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4.宮城県(日帰り)―2024年4月

ご縁があり、4月から新しい仕事に就いた。これまでの経歴とは全く異なる仕事である。
未経験の仕事なんだし、頑張らなくっちゃ。いやいや、今回は頑張り過ぎないようにしないと・・・そんな風に、行ったり来たり。考えすぎてしまう損な性格だ。

とは言え、心に少し余裕がでてきた。旅をしたいという気持ちも湧いてきた。

よし、今回こそは関東を飛び出そう。諸々の都合を考えるとお泊りは難しそうなので、今回も日帰りだ。東京駅から新幹線1本で行けて、元気が貰えそうなところが良いな。
そんな風に考えていたら、伊達政宗の姿が不意に頭に浮かんできた。青空を背にした凛々しい騎馬像。
宮城県には仕事で何度か行ったことがあるが、伊達政宗の像を見たことはない。あの姿を生で見たら元気貰えそう。なんか、縁起も良さそうだし。

そんなわけで今回は、青空を背景にした伊達政宗像を拝みに行く宮城県旅に決めた。

天気が良い日を選び、東京駅へと向かう。今時、新幹線の当日券を駅の券売機で買う人はそうはいないのだろう。並ばずスムースに購入することができた。(連休前で、旅行客が少なかっただけかもしれない。)

東京駅の券売機で仙台行の特急券を購入

改札を通り、新幹線のホームに出ると、仙台行の新幹線「やまびこ」があと数分で発車するとのアナウンスが流れていた。思わず飛び乗る。
自由席の車両まで移動し、三列席の窓側に腰をおろす。ほっと一息ついたところで大事なことを思い出した。

そうだ! 新幹線で駅弁朝食を楽しもうと思っていたんだ!!

時すでに遅し。発車ベルを鳴らしながら、やまびこは静かに走り出していた。飲み物すら買っていない。たしか新幹線って車内販売終了したんだよな・・・
空腹を忘れるため、カバンから文庫本を出して読みふける。空腹を忘れ始めたころ、スターバックスのカップを持った女性が大宮駅から乗り込んできて、一席挟んで隣に座った。スタバか・・・いいなぁ。いやいや、集中集中。
そんな私の気持ちとは無関係に、カバンからごそごそと、女性は何かを取り出した。え、駅弁だ! た、食べている!!

新幹線での苦行のような時間を乗り切り、何とか仙台に到着。
駅の観光案内所で市内の地図などをゲットし、行き方を確認する。どうやら、政宗像は仙台城跡にあるようだ。バスで行けるらしい。

駅を出て、目的のバス停にたどり着く、も・・・もう限界。
近くにあった自販機へと駆け寄り、小銭を入れてボタンをポチっとな。
・・・出てこない。何にも出てこない・・・
取り出し口を何度覗き込んでも、何も出てこない・・・
落ち着け、落ち着くんだ。深呼吸をし、改めて取り出し口を覗き込む。ん? 端っこの方に引っかかっている? 取り出し口に手を突っ込み、金属の板の後ろを30秒ほど探っていると、ペットボトルがことん、と落ちてきた。
急いで取り出し、キャップをぐりっと開けて一気に飲み干す。

い、生き返った・・・

何とか落ち着き、バス停の列に並ぶ。空腹は既に通り越し、今はそれほどお腹は空いていない。まずは城跡まで行ってしまおう。10分ほど待っていると、「るーぷる仙台」と名付けられたレトロな雰囲気のバスがやってきた。

旅の気分を盛り上げてくれるレトロバス「るーぷる仙台」

仙台の街並みを眺めながらバスに揺られること3、40分ほどで、仙台城跡へ到着。バスを降りる。さて、政宗像はどこかな? 降りた人たちはみんな政宗像を見に行くに違いない、とバスから降りた知らない人の後をトコトコと、少し距離を開けて付いてゆく。
その人は、バス停を降りてすぐそばにある大きな鳥居をくぐり、何やら建物の中へと入って行った。

付いてく人を間違えた。

気を取り直し、建物横の広い駐車場にいた誘導員に声を掛ける。「すみません。政宗の像って・・・」「あっち行くと直ぐだよ」食い気味に、指さして進むべき方向を教えてくれた。

お礼を言い、教えてもらった方へと進む。木々がトンネルを作ったようなその場所から、すっと白無垢姿の花嫁が現れた。ちょっとびっくりして立ち止まる。正装をした人々に囲まれて、目の前を通り過ぎてゆく白無垢姿。木々の隙間からは日の光がキラキラと暖かく降り注いでいる。

白無垢姿の花嫁が現れた伊達政宗公騎馬像へと続く道

仙台の人は、結婚式の集合写真を政宗像の前でとるのかしらん? そんなことを考えながら歩いていると、木立を抜けたその先に、政宗の姿があった。

遠くからでもよく見える伊達政宗公騎馬像

おお・・・
渋谷のハチ公像ぐらいの大きさを勝手に想像していたので、その大きさに思わずひるむ。

近くでまじまじと見上げる。凛々しいお顔をしている。近くから遠くから360度、その姿をしっかりとカメラに収めた。

360度どこから見ても凛々しいお姿

政宗は何を見ているのだろう? 像から目を離し、後ろを振り返る。
そこには、仙台の街が広々と広がっていた。

政宗の眼下には仙台の街並み

と、ここまで書いておいて何なのだが、私は歴史というものに興味がない。好きな武将は武田信玄と伊達政宗ぐらいで、知っている戦国武将は両手で数えられる程度だ。(逆に、なぜ武田信玄と伊達政宗は好きなのか、自分でも謎である。)
建築物を見るのは好きなので城には多少興味はあるが、城跡にはまったく興味がない。(だって、建物ないし。)
そんなわけで、城跡があることをすっかり忘れていた。

お昼は何を食べようか。やっぱり牛タンかな・・・などとのんきに考えながら歩いていると、広場みたいなところに人がぱらぱらと集まっているのが見えてきた。ここは何だろう? みんな、何をしているのかな? と不思議に思いながら近づいて気が付いた。
あ、私、仙台城跡に来てるんだった!

