ZOZO(3092)23年第1四半期決算


先日、ZOZO(3092)の大株主である創業者の前澤友作さんが持株を売却し、持株比率が10%を切ったというニュースが流れました。
前澤さんは6月にも持株の一部を処分しており、今後のZOZO(3092)はどうなっていくのか?
今回は、7月29日に発表された23年第1四半期決算を元に企業分析をしていきます。


まず、前提として

ZOZO(3092)は2012年に上場、創業者は前澤友作さんでZホールディングス中間に次ぐ第2位の大株主です。
2019年に創業者である前澤さんは社長を退任、現在までNTTデータ出身の澤田宏太郎氏が社長となっています。
前澤氏が0→1を作る天才だとすれば、澤田氏は1→2→3と大きくしていくタイプの経営者であると認識しています。
そういう意味で、澤田氏にバトンタッチしたZOZOは、安定成長の時期に入ったとも言えそうです。

ZOZOの事業

ZOZO(3092)の事業内容は「EC事業」の単一セグメントですが、ZOZOTOWN事業、PayPayモール事業、BtoB事業、その他(先4つに属さないもの)の5つで構成されています。
ZOZOが重視する経営目標は、「ECから生み出される商品取扱高」です。
なぜなら、ここが伸びるとZOZOが受け取る手数料が伸び、それすなわちZOZOの売上につながるからです。
なので、まずはここが伸びているか確認します。

商品取扱高を四半期決算ごとに見る場合、前年同期比で比べます。
ZOZOが取り扱っているのは衣服ですので、単価の高い冬(1-3月)と単価が落ちる夏(4-6月)で比べるのではなく、同じ4-6月で比べて伸びているかどうか、です。

23年第1四半期決算は?

今回の決算説明資料(23年第1四半期決算説明資料P3)のハイライトによると、商品取扱高は前年同期比9.5%増なので、これは好感できます。
また、「集客施策・販売施策共に効果を発揮し、サイト訪問者数・購入状況が良好に推移」(同P3)とあり、22年下期に大きく広告宣伝費をかけた効果が発揮され、新規顧客の獲得、その後のリピートに繋がったことも影響しています。

良かった点

・営業利益率(対商品取扱高) 12.3% (前年同期実績 11.8%) の改善(決算説明資料P8)

利益改善要因として、
・商品取扱高に対して、利益率の高いビジネス構成比上昇に伴う粗利率の改善
・物流拠点内の作業効率改善等による物流関連比率の低減
・出荷単価上昇に伴う荷造運賃率の低減

特に好感されるのは、1つ目の「粗利率の高いビジネスの構成比率上昇」です。
これは今後も繰り返し業績に寄与することになる利益率向上理由なので、良いと考えます。

悪かった点

・ポイント等を利用した販促施策の増加

販売促進のために、ポイント利用を勧めていることで 顧客がポイントを使うのでその分利益が減ってしまいます。
そこに訴求しなければ商品が売れない、ということであれば 今回だけの問題ではなく、今後への懸念点にもなります。

・物流拠点内の作業効率改善等による物流関連費率の低減

費用が減っているので良しとされそうですが、物流関連費率の定価にはカラクリがあります。
上海ロックダウンにより中国から商品が入って来なかったことにより、物流倉庫の人件費が減ったためです。
中国からの商品遅延による取扱高への影響は大きくないものの、外部要因による一時的なコスト減なので、今後は増える可能性が高いです。

・競合の脅威(機関投資家向け質疑応答)

SHEINという中国発のECがものすごく伸びています。
「中長期的な観点でそれなりの脅威になり得る」とZOZO自身も警戒しています。

まとめ

以上を踏まえての決算印象をまとめます。
22年下期の大幅プロモーション(広告宣伝)による新規顧客の増加、オフラインでも人流の戻りなども交換し、「服を買う場所
」としてZOZOが認知されていることで、商品取扱高・売上・利益の伸びとなりました。
「オフラインでの人流の戻り」が理由になっているのは、家に居るなら新しい服はいらないけれど外出する機会が増えればそのための服を買う、という理由ができるためです。
商品取扱高、アクティブ会員数、出店ブランド数なども伸びており、物流拠点への設備投資も引き続き堅調です。

・来期(23年秋頃)に物流拠点が本格稼働する予定となっており、それに向けて今期は設備や従業員の準備をしなければならないこと、
・その新拠点ができるまでは 在庫数が多くなればなるほど倉庫内業務は煩雑化すること、現在、システムのインフラ部分のリニューアルに取り組んでおり、部分的に二重投資になっている状態が今期は続く見通しであること
・プロモーション費用

上記3つの要因で、商品取扱高に対する営業利益率10%の水準を守りながら成長していく、というのが今期の動きになります。

それを鑑みると、第1四半期は無難に通過した、という印象です。

今後のポイント


今後は、昨年同様、下期に発生するであろう大型プロモーションの効果(機関投資家向け質疑応答)がどれくらい業績に寄与してくるのか、アクティブ会員の購入単価・年間購入金額などが増えていくかどうか、などは注目していきたいポイントです。


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