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[ベトナム/フエ]洞窟ツアーに行くはずが4時間ジャングルの中を歩かされた話

最近、ベトナムは洞窟大国であるという話をテレビで見た。
あー僕もベトナムの洞窟に行く"はず"だったなということを思い出した。

これは2018年5月、ベトナムのフエでのお話。

ベトナム中部の街・フエに滞在していた僕は、現地の旅行会社をいくつも回り何か面白そうな日帰りツアーが無いかを探し歩いていた。
そうしたところ、各社で洞窟を巡るツアーが数多く組まれていることに気づき、冒険心がくすぐられたので、早速、一日で二つの洞窟を巡るというツアーを予約した。

ツアー当日、気合い十分の僕は、朝6時半という早い時間帯の出発であったにも関わらずその30分前には集合場所に到着し、まだ時間もあったのでパジャマ姿のお母さんが鍋一つで開店していた路上のお店で朝食をとった。

朝のブン(ベトナム風うどん)は身体に染み渡る。

ゆっくりとブンを味わっていたらあっという間に出発予定時刻となったのだが、おかしなことに、待てど暮らせどお迎えの車が来ない。
何事も時間通りに事が運ぶと思ってしまうのは平和ボケしすぎているなと考え、1時間ほどその場で待ってみたのだが(よく待った方だ。)、やはりお迎えの車が来る気配すらない。

さすがに異常を感じて前日にツアーを申し込んだ旅行会社に駆け込んでみたところ、どうやら僕のお迎えを忘れてツアーバスは既に洞窟に向けて出発してしまったとのことらしい。
…え!?
代わりに今からベトナム国立公園のジャングルをトレッキングするツアーが出発するからそっちに参加してみてくれよ、なんて言われたが、いやいや、僕は洞窟に行きたかったんだ!と心の中で叫んだ。

…とはいえ、ただ返金をしてもらって予定もなく一日を過ごすのも癪だったので、旅行会社からの提案通りトレッキングツアーに向けて出発するミニバンに渋々乗り込んだ。

最初は、車内での「今からジャングルに行くぜ!いぇーい!」という空気に対しても、「こっちは急に言われたから半袖短パンクロックスだぞ、大丈夫なのか!?」と斜に構えていた僕だったが、目的地に近づくにつれ車窓から見えてくる鬱蒼とした森林の様子に、悔しいかな、若干テンションが上がってしまった。

その後、山の頂上に到着し、今からこのジャングルの中を歩くよと見せられ、

いざ探検開始。

川を越え

崖を下り

歩いて歩いてクタクタになったところで、参加者皆で滝つぼの近くで配布されたお弁当を食べた。

あれ、なんか楽しいぞ。

4時間近くも一緒に歩いているものだから他の皆ともだんだん打ち解けてきて、話をしながらのトレッキングに苦しさは微塵も感じなかった。

クライマックスではいくら見下ろしても下の見えない巨大な滝のてっぺんに到着し、その迫力に圧倒された。

もう自分でも気づいていた、僕は何だかんだでジャングルアドベンチャーを満喫してしまっていた。

ただその一方で「置いていくなんてひどいよな、洞窟見たかったよな」という気持ちもいつまでも心の奥底にこびり付いていて、その頑固さにはほとほと呆れ返った。

よく「雄大な自然を見ていたら自分の悩みや不満がちっぽけなものに思えた」なんてことを言う人がいるが、これだけスケールの大きな景色を見てもまだ不満を消すことのできない小さな自分にも嫌気が差した。

だが、それと同時に、綺麗な景色に誤魔化されることなくきちんと心の中に居座り続けてくれた自分の"みみっちさ"が、何だか愛おしくも思えてきた。
雄大な自然を見てもちっぽけなものに思えない悩みや不満があるのなら、きっとそれは真剣に向き合うべき大切な感情なのだろう。

そう考えると、冒頭の話に戻るが、数年経ってもテレビを見ながら「僕も洞窟に行くはずだったのにな」なんて恨み節が口をついて出る僕の器の小ささは、これから一生付き合っていくこととなる愛すべき自分の一部なのかもしれない。

2023.12.5

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