ここが伊達政宗の居た場所か。城下町とか眺めてたんだろうな、うん。
我ながら薄い感想だなと思いつつ、伊達政宗を感じる。うん・・・これ以上は無理だ。
じっくりと城跡を堪能する方々をしり目に、そそくさとその場を後にした。

政宗が居たであろう仙台城本丸大広間跡

来るときに乗ってきた「るーぷる仙台」は巡回型バスのため、バスで仙台駅に戻ろうとすると、ぐるっと遠回りになって時間がかかってしまう。仙台駅へは電車で戻ろう。そう思いながら仙台市地下鉄東西線「国際センター」駅を目指して歩いていると、何だかこぎれいな外観の建物が姿を現した。「仙臺緑彩館(せんだいりょくさいかん)」と書いてある。
ガラス張りの入り口なのだが、光が反射してしまい中の様子はうかがえない。何となく観光案内所ぽい雰囲気を感じ、恐る恐る中へと入る。

強い日差しの中、歩いて少し疲労していた体がほっと一息つく。涼しい。
頭上を見上げると、ずらっと並ぶ華やかな七夕飾りたち。

仙臺緑彩館の入り口に頭上にずらっと並ぶ七夕飾り

その先には、黒光りする大きな山車が鎮座している。ベビーカーを押す地元人と思われる若夫婦が「この山車ってこんなに大きかったんだ」「祭りの日は遠くからしか見られないから知らなかった」と話している。地元のお祭りで練り歩く山車なのだろう。

山車の上には政宗が

山車の脇を抜け、奥の方へと進む。お、カフェだ。カフェの入り口にあるメニューをチェックするが、牛タンの文字はない。
そのまま通り過ぎ、入ってきたのとは別の自動ドアから外に出た。

ま、まぶしい。目を細めながら、あたりを見回す。
ま、政宗!?

なんと、伊達政宗の胸像があるではないか。仙台城跡の騎馬像に比べるとだいぶこじんまりとしているが、近い分、表情が良く見える。しかも、周りに観光客は全くいない。

伊達政宗の胸像

色んなアングルで胸像を写真に収め、改めて周りを見回す。
お祭りでもしているのか、はっぴ姿の人の姿がちらほらと見られる。何か、美味しそうなものを食べているな・・・あ、キッチンカーが出てる! 牛タンはあるかな? 食欲を刺激され、キッチンカーを一つ一つチェックするも、牛タンは見当たらない。観光客相手というより、地元の人向けのお祭りなのかも。

仕方ない、早く駅へ行こう。駅への道に戻ろうとしたところで、バスの中から屋台が見えたことを思い出した。確か、この近くだったような・・・記憶を頼りに仙臺緑彩館前の道を進み、川に架かる橋を渡る。そのまましばらく行くと、左手頭上に提灯が見えてきた。階段を見つけ、登って行くと、広場とその先にある屋台とが目に飛び込んできた。
やった! 屋台発見!! 嬉しくなって近づくも、10程出ている屋台のどこにも牛タンの文字はない。仙台を歩けば牛タンにあたると思っていたのに・・・(そんなわけない)

仕方ない。階段を上がってすぐのところにある神社に可愛らしい鯉のぼりが飾られていたので、その姿をカメラに収め、近くにあった大町西公園駅で地下鉄に乗って仙台駅へと戻ることにした。

風を食べ元気に泳ぐ鯉のぼりたち

仙台駅到着。さて、今度こそ牛タンだ!

牛タンが食べられるお店をいくつか探していってみるも、どこも大行列。ちょうどお昼時だし、仕方ない。行列の最後に並ぼうとしたところでふと思い出す。私、牛タンそんなに好きじゃないよね?

くるっと踵を返し、駅への道を飲食店を探しながら歩く。途中、何か文字が書かれた扉が目に入った。
ん? オイシイもの横丁? 何か美味しいものがありそうだ!
迷わず中に入る。飲食店特有のざわざわとした雰囲気。どうやら、いくつものお店が集まっているようだ。フロアをぐるっと一周してみる。うん。牛タンのお店は無い。てか、沖縄料理に大阪たこ焼きって・・・地元の人が来るとこだな、ここ。

もう一度一周し、仙台牛の文字が見えた「おでん・串カツ・煮込み みっつ」に入る。ひとりだと伝えると、カウンター席に通された。QRコードを読み込み、スマホで注文するスタイルとのこと。

おでん・串カツ・煮込み みっつ

素直にQRコードを読み込み、メニューをチェックする。仙台牛の牛すじ煮込みは頼むとして・・・チーズの串カツも美味しそうだな。飲み物はジンジャーエールにしよっかな。

とろっとろの仙台牛の牛すじ煮込み

注文を終え、お店の中を見回す。昭和な雰囲気の店内。カウンターの中には令和な雰囲気の店員さんたち。
カウンターを挟んで奥に見えるテーブル席には、女性のふたり連れが2組。楽しそうにおしゃべりをしながら飲んでいる。すぐ隣のテーブル席には主婦とおぼしき4人組。旦那や子供への愚痴を肴にガンガン飲んでいる。

地元の人たちの空気を感じつつ、空腹と喉の渇きを満たす。ふう、満足。

仙台は、何だか平和で良い街だな。今度は友達と一緒に来よう。昼間っから楽しく飲もう。そんな目標をお土産に、楽しい気分で帰路へとついた。

帰りの新幹線でデザートの「ずんだ餅」を


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