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(3/9)台風直撃の中、新たな旅の仲間を加え、イグチさんとふたたび九州を行く 2017年9月15日(金)-18日(月)

台風が近づくなか福岡に到着し、宮崎の友・イグチさんと合流したわれわれは、天神で角打ちをスタートします。2軒角打ちしたあとは、「西の横綱」と呼ばれる「さきと」を目指しますが、人気店ゆえの予約人数の制限があり、3名までしか入れなかったので、イクヤさんとわたしの二人は、引き続き天神で呑むこととしました
注)2017年9月の記事になります。


◾️天神「とり屋」は客に対してなかなか厳しい

とり屋

夕方6時を過ぎ、金曜の夕方ということもありサラリーマンやOLが街に出始めてきました。台風が九州地方に近づいているものの福岡に接近するのはまだ先ということもあり、みな呑む気満々なのだろうかと嬉しくなります。そうやっているうちに「とり屋」という文字が書かれた青地に白文字の暖簾を発見です。

イクヤさんと同時に「ここだ!」とピンと来て、迷わず入店。

店内には年配のママが一人カウンターに立ち「いらっしゃい」と迎えてくれます。「今日は福岡涼しいですねー」と声をかけると、「そうやねー、ビールでいい?」と瓶ビール(秋味)とコップ二つをわれわれの返答を待たずに目の前に置いてくれます。

御通しの野菜の煮物は、とても味が染みていて美味しくて、「これこれ」とイクヤさんとビールをぐいぐい吞りながら、無意識ににやにやしていまいます。

店内に貼られた西武ライオンズの選手の写真から、どうもママはライオンズファンらしいので、「オレら菊池雄星の地元(岩手)から来たんすよ」とイクヤさんがママに声をかけましたが、「あー、そーなのー」と意外と反応が薄く会話が続きませんでした(苦笑)

「おかあさん、串をテキトーに焼いてもらっていいすかーー?」とイクヤさんが、ライオンズ話をあきらめて注文を飛ばします。

「じゃ、5、6本焼くけんね」と慣れた手付きで串をママが焼き始め、肉が焦げるいい匂いが店内に漂います。ラジカセから聞こえるAMが、いい具合に「遠くに来たんだな」と実感させてくれました。


串焼き

出された串焼き(すべて豚肉)は、ニラや玉ねぎを豚バラで巻いたものやレバー、オーソドックスなネギマなどで、どれもジューシーで特にもニラや玉ねぎが豚の脂を吸って旨さが倍増しています。

「そっち(岩手)のとも違うでしょ」とママが言い、「違います。こういうのもすごくいいすねーーー」と正直に感心しつつビール瓶を空にし、ハイボールをもらいます。

コロッケ、煮卵、白菜漬を追加で注文し、すっかり落ち着き、呑み進めます。
ライオンズファンだということと合わせ、店は47年になるということ、昼も定食を出していること、チャラチャラした若者は店に入れないということなど、ママの話を聞きながらわかってきます。

しかし、随分とはっきりした物言いですが、まったく嫌味のないママの言葉は、やりとりしていてとても面白いものでした。

「へーー、昼も営業してるんすか?」「してるよー」「え、ママが?」「他に誰がやるねん(笑)」

「今来た若い人帰しちゃいましたね」「あーいうチャラチャラしとうのは、店に入れん(笑)」

「いやー、美味しいです」「当たり前よ。不味いもんで商売はできんと(笑)」

いい感じの店内
カウンター席

などなど一例でありますが、こんな感じで軽妙に笑いを誘う会話が続きました。居心地の良さとツマミの旨さとママとの会話にすっかり満足して、小一時間の滞在でお会計を済ませました。

「オレら入れてもらえて良かったな」とイクヤさんが笑い、「イクヤさんが先頭で入ったらどうなってましたかねー」「うるせー」などと言い合いながら、われわれはすっかり上機嫌で夜の天神を「むろや」に向かって歩きました。

◾️ユッキーさんも唸る「むろや」の実力

さて、その「むろや」は地下鉄薬院大通駅からほど近くにありました。イグチさん、ツッチさん、ユッキーさんはすでに到着しており、「いやーーー、すごかったですよーーー」とユッキーさんが「さきと」の感想を興奮気味に話します。

