この世にアイは存在しますか
『この世にアイは存在しません』
冒頭の一文から既に世界に惹き込まれていた。
シリアで生まれた主人公のアイは、裕福な夫婦の養子として大切に育てられる。周りから見れば恵まれた環境であり幸せそのものだ。けれどアイは自らの身に舞い込んだ幸運を抱きしめることができない。
なぜ自分が選ばれたのだろう
なぜ他の人は選ばれなかったのだろう
選ばれたというより『選ばれてしまった』後悔の念に縛られて生きている。選ばれなかった人たちの『不幸』な現実をつきつけられる度、アイは自分を責めるのだ。