本物の優しさ
とても賢くて鋭い友達に、「私の夫の優しさは見せかけで腹黒さがあるけど、あなたの夫の優しさは純粋で本物」だと言われたことがある。その時はよく分からず、彼女の夫も優しいと思っていたけど、今は何となく分かる。そして、自分がどれだけ自己中心的で腹黒くて優しくないか、ということも。
まず、私の夫は、人を妬まない。人の成功や幸せに出会うと、瞬時に心から祝福する。この瞬時に、というのが鍵で、そのためらいのない一瞬の喜びに、彼の純粋な優しさが滲み出ている気がする。人を妬みまくりの私からすると、なぜいつもそんなに心から嬉しそうなのか不思議だった。
そして、私や子ども達が困った状況になると、自分の状況や立場をかえりみず速攻で助けを申し出るし、実際に助けるために動いてくれる。ここでも、夫は自然と咄嗟にそうしている感じ。同じ状況において、仕事のこと、かかる時間のこと、次の日の予定など、諸々の事情を考えて躊躇する自分が恥ずかしくなる。
彼は、その優しさのせいで、人につけ込まれたり踏みにじられたりして、たくさん傷ついてきた。それはおそらく、精神疾患を発症した原因にもなっている。そして、私もそれに加担してしまっていたと思う。私は、自分勝手で冷たい人間だから。そう認めるまで、とても時間がかかったけれど、夫の本物の優しさとともに、ようやく分かった。
私は夫のようにはなれない。彼の優しさは生まれ持ってのもので、真似できるものではないと思う。でも、真似しようと試みることはできる。できるだけ優しくするよう心がけることはできる。これで精一杯なのが自分でも情けないし嫌になるけれど、まずは自分の欠点を認めて、それを補おうとするところから始めるしかない。そんな自分を否定したり、言い訳したり、蔑んだりするのではなく、しっかりと真っ向から受け止めて、少しでも夫のように優しくなれるように。
そして、精神疾患のせいで、たまに別人のように意地悪になる夫のことは、さらっと受け流せるようになりたい。発症前には見たこともなかったし、安定している時には絶対にあり得ない彼の別の顔。それも、彼自身を守るために必要で生まれたものなのだろうから、本当の優しい夫が戻ってくるまで、私はただそっとしておく。完全に別人になってしまうことは、もうないと信じて。純粋な本物の優しさが必ず勝つと信じて。
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