ほんの近くへ旅に出る
夏の終わり、ふと涼を求めて、海辺の小さな町を訪れた。
車を走らせること1時間あまり、小さな駅の前にある駐車場に停めて、地図も見ずに町を歩いてゆく。
海風に乗ってくる潮の香り。カモメの声と、森の向こうから聞こえてくる蝉の声。強い陽射しは、夏がまだ終わっていないことを告げていた。
小さな漁港へと下りていく斜面に、いくつもの家々が並んでいる。
その光景に惹かれて、スマホで写真を撮っていると、通りがかりの女性が声を掛けてきた。
「観光ですか? 楽しんでいってくださいねー」
身近な場所に、こんな素朴な町があることを、僕はいままで知らなかった。
遠くへ行くことが旅だとばかり思っていたけれど、ほんの近くへ行くことだって、やっぱり旅なのだ。
童心に返った気持ちで、家々の間の階段を下っていく。
涼みに来たはずなのに、気づけば汗が滴り落ちている。
でも、なぜだか気持ちいい。
どこまでも爽やかな風が、心の中を吹き渡っていく気がした。
旅の素晴らしさを、これからも伝えていきたいと思っています。記事のシェアや、フォローもお待ちしております。スキを頂けるだけでも嬉しいです!