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NEWTONとの旅

科学雑誌『Newton』とのコラボレーションでツアーを企画した。最初は中国の三峡クルーズの旅であった。94年に着工し、2020年に長江の本流がせき止められる計画になっていた。ダムが完成する前に、長江沿いに住む100万人以上の住民を別の場所に移転させる必要がある巨大プロジェクトだ。『Newton』誌は「帰らざる三峡」という特集テーマで、CGを利用した完成後の光景や、発電のシステムなどをビジュアルに解説する内容であった。出版社によって、新聞の全国版に「帰らざる三峡」の全面広告が行われた。その広告写真の中に小さく「クルーズの旅を実施します。」という文字を掲載しただけで、新聞発売日に200人以上の問い合わせと予約があった。260人乗りのクルーズ船のチャーターはすぐに満席となつた。私は初回の旅に同行し、その後もこのツアーは人気の企画となりチャーターを何回も繰り返すことになった。

翌年は、編集部との会議でNASAを訪れるツアーを企画しよう、ということになった。全米惑星協会という団体に協力していただき、有人飛行の基地であるヒューストンのNASAと、無人探査基地のあるパサティナ(ロサンゼルス郊外)を訪れるツアーを企画した。現地を視察のために訪れたヒューストンでは実際に宇宙に行った経験のある宇宙飛行士に訓練施設の案内をしていただいた。パサディナのNASAはCalTec(カリフォルニア工科大学)の中にある特殊な施設で、セキュリティ検査を通ると大きなスクリーンで惑星の動きを映写する映画にでてくるような部屋を見学し、研究室では当時のテーマであった木星探査のローバー(惑星を走るリモート操作の小さな車)の遠隔操作のシュミレーション実験を行っていた。

せっかく、宇宙をテーマに学ぶ企画なので、次世代の社会を担う学生を対象にしたツアーにしようということになった。私が添乗した最初のツアーは小学生から高校生まで幅広い年齢の子どもが参加してくれた。小学生には少々難しい説明になったが、後日談としてこの旅がきっかけとなってアメリカの大学に留学した子がいると聞いた。
旅は、その体験が人生の大きな転機となると実感した経験である。

NASAツアーの様子
NASAツアーのパンフレット
 三峡クルーズパンフレット
三峡クルーズ船内のプレゼンテーションの様子

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