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【栃木県足利市】足利「ココ・ファーム・ワイナリー」を目指して我は行く 2019年10月29日〜30日

足利市へ旅をした2019年10月。お目当ては「ココ・ファーム・ワイナリー」でした。知的障がいを持った方が育てた葡萄で醸されたワインをいただきにワイナリーまで足を伸ばしたのでした。
注)2019年10月の記事になります。


⚪︎「ココ・ファーム・ワイナリー」のあゆみ

秋晴れの中、わたしは栃木県を目指していました。目的地は、栃木県宇都宮市にある「ココ・ファーム・ワイナリー」でした。

まず、東北新幹線で上野駅を目指し、上野から栃木県に戻って小山駅へ、小山駅から足利駅と電車乗り継いで、おおむね5時間の電車旅となりました。距離の割には時間のかかる片道移動でした。

さて、「ココ・ファーム・ワイナリー」について少し触れると、次のとおりとなります。

昭和33年、ワイナリーが作られるきっかけとなった葡萄畑が、足利市の北にある山の斜面に開かれました。

葡萄畑は、中学校の特殊学級の教員と、その学級の生徒たちが中心になって作業が進められ、2年の歳月をかけて勾配38度という急傾斜の山に3ヘクタールという広さで開かれました。以後、マスカット・ベリーAをはじめ、葡萄を栽培し、行政の補助を受けずに学園施設の整備も行ってきたとのことです。

昭和44年に設立された「こころみ学園」は、成人対象の知的障がい者更生施設として認可を得て、以後、葡萄と椎茸の栽培を中心に、農作業を通じた園生のいきがいづくりを目指すことを方針として、施設運営がなされてきました。

その後、「こころみ学園」の方針に賛同する保護者たちの出資で、「有限会社ココ・ファーム・ワイナリー」が設置されることになります。

平成の時代に入ると、醸されるワインの質は徐々に高く評価されるようになり、平成25年には「足利呱呱和飲」がJAL国際線のファーストクラスラウンジで提供されるなど(このワインは本当に美味しいのです。大好きでした)、ブランド価値を全国的なものとして確立させていたのでした。

そのあたりの概要については、公式ウェブサイトを引用しておきます。

1950年代、栃木県足利市の特殊学級の中学生たちとその担任教師(川田昇)によって山の急斜面に葡萄畑が開墾されました。

1969年、この葡萄畑の麓で、指定障害者支援施設こころみ学園(社会福祉法人こころみる会運営)がスタートしました。 知的障害を持った人たちと葡萄畑でワインをつくることを考えましたが、社会福祉法人には葡萄をワインにするための果実酒製造免許が下付されないため、1980年、一般の事業所である有限会社が、こころみ学園園長 川田昇の考えに賛同する父兄たちにより設立されました。1984年、この有限会社が果実酒製造免許をいただきました。有限会社ココ・ファーム・ワイナリーは、知的障害を持った人たちをはじめ、みんながいきいきと力を発揮できるようにつくられた会社です。

出典「ココ・ファーム・ワイナリー」公式ウェブサイト

という非常に興味深いワイナリーが栃木県足利市にあると知って、少し移動に時間がかかりますが、「ココ・ファーム・ワイナリー」を目指したわけです。

⚪︎「ソヲスカツ丼」発祥の酒場へ行く

美しい夕闇

足利駅に到着しますと、すでに夕暮れどきになっていました。駅から少し歩いて、あの森高千里さんの歌で有名になった渡瀬川を初めて見ました。夕陽が綺麗で、なんだか感傷的になりつつ駅付近を少し散策し、出迎えてくれることになっていた友人を待ちました。

友人は、盛岡市に住んでいたのですが、春に会社の都合で宇都宮市に転勤となっていました。「足利に行くんだけど」とメールをしたら、「せっかくなんで合流しましょう」ということになったのでした。

その、出迎えてくれるはずだった友人は、仕事で少し到着が遅れていまいまして、予定より遅れて姿を現した彼を、わたしが足利駅で出迎える形になりました。

えへへ、すみません遅れちゃって、といいながら現れた友人に「ここ、面白いっすよ」と連れて行かれたのは、“ソオスカツ丼発祥店”だという「まるや」という居酒屋です。

パンチのある「まるや」の外観

足利駅の西側、徒歩数分といったところにその店はありましたが、なかなかの外見に一瞬ひるみますが、意を決して店に入ります。

「ソオスカツ丼って、いろんなとこで発祥っていってるよね、諸説あるよね。てか、ソヲス? ソース? どっち??」
「諸説あります。福井とか東京とか、そしてここ足利とか、、、」
「ふうん、そうなんだ。あ、盛岡の『東家』にもソースカツ丼があるなあ。もちろん発祥とは全然言ってないけど 笑」
「ま、ともあれ、ソオスでもソースでもいいんで、カツ丼を食べてみましょうよ」 