「さきと」の一枚
同じく「さきと」の一枚

いやいやこっちも凄かったんだから、と「とり屋」の話をしつつ、お互いの酒場話で盛り上がっていると、イグチさんが注文した御造りが供されます。


美しい刺し盛り

ツバス、本鮪、縞鯵、太刀魚の四点盛りですが、ツバスと縞鰺は特にぴんぴんで刺身の角が口の中にびしびし当たってくるほどの鮮度です。

太刀魚は皮を炙ってありますが、程よい脂としっとりとした甘みが凝縮されおり、隣に座ったイクヤさんなどは、拳を振り回して「うん! うん!」と声にならない喜びを表現しています。

本鮪もしっとりなめらかな質感で、軽く噛むだけでさくりとろりと優しくほどけていくのです。

さらに追加した鶏肉の風干しが絶妙な食感で、これだけでも「むろや」の実力を垣間見ることができました。後日、飲食店を経営するユッキーさんは、「『さきと』さんももちろん凄かったですが、次に行った『むろや』さんもかなり凄いと思いました」と、その確かな実力について語っていました。

次の店は、福岡の定番「ネッスンドルマ」で燗酒三昧を予定していましたが、勢いづいて構わず、冷えた「鍋島ハーベストムーン」「旭菊クラッシック生酛」「東一」を次々と呑みます。

続いて供されたキビナゴの唐揚げも小魚好きのわたしにとってはたまらぬ一品で、淡白な中にかすかな甘みを伴った苦味が混じり、箸が止まりません。

イグチさんと昔からの付き合いだという美人女将の接客も非常に気持ち良く、清潔な店内と佳酒佳肴とあいまって、まさに福岡の夜を堪能するに外せない名店だと感心させられました。〆に「魔王ハイボール」をいただき(爽やかでとても美味しかったです)、店を後にしました。

◾️西中洲「ネッスンドルマ」を再訪

さてさて、「ネッスンドルマ」は前回の旅でもお世話になった会員制の日本酒バーです。ちなみにわたしは2016年にも訪れているので3回目。

この日は、美人女将・芝さんと「割烹着かおる」改め「割烹着ひよこ」さんとバイト3日目だという女性3人で迎えてくれました。

当然この店ではおまかせの燗酒。しかも、「玉櫻」「辨天娘」「日置桜 強力米にごり」「天穏」といった酒を中心に供され、ぬる・熱の変幻自在の燗酒が次々と盃に注がれるものだから、ノンストップで燗酒ワールドに浸って愉しむことになります。

魅惑のネッスンドルマ

とはいえ、わたしも朝から呑みっ放しです。このへんから意識と記憶が朦朧としてきました。早起きして岩手から福岡まで移動してきた疲れも少しあったのかもしれません。徐々に酒を吞むペースが落ちました。

が、そんな様子でも旨い燗酒が目の前に現れると、ついつい盃を空けてしまう意地汚いのがわたしです。

「いかんいかん、ペースが早すぎる。てか、もう出来上がってる」と思いつつ自制しようと思うも、他の4人もすいすいと盃を空けて行くので「なんのなんの、負けてはおられん」と変な意地まで張り出してくいくいと吞りつづけたのでした。

そうやっているとイグチさんが、「よし、じゃ夜も遅いし、きっちり豚足スープで〆ましょう!」と言い出すではありませんか。
おお、なんといいタイミング、このままでは潰れてしまうところだったところでしたよ、と少し安堵していると「あら、いいですね、『珉珉』ですか。だったら塩焼きそばも食べなきゃ」と芝さんが反応し、「豚足スープ&塩焼きそば」方面で〆るということになり、イグチさん曰く“魔窟”の「ネッスンドルマ」を後にすることになったのです。

で、わたしはというと、ツッチさんが芝さんのいい香りのする名刺をちゃっかり前回に引き続きおねだりしていたことを見逃してはいませんでした。少し羨ましいと思ったのですが、それは実は内緒です(笑) 

◾️「珉珉」の豚足スープの迫力に圧倒される

さて、イグチさんが最後の店として選んだ「珉珉」は、中洲川端駅から徒歩数分、中洲のど真ん中にある古き良き昭和が薫る、雰囲気たっぷりの店でした。

愛すべき名店

二階に通され、イグチさんがイキイキした表情で、ビールと塩焼きそばと豚足スープを注文します。しかし、どこまで酒豪なんでしょう、この愛すべき九州男児は。

ビールを吞みながら待っていて出てきた塩焼きそばが、あっさりした味なのですが、しっかりコクがあり物凄く旨くてびっくりしました。もやしがたっぷり入っていて、ぜんぜん軽くて一気に食べ進められます。あまりの美味しさに、瞬殺で塩焼きそばは目の前から姿を消しました。

