連載小説79/260】 数日前から、無性に島に帰りたくなっている。 もちろんトランスアイランドへ、だ。 再び東京に戻った。 日本滞在も3ヶ月近くなる。 これだけ長く滞在するのは何年ぶりだろう? 島に帰りたいといっても、それはホームシックのような感覚ではない。 都会や文明生活に疲れたという訳でもない。 今日も旅を楽しんでいるし、このまま続けてもいいのだ。 強いて言うなら、そろそろ島に戻るのが自身の創作生活上、リズム的にいいタイミングではないかという

078.大海を越える夢

2003.8.12 【連載小説78/260】 先週訪れた「なにわの海の時空館」が縁で、ロマン溢れるプロジェクトの存在を知った。 きっかけは館内に展示されていた一艘の葦船。 水質浄化や光合成による二酸化炭素吸収、水中小生物への産卵と生育環境提供…と、淡水系における有機的循環に大きな役割を担うのが葦である。 そして、これを大量に束ねて作る古代のままの船が葦船なのだが、これが単なる展示品ではなかった。 実は、子供たちに21世紀の地球人としての知恵を伝えることを目的に「カムナプ

077.漂流は何処を目指す?

2003.8.5 【連載小説77/260】 300年前の話。 ひとりの商人が船で大阪から江戸を目指したが、途中嵐に遭遇した。 伝兵衛という名のその男は、長い漂流生活の後、ロシアへと辿り着き、記録上はじめての日本人漂着者として彼の地で生涯を閉じた。 江戸時代の漂流物語を題材に、海に潜む危険とそこを目指す航海の持つ意味、さらには海の民の精神力と彼らを待ち受けた過酷な運命に触れることのできるミュージアムイベントに出かけた。 「なにわの海の時空館」の「漂流展」だ。 〜〜〜〜〜