友人とそんな風に話しながら店に入ってみると、意外と落ち着く店内の座敷にゆったりとくつろぎながら、友人と生ビールで乾杯し、刺し盛りやら串焼きやらを食べつつ近況報告をしました。

派手派手な外観とは裏腹に、といいきたいところですが、まあまあ店内も凄いことになっています。気になる方はリンクの食べログから内観写真をごらんください。

で、肝心のソヲスカツ丼ですが、残念ながら写真は残っていません。とはいえ、さすが発祥を名乗るだけあって、B級にとどまらないしっかりとした味のカツ丼でした。

客が引けてくると、関西弁の愉快なマスターが泡盛を勧めてくれまして、それをちびちび呑りながら、テレビに流れる日本シリーズ第六戦を眺めました。

さて、足利の夜は「すんません、明日早いんで帰ります」と友人が終電前に帰ってしまったので、わたしもホテルに戻ってすぐに寝ました。5時間の電車旅がけっこう背中と腰に来ていたので、早めに横になりたかったのです。

⚪︎「ココ・ファーム・ワイナリー」へ

足利駅からバスでやってきました

翌朝、ホテルの朝食を済ませ、足利駅前から出ているバスに乗って「ココ・ファーム・ワイナリー」を目指しました。

で、到着したワイナリーのすぐそばの葡萄畑が、なんともまあ見事。そして本当に本当の急斜面で、こんな環境で作業しているのかと思うと、本当に驚きなのです。

38度の急斜面です

しかもです、平均斜度38度という地形条件もすごいですが、この葡萄畑が当時の中学校の特殊学級の担任教師とその生徒たちの手によって切り拓かれ、一切の除草剤や車両・大型器具を使わず、100%手作業で葡萄栽培をしているのだから驚きです。

葡萄畑を仰ぎ見ますと、「カンカンカン」と頂の方から金属音が鳴るではないですか。ワイナリーの方に何の音かと尋ねたところ、「葡萄をついばみにきた鳥を追い払うため、こころみ学園の生徒がずっと鳴らしているんですよ」とのことでした。なるほど、大事な仕事です。

さて、ワイナリーの開店直後に到着し、10時オープンのショップへ進みます。ショップ内にはすでに観光客が訪れており(自家用車での来園が圧倒的に多いようでした)、その混雑を抜けてテイスティングコーナーへ進みます。

テイスティング

5つの銘柄のワインにちょっとしたツマミがついて1,500円という破格ぶりです。白「農民ドライ」だ、赤「農民ロッソ」だ、ロゼ「こころぜ」だ、といただきながら、ほろ酔い気分になっていきます。

続いて、テイスティングを済ませ、11時オープンのカフェの行列に並びます。ええと、なんといいましょうか、男一人客はわたしだけで、あとは男女カップルや女性だけの団体などが多く、なんだか気恥ずかしいし肩身が狭い状況でした。

贅沢なシチュエーション

気を利かせたスタッフが、一人でもくつろげそうなテラス席に通してくれ、まずはスパークリングワイン「北ののぼ」で一息です。葡萄畑を眺めながらの一杯はこれまた格別で、なんとも豊かな気持ちになれます。

足利マール牛

せっかく足利まで来たのだからということで、地元の長谷川農場で育てられる「足利マール牛」のステーキをいただきました。

この牛、「ココ・ファーム・ワイナリー」がワイン醸造を行う際に出た葡萄の果皮や種を発酵させ、それを飼料として与えられるSDGsの取組の中で生まれたとのことです。

そしてそして、この赤身肉がジューシーでとても美味しく、ワインが進みます。「北ののぼ」を呑み干し、「農民ロッソ」をもらって肉を食べすすめます。

テラス席は秋風がそよそよと流れ、頬を撫でてくれ、軽く酔った体になんとも心地良いものでした。

例の「カンカンカン」という音も耳に慣れると気にならなくなり、こうやって学園の生徒たちが営みを続けているのかと想像すると、優しく豊かな気持ちになることができました。

カフェが混んできたので食事を終わらせ、ワイナリーを後にしました。またまたバスで足利駅まで戻り、近くの「足利学校」を見物したのち、盛岡へ戻りました。

時間に余裕のない足利滞在でしたが、心も体も十分に満たされ、「また、ぜひ足利へ」と思わされた旅になりました。

(おわり)

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