が、名物豚足スープに少し時間がかかっているようです。少し間が空きました。
そうこうしているうちに目の前に座ったイクヤさんの目が、閉じたり開いたり体が前後左右に揺れ出したりと、半分スリープモードに入り出しています。

それをそっとしておいてビールをすすりながら待つと、どどんと出てきたのが大迫力の豚足スープ。しかも大きな丼に3杯。


大迫力豚足スープ

「・・・あの、イグチさん、3つっすか、、、?」
「えへへへへ、やっぱり足りませんでしたかね?」
「いやあ、そういうことじゃあなくって(苦笑)、、、しかし、丼でかいすねぇ、、、」
「まあ、食べてみてくださいよ」

などと話しつつ、そして迫力に押されながらひと口飲んだ豚足スープは、まさに絶品中の絶品でした。

とろとろの豚足の旨味が、じゅわりじゅわりとスープに染み出していて、それでいてまったくくどくなく、どんどん飲めてしまうのです。腹はすでにぱんぱんなのですが、豚足スープのコクと塩っ気が呼び水になり、ビールが美味しくてぐびぐびモードになりました。

スリープモードから目覚めたイクヤさんはというと、「うめー! スープうめー! ほれ、ツッチさん豚足どんどん喰え! ほれ! ほれ! ほれほれ!! 喰え喰え喰えーーーーー!!」とツッチさんに謎の豚足攻撃をしかけつつスープをすするという奇行に出て、「いやー、もう苦しいって!」というツッチさんの叫びも虚しく、豚足攻撃が繰り広げられる様をイグチさん、ユッキーさん、わたしが優しく笑いながら眺める平和な中洲の夜を、名店「珉珉」で堪能したのでした。

◾️でも〆はきっちり「一竜」の博多ラーメン

〆を済ませたわれわれは、何時だかもわからずにホテルに戻ろうと歩き出したのですが、イクヤさんの豚骨攻撃を散々浴びたツッチさんが、〆を終えたにも関わらず「『一蘭』の本店に行かないと悔いが残る!」と言い出したではないですか。
それを聞いたイクヤさんは、「あ、じゃ、オレは眠いからホテル戻るねーー」と一人ホテルへ戻っていきました。

残ったわれわれはどうしようかと顔を見合わせると、「あ、じゃ自分はツッチさんと一緒に行きます」とユッキーさん。

ユッキーさん、当初のわたしの不安をよそに、ムダに弾けることなくにこやかに呑んで喰っています。わたしは、平静平穏なのはこの日までなのだろうか、と勘繰って見ていました。

「どうします?」とイグチさんがわたしを見るので、「んじゃあ、一緒にいきましょーかーー」と歩き出しましたが、どうにもこうにも「一蘭本店」までの距離もあって、気乗りしませんでした。

その雰囲気を察したのかイグチさんは「じゃ、われわれは『一竜』にしときましょうか」とホテルのすぐ側のラーメン店を提案してくれ、中洲の夜の闇の向こうに和気あいあいと消えていくツッチさんとユッキーさんを眺めつつ、われわれもホテルのすぐ近くにある「中洲屋台ラーメン 一竜」の暖簾をくぐります。

さすがにもうビールは入らないので、博多ラーメン一択で再度の〆に入ると、これがまあ、するするずるずる食べられてしまうのが恐ろしいところです。

ホント、よく喰います

まったく臭みのない豚骨スープは、すすり始めると止まらなくなり、結局完食のわたしでした(イグチさんは替え玉もしていました)。

喰った喰ったと、ぽこんと膨れた腹をさすりながらイグチさんと「東横イン 西中洲」に戻ります。わたしはというと、部屋に着くなりどすんとベッドに倒れ込みました。

眠りに落ちる前に一瞬、「明日の朝、ちゃんと起きれるかなーー」と思ったのですが、そんな不安も酔いと満腹感から来る睡魔がすぐに消してしまったのでした。

(4/9へつづきます。)

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